ピッツァマルゲリータ
男が目を覚ますと、まだ空中にいた。男は昨晩のことを思い出す。閉店の音楽、明るい男の声、「またのご来店を心よりお待ち申し上げております」の後のブチッという音…。男はもはや死んだようなものだ。そして生まれ変わったのだ。眼下には早朝の街中にふさわしい、ぽつぽつとした人通りと、快適そうな自動車たちが見える。「自分はこの後どうなるのだろう」と男は思う。いまのような心持ちであれば生きていけそうだとも思って、男は上着のポケットから手帳代わりのメモ帳を取り出す。そして今日の予定を確認する。男