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チェックインした瞬間知らないおじさんに「今日事件が起こりますよ」って言われた

こんにちは。
お仕事や課題、現実に追われている日々を過ごしてはいませんか?
私は仕事内容が変わり、心のゆとりがなくなるぐらいに必死な毎日を送っていました。もうこんな現実はいやだ!時間に追われる日々に不満を募らせ長期休暇を取りました。

向かう先は、京都。
現実から逃避行したいわたしにぴったりな体験をしてきました。

人生で唯一無二の体験。一度しか味わうことのできないわたしだけの体験。

不思議な体験 イマーシブシアター


チェックイン


京都へ到着し、宿泊施設「MOTEL ANEMONE」へ訪れました。
なんでもこのモーテル、今夜で幕を下ろすためクロージングパーティー開催されるのです。

入り口に足を踏み入れた途端、雰囲気のあるカウンターで出迎えられました。
脇にはアイスが並んでいるショーケースとバーカウンター。
チェックインした後アイスかカクテルでも頼もうかとバーに並ぶと、お酒を卸している企業の営業担当者に名刺を渡され「ぜひ、最後の日には当社のお酒で乾杯してください」とイケメンお兄さんが突然セールスをしてきました。物腰柔らかそうで犬のように人懐っこい笑顔を浮かべるお兄さん。
言われるがままに頷くと今度は「いやいや、アイスで乾杯でしょ」と別のイケメン営業担当者が名刺を渡してきました。こっちのお兄さんはギラギラしていていかにも仕事人!って感じの人でした。
視線を落とすとどうやら仕事人のイケメンはアイスの営業担当者。
ライバル同士のせいか、バチバチと火花が散っていました。

バーに併設されているアイスクリーム

波風立てるのもよくないしなによりどっちも美味しそう……
そう思い両方頼んで商品を待っていると、バーカウンターに酔っ払いのおじさんがひとり。どうやら相当飲んでいる様子です。
私と友人の存在に気がつくと、声をかけてきました。

「大切な恋人が亡くなってしまってね」

突然、切り出された話に思わずギョッとしました。
初対面でそんな身の上話をするだろうか。いやきっとそれほど悲しみに打ちひしがれていたのでしょう。ぽつりぽつりと溢された彼女との思い出の話はとても切なく、心が苦しくなるものでした。

「これは彼女からもらったレコードなんだけど、見てくれるかな?」

どれどれ。彼が見せてくれたレコードには女性らしき手書きのメッセージがありました。しかし、なにやら物騒なことが書いてある。
このモーテルで事件が起きるだとかなんだか。
なんて声をかければいいのか分からずにいると、酔っ払いのおじさんは大きな声で訴えてきました。

「僕の恋人はね、事件が起きて殺されたんだ!殺したであろう犯人が今回このパーティーに紛れ込んでいる。今夜は事件が起きるに違いない!」

やや演技がかった風に身振り手振りそんなことを言われて平然でいられる人間がいますか?

もちろん例外はないでしょう。
私はパニックを装いながら冷静でした。

え?逆じゃないかって?
いいえ、合っています。冷静沈着、というには少しわくわくしていたかもしれません。そんなの不謹慎じゃないかって?安心してください。

なぜならこのホテル「泊まれる演劇」というアクティビティを行なっているためです。
宿泊しながら舞台を見れる贅沢な体験ができる、世界初のエンターテイメント。
そしてこの「泊まれる演劇」は、なんと観劇するだけではありません。
観客である私たちも舞台の一員となって登場人物の一端を担うのです。

みなさんは新しいカルチャーであるイマーシブシアターをご存知でしょうか?

イマーシブシアターとは

イマーシブシアターとは「体験型演劇」「没入型演劇」などと日本では言われています。海外ではイギリスが発祥となり今ではアメリカでやっている「Sleep No More」は非常に有名でロングラン公演されています。


イマーシブシアターの特徴は3つあります。

  • 決まった座席やステージなどはなく空間全体が舞台。そのため至る箇所で同時多発的に演劇が開始する

  • 観客も演劇の中に入り込み、出演者のひとりとなる

  • 参加する観客によって物語が左右され、唯一無二のストーリーとなる

こんな演劇があるなんてわくわくしませんか?
舞台は同じものを何度見てもさまざまな感動を与えてくれますが、イマーシブシアターは参加する観客によってストーリが変わります。演技を見たいと思った役者のあとをつける選択によって、話の見方が大きく変わっていきます。
特に今回はホテルの1〜4Fすべてを使って演者が移動していたのでなかなか見応えがありました。

演者と観客の境界線がなく、いつの間にか物語に没頭しています。
そして現実と非現実の線引きも曖昧になって、一度しか味わえないストーリーを楽しむことができます。

MOTEL Anemoneについて

今回訪れたのは、HOTEL SHEがプロデュースしたホテルが舞台の宿泊型のイマーシブシアター。1年以上もホテルを貸し切って世界観を構築し、見事なまでに作り込まれていました。
舞台である部屋はもちろん公式サイトやグッズ、宿泊前の注意事項、そして招待状から既に舞台は始まっていたのです。

バラの香りがする招待状。花びらも封入されていました。
ちょっと綺麗に開封できなかったのは・・・目をつむってください

宿泊前からドキドキは始まっていました。
一体どのような物語がはじまるのだろう、と。

当日の流れ

集合場所であるホテルに訪れる中が見えないようにホテルの前はルージュ色の幕が垂れていました。そしてモチーフであるアイスも。このただならぬ様子に楽しみな反面緊張が走りました。友人と「本当に、自分たちも演劇の中に入り込めるんだろうか?演技未経験なのに楽しむことはできるんだろうか」そんな不安を抱えていたからです。

ただそんな心配は杞憂に終わりました。
チェックインカウンターの方に「当ホテルはアイスとカクテルが看板メニューでしたのでよかったら最後に食べてみてください」と言われ、冒頭のような流れがありました。バーに並ぶと登場人物たちにごく自然に話しかけてくれるのです。私たちも自然体で会話をすることができ、溶け込める雰囲気作りが徹底されていました。

その後はクロージングパーティーのセレモニーがあり、バーで話しかけたおじさんが今夜の宿泊者は全員怪しい!と言い出して推理パートに入りました。事件の真相を掴むためにホテル全体を徘徊しました。証拠を掴むために、怪しい客人の部屋に入ったり時には話しかけることで物語が展開していきます。

これはとある画家の部屋
この中に証拠品が隠れていたり・・・
女優の部屋は色気の漂う香りと
共に化粧品と薔薇が散らばっていました

部屋ひとつひとつ、細部までこだわって作られていました。上の写真は一部に過ぎません。
部屋の中をよく探索しないと事件を紐解く鍵が見つけられないのです。他の宿泊者たちも同様に協力して見つけてくれるので、物語はどんどん進んでいきます。たまに変な行動をしても登場人物の方がそれとなくサポートしてくれます。物語を盛り上げる一部へと変えてくれるのです。登場人物たちは宿泊者たち全員の名前を覚えてくれ話しかけてくれるため、役者と話しているという考えがごっそり抜け落ちます。
宿泊者たちがどのように行動しどのような会話をするのか、登場人物たちも想像ついていないはず。それでも、どのエリアに行っても必ず物語が展開され、最後は宿泊者と登場人物たちが一丸となってエンディングを迎えることができました。

色褪せぬことのない経験ができたのは、世界観・シナリオ・演技・その他すべてがよく考えられ作り込まれていたからでしょう。終わった後、現実の世界に足を踏み出すのが奇妙な感覚でした。

これからについて

イマーシブシアターは残念ながら日本ではまだ浸透されていません。そのため、頻繁に行われいませんが徐々に注目されてきています。
またシアターとは離れますが最近ではミュージアムでも絵画を取り入れた没入体験型も出来始めました。
自分自身が参加することで展開していく物語。
唯一無二のストーリーをぜひ楽しんでみてください。

きっと日常生活では経験できないようなストーリーを体験することができるでしょう。
何かに追われて、疲れているそんなあなたにぴったりかもしれません。

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