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チームに所属する選手のための目標設定

Madoyaca代表の宇佐美円香です。

私はスポーツメンタルトレーニングを事業の1つにしており、ソフトテニス競技を中心に全国の小学生から大人まで指導させていただいています。
また社会人大学院生として、スポーツメンタルトレーニングの専門家になるためにスポーツ心理学を研究中でもあります。

こちらの記事は前回の記事に引き続き、

こちらの図の中にもある「目標設定」の中でも、部活動やチームに所属する選手のための目標設定について

極力簡単に説明していきます。
目標設定については以下の記事でも解説していますが、

今回は私が中高生の部活動に所属する選手たちに指導している内容も含め、チームの目標設定についても触れていきます。


スポーツにおける目標設定

スポーツ活動は、年齢や競技レベル問わず、目標を立てて行うことの多い活動といえます。

目標は主観的目標と客観的目標があり、主観的目標は「最後まで絶対に諦めない」「試合を楽しむ」というような、自分の中にものさしがあるような目標で、客観的目標は結果目標とパフォーマンス目標に区別される結果や数値で測れる目標です。
結果目標とパフォーマンス目標の詳細については以下の記事に書いています。

スポーツ心理学の研究の中で、
適切に目標を設定する
→動機づけ(モチベーション)を高める
→目標達成により成功体験ができ自信が高まる
→運動パフォーマンスが向上する
という効果が多数報告されています。
つまり、適切な目標があった方がより効果的に選手として向上していくということです。

効果的な目標設定

こちらの記事の中でも書きましたが

目標設定を効果的に行うには、これから書く原則に従って行うことが大切です。ここで書くのはスポーツに限定した、効果的な目標設定の方法になります。

目標設定の原則

①結果目標だけでなく、パフォーマンス目標も設定する。

結果目標とパフォーマンス目標についてはこちらの記事

で詳細を確認してください。
結果目標は、相手や運など自分でコントロールできない要因によって決まる部分もあるため、負けることが失敗とみなされてしまうことが多く、選手のプレッシャーを引き起こしてパフォーマンス低下につながることがあります。
一方、パフォーマンス目標は、対戦相手や運などの影響を受けにくく、成功も失敗も自分に責任があるという感覚を持てる目標です。自分が行うべきことに集中し、進歩がわかるにつれて自信やモチベーションを高めることができます。また、パフォーマンス目標では、試合のプレーそのものが目標とされているので、自分のプレーに集中でき、緊張や不安を抑える効果もあります。

②現実的で挑戦的な目標を設定する

目標難易度とモチベーションの関係(マートン、1991)

スポーツにおける目標の難易度には、モチベーションを高める最適な挑戦のレベルがあると考えられています。
簡単すぎる目標ではやる気が起こらず、難しすぎる目標では達成できるという自信が持てずに努力しなくなります。
少し頑張ればできるかもしれないと感じることができる挑戦的な目標を設定することによって、モチベーションを高めることができます。

講習会ではよく、「遅刻しそうだったけれど、頑張ったら間に合った経験はないか?」と聞きます。大体の人が経験があるのですが、「頑張れば間に合う!」と思っているから階段を全速力で駆け上がったり、準備を全速力でできたりするのです。
これが、頑張っても間に合わないとわかっている場合は早々に諦めて、遅刻の連絡をすることになり、頑張ろうとしないのです。

③具体的な目標を設定する

抽象的な目標よりも、具体的な目標の方がパフォーマンスを高めることがたくさんの研究で報告されています。
例えば、「今日の部活はできるだけ一生懸命頑張る」という曖昧な目標よりも「今日の部活では誰よりも大きな声を出し、一切手を抜かず、特にサーブ練習ではファーストサーブを8割以上入れる」というような具体的な目標を設定することが望ましいです。

抽象的な、曖昧な目標はそれが達成できたかを評価する基準が明確ではないのに対し、具体的な目標はどのくらい達成できたかを確認できるため、反省改善だけでなくモチベーションも維持できます。

距離、時間、回数など計測ができる数値を使って、具体的で明確な目標を設定すると、目標に注意が向くのでモチベーションも向上します。

④長期目標と短期目標を設定する

いろんなチームに足を運ぶ中で、大きな大会やシーズンの最終目標として、例えば「全国大会優勝!」というような長期目標を設定していることがあります。このような長期目標を設定することはとても大切なのですが、この場合、その大きな大会までの間やシーズン中に何をするのかが曖昧になってしまいます。
一方、短期目標は、長期目標と比べてすぐに達成したかどうかの結果が出るので、達成感や満足感を得るために必要です。短期目標だけを設定しても、方向を見失ってしまうことがあります。
そのため、長期目標に結びつくような短期目標を段階的に設定することがとても重要です。

詳しくはこちらの記事でも説明しています。

この目標設定の方法は行動変容技法で、シェーピングと呼ばれます。

⑤チーム目標と同時に個人目標を設定する

個人の役割を自覚させるワーク(尽誠学園)

チーム目標はチームワークの形成や、チームの試合への動機づけを高めるためにとても大切です。
チーム目標のみを設定していても、メンバーひとりひとりのコミットメント(覚悟して行動すること)が生まれないので、チーム目標を達成するためにも、チーム目標を達成するための個人目標を設定し、その目標が達成される必要があります。
要するに、チームの目標達成に必要な、選手の個々の役割を重視した個人目標を、明確に設定して行動することが必要なのです。

達成目標

達成目標は上記の結果目標やパフォーマンス目標とはまた異なり、人は自分が有能であることを実感したいという欲求を持っていることを大前提とした、自分自身の有能さを感じるための目標です。

基本的には先に紹介する課題目標を設定すると、競技のレベルに関係なく行動が伴って能力向上につながると言われています。

課題目標

課題目標は、練習や努力を重視し、技術の向上や習得などを目標とするものです。学習目標や熟達目標ともいわれます。
例えば「自己ベストを超える」という目標は課題目標です。
他人と比べて能力があるかないか?よりも、自分自身の能力や技術を最大限に発揮することに集中して、学習のプロセスを重視します。
達成・成功の判断基準は、自分の中にある絶対的基準(上達する、向上する、達成するなど)で、誰かと競ったり比較することはありません。
そのため、課題目標を持つ人は、過去の自分よりも今の自分はどれくらい進歩したか?行動したか?に目が向くのです。

自我目標

自我目標は、能力を重視し、他人よりも優れていることを誇示したり、高い評価を得ることを目標とするものです。成績目標ともいわれます。
例えば「チームで1番になる」という目標は自我目標です。
自我目標を持つ人は、自分が有能であると他者から評価されることに関心があるので、他者からの能力評価が重要で、課題目標が重視している自分の進歩や努力よりも、他者に勝ったときや他者よりも少ない努力で成功した時に有能を感じます
達成・成功の判断基準は、他者との比較による相対評価です。
自我目標では、失敗を能力が低いと捉える傾向にあります。

あなたはどちらの目標を持っているタイプでしょうか?
今一度考えてみてくださいね。

モチベーションを作るチーム目標

動機づけ雰囲気とも呼ばれるのですが、達成目標は個人だけでなく、チームの環境によっても影響を受けます
チームが課題目標を重視するときに見られる熟達雰囲気と、チームが自我目標を重視する時に見られる成績雰囲気に分けられます。
要するに、周りの環境が熟達や努力を重視するものであると選手たちが自覚すると、課題目標を持ちやすくなり、他者との比較や成績を重視する環境であると感じれば自我目標を持ちやすくなるのです。

例えば
・努力することが強調され、評価される
・失敗を恐れずに成長するために挑戦することを指導される
という環境であれば課題目標を持ちやすくなり(熟達雰囲気)、
・試合での結果ばかりが評価される
・他者より優れていることのみが賞賛される
という環境であれば自我目標を持ちやすくなります(成績雰囲気)。

研究では、熟達雰囲気のもとで練習した選手の方が練習量が多くなり、モチベーションも高かったということが報告されています。この雰囲気を作るには、監督やコーチといった指導者の影響が非常に大きいです。

、、、というわけで、目標設定に関するかなり詳しいところを書きました。
次回もお楽しみに!


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