水中写真の撮り方 虎の穴
〜水中ワイド写真講座その2 初めての水中編〜
こんにちは!
熊本の天草にある「よかよかダイビング」のスタッフのまどかです😁
2023年の4月から入社して、立派なインストラクターになるために、日々特訓中のスタッフです😤
潜水経験はこの記事を書いた2024年1月時点で約1年。経験本数は350本程。
愛機は発売当日にgetしたTG-7!ウミウシを撮るのが大好きです。
そんな私に指導してくれているのは、「よかよかダイビング」のオーナーの中野さんです。
中野さんは、大学生のダイビングクラブでCカードを取得し、ダイビング歴25年以上のキャリアと15,000回以上の潜水経験を持っています。
また、水中撮影の仕事もたくさんされていて、30代でキヤノンと写真の販売で契約したり、世界レベルでも「ニューヨーク映画祭」や「ドイツデザイン賞」に入賞したりと、水中写真家、動画クリエイターとしても活躍されています!!
※よかよかダイビングの宿に宿泊される方には、こちらの水中写真講座が受講できるサービスが、宿泊料に込みで無料で付いてきます。
ぜひお泊まりプランでもご利用下さいね。
そんな中野さんからいつも、「インプットしたらアウトプットするように」と言われています。
そこで、私が学んだ水中写真のことを、興味のある方や悩みがある人に共有したいと思い、noteを始めました。
今後は、水中写真についての記事をnoteに投稿していきたいと思いますので、いいね、フォローお願いします!
前回同様、今回も最後に記事を書く際のまどかメモを載せておきました。
最後まで見てもらえたら嬉しいです😌
(今回の記事から読んだ方は前回の記事「水中ワイド写真講座その1 陸上での練習編」をご覧ください)
〜カメラの紹介〜
前回に引き続き、練習で使ったカメラはこちら
カメラ・・・ SONY ミラーレス一眼α6300
ハウジング・・・ ノーティカムハウジング+NA E100ドームポート
レンズ・・・ sony E16mm,F2.8 フィッシュアイコンバーター(VCL-ECF1)
水中ライト・・・ FIX neo 3000ルーメン(広角ライト)
ワイドの水中写真の初めての水中練習ということで、カメラは「撮影モードは絞り優先オート、絞りはf8、Iso感度はオート、評価測光、シングルオートフォーカス、単射」という設定を維持した状態で実施しました。
平たく言うと、ボタンもダイヤルも、何も一切操作せずに、絵作りに集中してひたすらシャッターを切るだけ。
よかよか虎の穴方式のワイド写真初心者用設定です。
陸の撮影でも簡単なのでよく使われるこの方法の利点は、
「全くの初心者が、カメラをどこに向けても、ある程度適切な明るさで写るため、ちゃんと撮れるので楽しく上達できる」ことです。
前回の陸上での練習の際に、カメラのマニュアルモードでの撮影のやり方で、適正露出での撮影をリアルタイムで調整することは、初心者にとって大変難しいということがわかりましたね。
こちらの撮り方で撮影していけば、初心者でもすぐに綺麗なワイド写真を撮ることが出来るようになりますよ。
〜水中でのワイド写真練習〜
私の場合の悩みは、「生き物を撮れば良いマクロ写真と違って、ワイドでは何を撮ったら良いのか、どこをどのように撮ったら良い写真になるのか、全然わからない」という事が問題でした。
そのためまず1本目は、中野さんがワイド写真において、「何を、どのような高さから、どのような角度で、どのような距離感で撮影しているのか」ということを見せてもらって、2本目に自分で撮影してみるという流れで、練習していくことになりました!
「ワイド写真って、
何を撮れば良いんですか?」
「群れやクジラがいなくても、
心が動いた、良いなと思ったものを撮れば良いんだよ。
最初はどこを撮ればいいかわからないと思うから、
後ろから付いてきて、撮るところを見ておいてね」
普段から良く潜っている場所でのレッスンだったのですが、今までは気づかなかったたくさんのワイド撮影ポイントの発見があって、目から鱗でした。
丸々1本使って、中野さんが撮影している様子を観察させてもらいました!
(よく見るようにと言われましたので、眼開いて全力で観察しましたよ👀)
「ワイドレンズで、
ここをこんな風に撮れば、
こんなふうに写真に写るんだ!」
今回はうっかり動画を撮り忘れて来てしまいましたが、次回の記事では中野さんの撮影している様子を、皆さんにも見てもらえるように、動画を撮影してきてご紹介しますね。
「中野さん、撮る時に、
全然息をしてないです」
〜ワイド写真を撮る上でのコツ〜
水中で中野さんの撮影風景をじっくり観察させてもらった後、海から上がって、中野さんが今撮った写真を見せてもらって解説を受けながら、ワイド写真を撮る上でのコツも追加で教えてもらいました。
<1> 遠近法について
1つ目は写真での遠近表現についてです。
写真に遠近感を出すために重要なのが、
近景(一番手前に写っている部分)
中景(中間あたりに写っている部分)
遠景(一番奥に写っている部分)
この3点です。
近景、中景、遠景の3点を押さえることで、写真に奥行きを出すことが出来ます。
これらを活用して撮影したものが下の写真になります。
この写真の場合は、手前に写っている浜の部分が近景、中間に写っている海の部分が中景、奥の方に写っている島や空の部分が遠景となります。
近景となる浜をアップで撮ることによって、浜が手前にあることが分かりますね。
そして、中景、遠景と遠くの方まで写すことによって、写真に奥行きを出すことができるんですね。
コツとしては、レンズをごくわずかに下に傾ける事で、良い感じの表現になりますが、ほどよく微調整してみて下さい。
<2> パンフォーカス
2つ目は、パンフォーカスについてです。
「風景写真というのはパンフォーカスであることが大事だから、フィッシュアイレンズではf8以上で撮影するんだよ」ということを教わりました。
美しい風景画のように、手前の風景から奥までしっかり描写することで、水中風景の美しさが際立ちます。そのため、深い被写界深度でのパンフォーカス表現が大事なのだそうです。
「なるほど、アンフォーカス・・・
めもめも」
「ん?アンフォーカスだと
ピンぼけじゃない?笑」
上の写真はピントを入れる位置を中央にしてしまったので、一番手前までピントが来ていませんでした。
被写界深度の法則で、ピントは手前と奥では等分にはならずに、手前側の方が短くなります。そのため、ピントを入れる位置にも注意が必要です。
※ちなみに、今回の場合だと、下から3分の1ぐらいの位置にピントを入れるとパンフォーカスになっていたそうです。
(ピントと被写界深度の計算式について詳しく知りたい方は、中野さんに聞いてみて下さい)
<2> 収差について
また、水中ではレンズの外側にポートが装着されます。このポートが光を曲げてしまい、写真の像がぼやけたり流れたりする「収差」という現象が発生するそうです。
「秀さん?🤔」(誰?)
「収差ね😂」
f値をf8以上にすることで、この収差の影響をかなり減らすことができるそうです。そのため、今回のワイド写真練習でもf8で撮影しています。
(収差について興味がある方は、中野さんにザイデルの5収差について聞いてみてください)
「f値はなぜ8なんですか?
絞るだけ絞ったらダメですか?」
「絞りすぎると今度は
回折現象が発生してぼやけたり、
レンズに入る光の量が減ることで、
シャッタースピードやIso感度に
影響するんだよね」
f値はそのため、必要性が無ければ、絞るのは通常はf 11までぐらいが良いそうです。
センサーサイズが中ぐらいの大きさのAPS-Cセンサーのカメラで、フィッシュアイレンズを使用する場合、接写以外では充分にf8でパンフォーカスになるとのこと。
(回折現象について興味がある方は、中野さんに以下略)
<3> 被写体の面積の割合について
次に、被写体の占める割合のもたらす視覚効果についてです。
まずは、空と海の写真の割合を5:5の均等にした状態で撮影してみるよう指示を受けました。
それが下の写真です。
海と空の割合が一緒であることで、何が主体なのか分かりませんね。
しかも陸写真でピンボケしているという・・・
次に、海と空の写真の割合を8:2程にして撮影してみるよう指示を受けました。
それが下の写真です。
海の割合を多くしたことによって、海が主役だということがわかりますね。
このように、写真に写す割合を多くすることで、主題にしたいものを強調させた写真を撮ることができるんですね。
「サンゴが主役だったら、
サンゴを写真の面積の
8割ぐらいにしたら
良いということですか?」
「そういうこと。
もし主役が小さい場合は、
なるべく中央に持ってくると、
強い印象を与えることが出来るよ」
<4> 露出補正
露出補正とは、露出値を補正し、写真の明るさを調整することです。
撮影モードをAモードで露出補正せずに撮影した場合、カメラの明るさ自動調整機能のせいで、白いものは暗く、黒いものは明るく写ってしまいます。
(スマホでも写真を撮る際に、明るい場所で撮ると暗く写ったり、暗い場所を撮ると明るくされてしまったりする現象です)
全体の明るさを均一にするために、カメラが自動調整してしまうのですね。
以下に、Aモードでそのまま(露出補正0)撮影した写真を例に挙げます。
本来なら、白い砂地なのですが暗く、茶色っぽくなってしまっていますね。
このように、実際に見た風景と、そのまま撮った写真は違った明るさになってしまうことがあるのです。
この明るさを写真用語でニュートラルグレーと言います。
「ニュートラル・・・何???」
「白いものを撮ってもグレーになり、
黒いものを撮ってもグレー
になるような事だよ」
では次に、同じところを露出補正を+1にして撮影した写真が下のものになります。
Aモードでそのまま撮影した写真と比べてみると、明るい写真となり、砂地も綺麗な白色に写っていますね。
「すごい!これが露出補正✨」
このように、写真を明るくしたいなら露出補正を+側に、暗くしたいなら露出補正を-側にする必要があるんですね。
水中写真として、「見たままの明るさで現実を写す」ということと、現実は無視して「自分のイメージを写真に再現する」2つの方法があるそうですが、最初は目で見た明るさを再現できるように露出補正で調整してみましょう。
〜実践練習〜
構図の仕方や露出補正について、簡単に学んだところで早速実践スタートです。
1回目なので、中野さんから「海、砂地、サンゴ、ソフトコーラル、海藻」を撮ってくるようにと5つのお題を出してもらいました。
これらのお題の5つの被写体は、一緒に潜って中野さんが撮るところを見ていた被写体なので、どこに行ってどの被写体を、どのように撮影すれば良いかだいたいわかっています。
構図や露出補正についても陸で練習していたため、水中でも意識しながら写真を撮っていくことができました!
とても夢中になっていたため、時間が経つのがあっという間でした😂
(1本で80分潜って、58枚撮りました!)
〜結果発表〜
無事に、初めての水中での練習は終了し、ショップに戻って中野さんと写真を確認してみました。
ここで大事なことは、写真はカメラで確認するのでは見づらいので、パソコンに取り込んで大画面で確認することと、絶対に水中で写真を削除しないことと教えてもらいました。
何を失敗したのかや、その失敗写真からどういう風に改善していったかの過程を見てもらえるので消したらダメなんだそうです。
「幸い私は撮るのに夢中で、
削除する余裕が無かったです😂」
・改善点
1つ目の問題点は、被写体との距離感が正しくないということです。
このような写真になってしまって原因は、ウミウシを撮る時みたいに「とにかく被写体に寄って撮る」ことしか考えずに撮ってしまっていたことです。
上の写真の問題は、トサカノリが写真に入りきっていないのが良くないのと、写ったトサカノリの形がイマイチだそうです。
また近すぎることによって、写真に余裕がなく、窮屈な印象の写真になってしまいました。
2つ目の問題点は、改善しながら撮影していないということです。
同じ被写体を1枚しか撮っていなかったり、その結果を元に改善していくということができていませんでした。
こう撮ったら良いかな?と考えながら撮ってましたが、撮った写真のプレビューで結果は見ずに、すぐに次の被写体へと向かっていました。
そのため、ほとんど全部が中途半端な完成度の写真で終わってしまっていました・・・
後で中野さんから、
「編集ソフトでは、構図、ピント、ぶれの修正が出来ないから、現場で完成させて帰るようにね」と言われました。
帰ってから、スマホやパソコンの画像編集ソフトなどで修正できることは、明るさの調整やゴミ消しなど少しのことしか出来ませんし、時間もかかってしまいます。
そのため、海中で完成に近い状態(理想)の写真を撮る必要があるそうです🤔
まどかメモ> プレビューを見て、現場で完成度を高めて帰る
3つ目の問題点は、撮影枚数が少ない、という事でした。
ここまでの間に、私が80分で撮った写真58枚全部を5回ほど最初から最後まで見てもらった後に、中野さんに確認されました。
「う~ん、あのさ、
これって海で撮る前に、
オレが撮った写真見て覚えて、
同じになるように撮った?」
「うふ、潜る前に見ました😏」
どうやら今回の問題点の大元は、お手本をよく見ていないということによるみたいでした。
自分で写真を撮る前に、中野さんのお手本の写真を充分に確認していなかったため、
・撮影する前にあれこれ考えすぎて時間がかかってしまったり
・海藻の写真のように寄りすぎた写真になっていたり
・失敗写真を改善せずに中途半端な完成度で終わって
しまっていたのでした。
「ま~、初めてだから
時間かかるのも当然なんだけど、
書道や文字の書き方の練習でも、
左側にお手本を置いて、
そのように書くよね」
「あ~、そっか😂」
そもそも、良い写真というのはどんな写真なのか分かっていないと、自分で良い写真を撮ることはできないということがよく分かりました。
次回は、良い写真のイメージをしっかり持ってから撮影したいと思います。
真似から入るのは大事ですね。
っていうか全部バレててすごい。
まどかメモ> 良い写真やお手本を見て、イメージして撮る
中野さんの指摘の4つ目は、水平が取れてない、ということでした。
「あは、全部傾いてますね😂」
「スナップ写真として、
動きを出すために斜めにするテクニック
もあるけど、
水平が取れてない写真は、
不安定な感じがあって、
見る人が落ち着かないんだよね」
「水平を全っ然
気にしてませんでした😂」
ワイド写真で地形が入る場合は、水平を意識して撮ると良いそうです!
まどかメモ> 水中写真でも水平は大事
・褒めてもらった写真
「これはなかなか良く撮れてるよね」
この写真は、中野さんから
「適度な距離で、トゲトサカの大きさを遠近感で表現できているし、構図も良くて、良い写真だね!センス有る」
と言ってもらえました😂
「こういうのは、まず寄ってから、
引いて撮る感じですか?」
「そうだね、
いくつかバリエーションを撮ってみて、
ちょうど良い距離を学んでいくと良いよね」
よかよか虎の穴流のコツとしては、
【写真を見る人が、気持ちよく写真の中を泳いでいけるように】
【写真を「作品」として鑑賞できるように】
これらを心がけて撮る、ということだそうです。
次回は、「とにかく寄って撮る」ではなく、「被写体との適切な距離感」を意識して練習していきたいと思います。
〜中野さんからのアドバイス〜
いくつか写真を撮る上でのコツを新たに教えてもらいました。
1つ目のコツは、天気がいい日は太陽に向かって撮影するということです。
太陽に向かって撮影することによって、立体感のある写真が撮影できるとのこと。
写真を見てみると、石に影ができているのがわかりますか?
太陽に向かって撮ることで被写体に陰影がうまれ、写真に立体感を出すことができるんですね。
2つ目のコツは、太陽のハイライトを入れるのは、上の写真のように「ちょっぴり」にすることだそうで、一般的なデジタルカメラが苦手な白飛びを防ぎつつ、太陽の光の線を活かすことで、シャドウからハイライトまで、階調豊かなドラマチックなワイド写真が撮影出来るんだそうです。
3つ目のコツは、曇りや雨の日は色があるものを撮影するということです。
曇りの日は、どうしても海が暗くなってしまいますよね。
そこで、色のあるもの(ソフトコーラルとか)を撮影することによって、写真が鮮やかになるとのこと。
上の写真のように、赤いソフトコーラルが手前に写っていることで、曇りの日とは思えないような、とても鮮やかな写真の印象になるんですね。
また、赤いソフトコーラルと緑のサンゴで補色効果にもなるとのこと。
これは狙わないと損😏
ワイド写真でお天気が晴れてないと、「あ~、今日は曇りかぁ~」と、ついテンションが下がってしまいますが、鮮やかな被写体を構図に盛り込めば、曇りや雨の日でもワイド写真を楽しむことが出来るんですね☆
4つ目は、水中写真というのは自由な位置から楽しめるということです。
陸上で撮影する場合は、写真を撮る角度には限りがあるけれど、水中ではどんな角度からでも撮影ができるとのこと。
1枚目の写真のように、被写体の下から撮影することもできれば、
2枚目の写真のように、被写体の上に浮かんで撮影することもできるということです!
「海の中では、空を飛ぶように
どこからでも撮影出来るから
水中写真は面白いんだよ」
「楽しそうですね!」
水中ならではのこの自由さを活かすことで、より「印象的な写真」を撮ることが出来るんですね。
〜まとめ〜
これで、初めての水中での練習は終了です。
1回目の水中でのワイド写真練習を終えて、たくさんの知識を得る事ができました。
水中ワイド写真は向きや角度、構図に明るさ、被写体が写真に写る全てであることなど、考慮しなければならない要素が多いので大変でしたが、とても楽しかったです!
良いワイド写真が撮れるようになるために、そしてお客さんに良いワイドのガイドができるように、引き続き頑張っていきたいと思います。
次回は、今回の反省を意識しての再チャレンジになります!
(実はもう収録済みです)
改善されていく様子や、新たな中野さんからのアドバイスなどを記録していきますので、ぜひ覗いてみて下さい😆
<改善できた次回お見せする写真>
1回目の練習では58枚だったのが、2回目の水中練習では、1つずつ改善して撮影していった結果、150枚撮影も撮ってました✨
見てもらった中野さんにも「よく撮れてるじゃん」「成長にびっくり」といってもらえた写真が、いっぱいありましたよ!
<今後の連載予定>
・水中ワイド写真講座 第三回 改善編、水中風景写真
・水中ワイド写真講座 第四回 撮影理論/設定編
・水中ワイド写真講座 第五回 発展編
今回のメモはこちら↓
第二回目の今回の制作期間は、1週間かけて頑張って書きました!
皆さんに楽しんでいただければ幸いです😌