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JALの機内誌のように⑦ ザルツブルク音楽祭

海外に行くことが難しいので、よく乗っていたJALの機内誌のように昔の思い出を書いてみました。

オーストリアのザルツブルクでは毎年夏に音楽祭が開催されてきました。ザルツブルクといえばモーツアルトを思い浮かべますが、ドイツとの国境近くにある町です。

ザルツは「塩」、ブルクは「砦」です。ちなみにハイデルベルグの「ベルグ」は「丘」の意味があります。
当時、塩は貴重品でザルツブルクで産出される岩塩の通行税を大司教が財源にしていました。

映画、サウンドオブミュージックの舞台としても知られています。聖地巡礼した人もいるでしょう。

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夏のザルツブルクには多くの観光客が訪れます。日中は短パン・Tシャツ姿の人も多く、どこで音楽祭があるのだろう、こんなラフな格好で演奏会に行くのだろうか思ってしまいます。

音楽祭中、メインとなる演奏会やオペラは20時頃から始まります。18時頃になると、ラフな姿の観光客の間に、スーツ・ドレス・タキシード姿の男女がちらほら現れてきます。観光客100人がいるとすると数人の着飾った人々がどこから湧き出るように現れてきます。表現は悪いですが、わいて出るような感じです。

短パン・Tシャツで歩いている横にタキシード姿の紳士淑女が歩いている、という奇妙な光景を見ることができます。紳士淑女が向かう先はコンサートホールですから、いたるところから出てきたその人たちは同じ処に向かっていきます。いたるところ、というのは紳士淑女が宿泊しているホテルです。

コンサートホールの前には、軽食が出来る場所があります。ホワイエといいますが、シャンパン・ワインを飲みながら開演前に談笑しています。その様子を写真に撮る観光客。

演奏会10分前くらになると、紳士淑女はコンサートホールに入っていきます。タキシード姿は思ったほど多くなく、男性はスーツ、女性はイブニングドレス。日本人女性も多く、大抵は着物、という感じです。

オーケストラはいろいろですが、夏場はウィーンフィルがウィーンから引っ越してきて音楽祭中はずっとザルツブルクに滞在しています。チケットは3月頃には購入しないとよい席を確保することはできません。当日チケットも販売していますが、ウィーンフィルの演奏会のチケットは当日の入手はよほどのことがないと無理でしょう。

人気のあるプログラム、ブルックナー8番。ブル8と言われている交響曲です。指揮者はいろいろです。
私が聴いた時の指揮者は、スウェーデン人のヘルベルト・ブロムシュテットでした。前の方には着物姿のご婦人たちが15人くらいいました。時差ぼけでこっくりこっくりしているのか、演奏中に頭が揺れている人もいました。ブル8は長い曲ですから、聴き込んでないと眠くなるかもしれません。

演奏が終わった後は、遅い食事になります。コンサートホールから着飾った人々が雑踏の中に消えていきます。

日本で言えば、観光客が溢れる京都で、夕方にいたるところから着飾った人が三々五々現れ、同じ場所に向けてゆっくり歩いていく。終わると、どこかにゆっくりと消えていく。翌日、また同じ光景を見ることができる。

音楽に興味が無い人、チケットが入手出来なかった人でも、この不思議な光景を見るだけでも、ザルツブルク音楽祭に行ったよ、と言えるでしょう。


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