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アスリートのための目標設定 byうさみ

Madoyaca代表の宇佐美円香です。

私はスポーツメンタルトレーニングを事業の1つにしており、ソフトテニス競技を中心に全国の小学生から大人まで指導させていただいています。
また社会人大学院生として、スポーツメンタルトレーニングの専門家になるためにスポーツ心理学を研究中でもあります。

こちらの記事は前回の記事に引き続き、

スポーツメンタルシリーズの第2弾。

こちらの図の中にもある「目標設定」について

極力簡単に説明していきます。


目標設定とは

私が指導に伺っているチームの指導者を見ていると、ほとんどの指導者は選手の競技力向上を図るのに、年間を通したトレーニング計画(のようなもの)を立てています。年間を見据えた練習をしているとも言えます。

スポーツメンタルトレーニングで扱う「目標設定」は、その指導者のトレーニング計画の中で、選手たちのトレーニング計画をより具体的にし、効果を高めるために必要なものです。

トレーニングに対して具体的なイメージを描かせることで、トレーニングに対するモチベーションを高めたり、練習の質を高めることもできますし、効率的かつ計画的なトレーニングが可能になります。

また、具体的でない(漠然とした)目標には、具体的でない(漠然とした)行動しか伴わないので、目標を具体化することでやるべきことを明確化し、課題を発見することにも役立ちます。

チーム目標に対するマンダラチャート

個人の目標設定はもちろんですが、チームの目標設定も行います。

目標設定と動機づけ

目標設定は動機づけと深く関連しています。(動機づけに関してはまた別の記事で紹介します)

特に技術的なものや心理的なものなど、客観的な数字として表しにくい(見えにくい)ものは、指導者と選手が共通り会を持って目標を定めることによって、より明確になっていきます。
目標が明確になることで、トレーニングに対する動機づけ(モチベーション)が高まり、練習の質の向上につながります。

目的・目標・手段

目標設定を行うタイミングとしては、1シーズンが終了した直後あたりがベストですが、長期的な視点から見ることが必要になってくるので、年齢によって到達点(目的)をどこにするか?を先に定める必要があります。

目的・目標・手段の図

私は小学生〜高校生を中心にメンタルトレーニングを行うことが多いのですが、年齢が上がれば上がるほど、長期的な視点を持つことができる傾向にあります。

そのため、目的の設置は
小学生→その年の1番大きな大会
中学生→中3の最後の大会
高校生→高3の最後の大会
大学生以上→選手として1番活躍している時もしくは10年後

に置くようにしています。

もちろん個人の能力に左右されるところでもあるので、最終的には個別化しますが。

目的を先に設定して、その目的を達成するための目標を立てていきます。
目標は直近の大会や今年度の大きな大会に向けての小さい目標で、「少し頑張ったら(挑戦したら)達成できそう」というものを置くのがコツです。
また、目標は1ヶ月くらいの間隔で立てることも必要で、その時々で立てるのではなく、目的から逆算してまず一度全体的に立てておくことが必要です。

例えば、今高校1年生で、目的が「高3夏のインターハイで優勝!」だとしたら、
少なくとも1・2年生の夏のインターハイは出場しなければいけないかな?
→高1 インターハイベスト32、高2 インターハイベスト8
今年のインターハイでベスト32に入るには4〜7月はそれなりに練習を積まないといけないし、県で成績を残さないといけないか?
→地区大会優勝、県大会ベスト4
そのために今月はまずチームの仲間とたくさんコミュニケーションをとって、苦手なバックボレーを練習して、先輩に話を聞いて…
のような流れで決めていきます。

ここまでくると、目標を達成する手段はたくさん出てきます。
ローボレーが苦手だから、毎日練習しよう。
声が出ていないと言われるから、練習の中でいっぱい出そう。
あの先輩にどういう意識で練習しているのか聞いておこう。
など、手段はその日何をするかまで具体化していくイメージです。

人は行動が明確になると勝手に行動するので、早いうちに行動を明確化することを習慣化しておくと、選手として伸びていきます。

マンダラチャート

ちなみに、大谷翔平選手が高校時代に取り組んでいたことで有名になったマンダラチャートですが

大谷翔平選手の高校時代のマンダラチャート

大谷選手が高校生時代に書いていたからといって、これを小中高校生にやらせると結構大変です。個人によるので一概には言えませんが、全国大会レベルの選手でも書くのにものすごい時間を要します。
マンダラチャートを作らせるのであれば、日頃から
・自分は何を目的とするのか(マンダラチャート中央)
・そのためには何が必要なのか(中央のマス8個)
・その必要なものは具体的にどうやって身につけるのか
を投げかけて考えさせておく必要があります。

大人でも作成するのが大変なので、私はチームビルディングの時にチームのマンダラチャートを作らせることは多いですが、個人にはあまり作らせていません。

目標設定の鉄則

これは上でも少し触れていますが、目標を立てる時のコツというか鉄則があります。(数あるスポーツメンタルトレーニングの論文や参考書にも書かれています)

  1. 具体的なものである

  2. 現実的なものである(できそうな気がする)

  3. 挑戦的なものである(やりたい気がする)

1.具体的なものである

何を、どのように、というのが明確になっていることが必要です。
例えば、「力の限り頑張る」や「ベストを尽くす」などは全く具体的ではありません。そうなると、全く行動に繋がらず、結果として継続できません。

2.現実的なものである(できそうな気がする)

実は3の「挑戦的なものである」と相反しているのですが、絶妙なバランスをとらなければいけないのが難しいところです。

目標設定の勘違いしてはいけないところが、夢のような目標はモチベーション維持には必要であるが、行動には繋がらないということです。
よく、メンタルトレーニングに関する本には「できるかできないかは置いておき、自分の夢を自由にイメージしてみよう!夢目標を決めよう!」と書かれていますが、その夢目標の存在意義は
・自分の力を自分で制限しないこと
・モチベーションを維持すること
という2つで、自分の行動を起こす力はありません。

そのため、目標設定は必ず自分ができそうな気がするものを設定する必要があるのですが、それが簡単にクリアできるものでも意味がないのです。

3.挑戦的である(やりたい気がする)

2.3のバランスが非常に難しいため、私が指導に行くときは
「自分が少し努力をしたらできそうな目標」
を立てるとよいと教えています。少し頑張ればやれそう!と思えるものです。
あまりに簡単にクリアできるものでは怠惰なトレーニングにつながって向上しませんし、挑戦的すぎるものでは怪我や失敗を重ねて自信を失うことがあり本末転倒になってしまいます。

私のようなメンタルトレーナーや、指導者、選手に関わるスタッフたちは、このような目標設定のバランスをうまく保つために選手の様子を細かく確認し、コミュニケーションをとっていくことが不可欠です。

結果目標とパフォーマンス目標

成績目標とプレー目標と呼ばれることもありますが、いずれも目標設定の内容による1つの分類の例になります。
これは選手だけでなく指導者も知っておく必要があることです。

結果目標(成績目標)とは

全国大会で優勝する!ゲームカウント〇〇で勝つ!⚪︎秒台のタイムを出す!など、競技成績や結果を意識した目標のことです。
基本的に「目標」として立てがちなのが、この結果目標ですが、特に学生のアスリートに関しては自分がやりたいから立てているという選手は意外と少なく、「指導者に言われたから」「チームの雰囲気的に」「自分の過去の成績的に」という理由(外発的な動機)で決めている選手が多いです。

もちろん結果目標を立てることも必要なのですが、外発的動機づけよりも内発的動機づけの方がモチベーション維持効果が高いので、次のパフォーマンス目標についても立てていく必要があります。

パフォーマンス目標(プレー目標)とは

この試合ではファーストサーブの確率80%以上!スタートの姿勢を低く保つ!など、成績ではなくパフォーマンスそのものの内容を強く意識した目標です。
このパフォーマンス目標は、自発的に「本番で〇〇したい!」というところから目標が立てられる(立てざるを得ない)ため、内発的な動機から立てる目標になります。

結果目標とともに目標設定の中にバランスよく組み込むことで、モチベーション維持につながり、パフォーマンスの向上にも繋がります。

次回は心理技法の「自己分析」についての記事を書きます!お楽しみに!


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オンラインサロン「ココロの教室」

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