あなたが元気でいてくれたから

今の「保健室の先生」という仕事は好きな仕事だけど、時折ひどく落ち込んだり無力感に襲われりする。
自分の力量不足で落ち込むことは今後の糧にしていこうとまだ前向きに捉えられる。
でも生徒の悩みを解決したいときに、他の教員の理解や協力が得られないと、悩みを抱えた生徒と同じように私も目の前が真っ暗になったような気持ちになる。
そして生徒の気持ちに同調し過ぎてしまう。……この孤独感や絶望を毎日背負っていたのか、と。


今の勤務先では幸いなことにそのような悩みはなく、どの先生も真摯に向き合ってくださる。
しかし過去の勤務先では、先生たちの多忙さと余裕の無さから話ができなかったり、疎ましく思われたこともあった。


あの時のこと

「これ以上話を聴かないでほしい。」
「1時間話を聴くたびにお金をとるといいよ。100円で。」
「これを担任に伝えて何をさせようっていうの?」
「それって今伝える必要があること?」

最初はどの先生も聴いてくださっていたのだ。
でも余裕の無さが人を変化させることはわかるし、私自身も未熟で他力だった。

当時は保健室に来る子たちの数も多く、どの子もなかなかの事情を抱えていた。
私自身が先生たちから上記のような言葉を発せられ、傷つくことを恐れ、周りに頼れなくなって、一人で抱えてしまう悪循環。
そんな私の支えは、保健室を必要としている子どもたちでもあった。
その子たちが保健室で休みつつ、時には授業や自習、行事を頑張ったりする姿を見て私も何とか踏ん張れていた。

そんな時に管理職から言われた一言で、私の気持ちは折られた。

お前の性格は生徒が保健室に来ることを冗長させている。この学校にカウンセラーは一人でいい。

心が折れつつも、異動希望は最後の最後まで悩んだ。
修学旅行や卒業まで見送りたい気持ちも強かった。それくらいに思いれがあった子たちだった。
でも最終的には異動を希望した。
……私がいない方がこの子たちにとって良いことなんだろう。学校経営に合わない私がいても和を乱すだけだ。
たくさんの学びと苦さを味わった勤務先だった。



今のこと

今の勤務先では上記のようなことは全くないが、何かのきっかけで先生たちの余裕がなくなるかもしれない。
だからこそ生徒と同じくらい、先生たちとの会話を大事にしたいし、私ができることは分掌に関わらず協力しようと思っている。
きっとあの時のようなことにはならない。……そうわかってはいても、過去の痛みが疼くときがある。


私は今もあの時と同じように話を聴く。
私ができることは聴くこと、繋ぐこと、休ませることで、基本的には生徒自身が解決することだから。

「私(保健室)がいないと頑張れない」のではなく、「私(保健室)あるから頑張れる」を目指している。
自転車の補助輪のような気持ちで。



そんな矢先、先述した過去の学校の生徒が連絡をくれた。成人して社会人になったという報告を聞いて涙が出た。

まず、ちゃんと生きててくれて良かった。
さらに高校も毎日通ったんだね。
無事に卒業もしたんだね。
就職活動をして、仕事が決まったんだね。
そんなときに、私を思い出してくれたことも、勇気をもって連絡くれたことも、とても嬉しい。

あの時の苦さと向き合える勇気をもらえた。
あなたが今元気でいてくれることに、私も救われる。

生徒に思いれても、気持ちが返ってくることは滅多にないことを知っている。それが目的で仕事をしているわけでもない。

だからこそ今日はスペシャルデーだ。


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