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ヨーロッパ史~教会法の存在~

ヨーロッパの歴史を学んでいて、私が難しいと感じた理由の1つは、シャルル、チャールズ、グレゴリーなど、様々な名前が出てくることの他に、国家と教会の関係でした。

これを法制史からみると、古代ローマ法に遡ることができる「権利の体系」に加えて、中世以来の学識的法文化があります。ここには神学から独立して発展してきたカノン法、いわゆる教会法の存在があります。

ヨーロッパは、国家と教会という2つの組織があり、それぞれ国家法と教会法があります。国家法は物理的な力を含む権力の組織または権力の制度化であるのに対して、教会法は信仰に基づくものであり、権威を制度化したものです。

適用範囲は、国家法は各国の国民またはその国に滞在している外国人だけに適用されますが、教会法の適用には領土・国境・国籍のようなものは存在しません。

ヨーロッパの歴史は、国家と教会の衝突と調和の歴史だったと言えます。カノッサの屈辱という歴史的事件があります。これは、ローマ教皇から波紋をされたローマ王が、イタリアのカノッサ城の城門にて裸足のままローマ教皇グレゴリウスに赦しを願ったことですが、王と教皇の権力の上下関係が理解しずらかったものです。

「太陽と月が異なるぐらいに、教皇と王の間には相違がある(教皇インノチェンチオ二世)」とも主張され、教皇は王を破門できるばかりでなく、臣民が王に誓った忠誠を無効にし、また王を解任することができました。

政教分離は日本国憲法第に規定されていますが、これは国家と教会、あるいは国家と宗教団体との衝突・権力抗争がベースになっているものではなく、外国でいう「Separation of State and Church」は、まさに「国家・教会の分離」であり、日本で言う「政教分離」とは歴史的背景が異なります。

欧米には「政教分離」があるから我が国でも云々、というような議論がある場合には、歴史的背景と規制している趣旨の違いに気をつけないといけないと思います。

以下を参考に記載しました。
教会法とは何だろうか ホセ・ヨンパルト著 成文堂
概説 西洋法制史 勝田有恒/森征一/山内進 編著 ミネルヴァ書房
ローマ法とヨーロッパ ピーター・スタイン著 屋敷二郎 監訳 ミネルヴァ書房
ローマ法の歴史 ウルリッヒ・マンテ著 田中実/瀧澤栄治 訳 ミネルヴァ書房


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