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鳥の眼になって空からアスリートを見る

前回に続き、スポーツ×GISです。
今回は大学院で進めている研究を少しご紹介したいと思います。

カーナビはGPSなど人工衛星(GNSS)を利用してクルマの走行位置を検出していますが、この仕組みをスポーツ選手に応用する取り組みが始まっています。
例えば、サッカーやラグビーのトップリーグでは多くの選手がこの仕組みを利用していますし、ランニングウォッチも同じです。

私たちはさまざまなスポーツ、そしてアマチュア選手にこの仕組みを適用した研究を行っています。
特に私は選手の動きをGISで可視化をしてコーチングに活かしてもらっています。

ラグビー選手の動き

まずは、K大学ラグビー部の選手の動きをムービーにしたものをご覧ください。例によってQGISで実現しています。

作り方を簡単に解説しましょう。

⓪GNSSデバイスを選手に装着&プレー
①GNSSデバイスからデータを取り出す
②データ(CSV)を加工する
③QGISからデータを読み込む
④QGISで時系列処理をする
⑤ffmpegでムービーにする

ちなみにGNSSデバイスはこのようなものです。

GNSSデバイス

この試合は相手チームのデータがありませんが、映像と合わせて分析しており、例えば攻守の切り替えなどがスムーズに行われているか確認しています。
同時に選手のパフォーマンスデータ(走力や心拍数など)も確認しています。

PLATEAUで遊んでみる

相手チームの動きやデータは公開できないため、代わりと言ってはなんですが、3Dの建物データを読み込み、グラウンドに臨場感を加えてみたいと思います。

最近、国土交通省が整備している3DデータPLATEAU(プラトー)がオープンデータになりましたので、ダウンロードをして使ってみました。

どうでしょう、鳥の眼に近づけましたでしょうか。

秩父宮

テニス選手の動き

次はテニス選手の動きをヒートマップで確認します。こちらもK大学庭球部のデータです。
ダブルス選手、前衛選手のポジショニングを確認できます。
コーチからこの前衛選手へのアドバイスは『ネットから離れ過ぎないように』です。

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余談ですが、庭球部のテニスコートはK大キャンパス内にある蝮谷と呼ばれる谷底にあります。
テニスコートまでの階段は約200段!東京タワーの階段の1/3とのことです。
ここを通らないと練習できません。
…過酷な階段です(笑)

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ホッケー選手の動き

次はフィールドホッケーです。アイスホッケーではなくグラウンドで行うホッケーです。
K大学女子ホッケー部はほぼ全員が大学からホッケーを始めるそうですが、関東学生リーグ1部で活躍しています。
監督からこの選手へのアドバイスは『もっとサイドをえぐるプレーをすること』です。

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トライアスロン選手の動き

次はトライアスロンです。バイクのドラフティング(風よけ走行)をQGISで確認してみます。
ドラフティングは大会によっては禁止されているため、選手は前の選手との距離感(5m)を身に付けることになります。画面をよく見ると5mの格子が表示されています。
トライアスロンのバイクは最高速度40km/h。近くで見ると本当に速いです。

最後は鳥の眼になって空から4箇所のグラウンドを見てみたいと思います。
街に点在するグラウンドで、サッカー、ラグビー、ホッケー、テニスの練習をしています。

画面左上、下田グラウンドでラグビー選手が練習を始めます。すぐに、画面右下にある蝮谷テニスコートでテニスのゲームが始まります。しばらくすると下田グラウンドでサッカーの練習が、最後はホッケーのゲーム形式の練習が始まりす。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
今回はアスリートの動きをQGISで可視化してみました。こんなこともできるなんて、GISって面白いですよね。

GISやデジタル地図に興味をもった方は、ぜひ拙著をご覧になってください。
まだまだ学びの春は始まったばかりです。

その問題、デジタル地図が解決しますーはじめてのGIS」(ベレ出版)

参考文献
中島 円, 太田 千尋, 神武 直彦, GNSSを利用したスポーツデータ分析フレームワークの設計, スポーツ産業学研究, 2019, 29 巻, 2 号, p. 2_109-2_124, 2019年4月.

タイトル画像
吉田初三郎、横浜、吉田初三郎式鳥瞰図データベース、国際日本文化研究センター

使用した地図データ
・地理院タイル(全国最新写真)、国土地理院、https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/seamlessphoto/{z}/{x}/{y}.jpg
・3D都市モデル(Project PLATEAU)ポータルサイト、G空間情報センター、
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/plateau
・基盤地図情報ダウンロードサービス(数値標高モデル)、国土地理院、
https://fgd.gsi.go.jp/download/(会員登録が必要)

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