見出し画像

この夏はお世話になりました。

今年の夏は本当に暑かった。

普段わたしは、エアコンの効いた場所でパソコンに向かっているか、カフェのキッチンでぐらぐら沸いた湯のそばにいるという両極端な職場環境にいる。

真夏だからといって、湯を沸かさずにはいられないし、もともとキッチンの風通しは悪い。もわりとした熱気のたまり場になっている。冬場ならまだ良いけれど、夏は暑くてかなわない。冷え性のわたしですら、汗が吹き出してくる。

今年の夏はとくに身体にこたえた。
冷房に震えあがりながらも、一歩外に出れば灼熱の太陽があり、蒸し風呂状態の厨房で毎日フライパンをふるうため、疲れはてていた。

いま振り返ると、わたしはこの夏、夏バテをしていたらしい。
食欲があまりなく、ヨーグルトやひややっこ、めかぶといった口当たりが良く、ちゅるちゅると食べられるようなものばかりを口にしていた。

食事に対してそれほどこだわりがないのだけれど、今年の夏は「これが食べたい。ないと困る」という食べものがあった。

それは「桃」。
はじめは」あ、もう売ってるんだ」くらいの気持ちで、買い物かごにそっと入れた程度だった。
けれど、夕食時に桃の皮をむいたとき。手にとる前から、あたりにはふんわりと桃の甘いかおりが漂っている。桃に包丁の刃をあて、ていねいに皮をむく。手にこぼれる果汁をぺろりとなめ、たねのまわりの果肉にかぶりつく。

あぁ、おいしい。

桃のおいしさに虜になっていた。

仕事から疲れて帰って、夕食に、めかぶとアロエヨーグルトと桃という組み合わせが最高だった。
桃がないとがっかりした。近くのコンビニでまだ硬い、もしくはほとんど傷んでいるような桃でもいいからと、買い求めたりした。

桃は果物としては、どちらかといえば高価だし、ばくばく食べるようなものじゃないのに、とちょっとした罪悪感もあった。

けれど、ハーゲンダッツのアイスやら、スタバのフラッペチーノだって、それなりに高価だし、むしろそういったスイーツよりも果物の桃を欲していた。

10月になり、スーパーで桃の姿を見かけなくなるにつれ、私の桃への欲求も落ち着いてきた。
夏バテには桃が良い、なんて聞いたことないけれど、桃のおかげでこの夏を乗り切れたに違いない。

全国の桃農家さん、ありがとうございました。きっと来年も、お世話になると思います。よろしくお願いします。

#エッセイ
#コラム
#果物
#食欲


最後まで読んでいただきまして、ありがとうござます。 スキやフォローしてくださると、とてもうれしいです。