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オボシュランプ、デッキ選択からイベントまで

 ティムールオボシュアドベンチャーランプでCFBPro Showdown November準優勝することができた。
R1 サメローグ WW
R2 マルドゥクロクサ WW
R3 グルールアドベンチャー LWW
R4 グルールアドベンチャー WW
R5 グルールアドベンチャー WW
R6 ティムールランプ WLW
R7 エスパー壊滅 LWW
R8 マルドゥヨーリオン LL

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(12/1追記)また、11/30のSCG Kaldheim Championship Qualifierでは優勝することができた

(インポートリストは記事最下部に二つあります)
 本記事では、今回使用したリストを選択するにあたり行った環境の考察とプレイ指針、サイドボード指針について述べる。


0. 前書き、デッキ選択方針を変える決断を行うまで
 CFBPro Showdown Novemberでの準優勝まで現環境では辛酸を舐めてきた。10月のCFB Week of Wings Qualifierのスタンダードは惨敗、CFB Clashではラクドスで出場しDay1は突破したもののDay2はどうしようもなく不利な緑単フードとマッチし初戦負け。ArenaOpenはザレスローグを握って不利マッチのカニローグを二回引いて1-2で終了。

 いずれも握ったデッキについては構築は納得するまで練りプレイングも自信があった。改善するのであればデッキの選び方であると考えた。
 私の本来好んで使うデッキはカウンターコントロールや環境トップへの殺意を高めたメタ色の濃いものである。上記のザレスローグはまさにカウンターコントロールで、ラクドスは《初子さらい》と《アクロス戦争》を各4枚採用したトップメタのグルールアドベンチャーへの対策に特化したものであった。しかしながら、現在の多様なアーキタイプが乱立し、新たなアーキタイプも生まれ続ける環境では、受けのデッキやメタを絞ったデッキを握ることはどうしようもない相性差のマッチから理不尽な負けが発生する確率を高めることであり、リスクの高い選択であると認識した。

 今はどんな相手も粉砕するようなブン回りが存在し、能動的に動いて相手を倒しに行ける太いデッキを使う必要があると考えた。そしてかつ、現状のトップメタに有利をつけることができるデッキを考えたとき思い至ったのが今回のオボシュ相棒の根本原理入りアドベンチャーデッキだ。

 最終戦はメタ外の意識していないデッキに負けてしまった。一方でグルールをはじめ多くの意識したデッキには安定して勝つことができたため、決勝にたどり着くことができた。

 また賞金プール$1,000のイベントNRG Series Online Trial #3 で私のものをベースにしたオボシュ相棒ランプデッキが優勝、使用者のDyl氏が私の選択を信頼し使用してくれたことを嬉しく思うと同時に、デッキ選択に正解したという確信を深めることができた。

 Winner Takes all $500! Free Event!ではリストをシェアした友人とTop8入りした。大会名の通り優勝者の賞金総取りイベントであったので賞品はなかったが、共に調整を続けている仲間とTop8を戦えたことを非常に嬉しく感じた。

 単に結果を残せたことだけでなく、試行錯誤の過程で発見した環境の特徴や対策指針など、今回のイベントとそのための準備では読者のゲームの理解への助けとなるような記述を行える経験を積めたと考え筆を執ることにした。

 本記事では1節では現環境に存在する主要なデッキについてどのような弱点があると考え、それに勝つためにはどのようなデッキ選択が必要であると考えたかを述べる。2節では選択したデッキのコンセプトや採用カードの説明を既存のティムールランプとの違い、長所、短所を明らかにしながら行う。3節では各主要アーキタイプに対するプレイ指針やサイドボード指針を示す。

1.現環境に存在する主要アーキタイプ

 本節では、現環境でプレイするにあたり、考慮することが必要な使用頻度の高いデッキの紹介を行う。既に現環境でのプレイをある程度行っている読者は本節を飛ばしても問題ない。

1.1. グルールアドベンチャー

 和製グルールと言われる型のものが現在一番多くマッチする相手だ。

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(リストはMPL 佐藤レイ選手のものを引用)

 オーバーパワーの象徴であるエルドレインの王権産のカードの禁止に次ぐ禁止、結果現在のスタンを象徴するカードは《グレートヘンジ》と《エンバレスの宝剣》、結局エルドレインだ。

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 このデッキのブン周りはパワー5のクリーチャーが中心となる。《カザンドゥのマンモス》、《恋煩いの野獣》を3Tにキャストからの4T《グレートヘンジ》は多くのゲームで実質のゲームセットであり、《エンバレスの宝剣》を絡めたパワー6超えの二段攻撃トランプルはやや有利な状況をそのままフィニッシュに持っていってしまう力を持っている。

2.2. ローグ
 ランプデッキは一般的にクロックパーミッションに不利と言われている。デッキ内の土地やランプスペルの枚数が多いため、クリーチャーや相手の場に干渉するスペルが重く、その枚数も少ない。その重いスペルをカウンターされるのが痛い、というのが理由だ。
 グルールに次いで多くマッチするデッキであるローグに負けるデッキは握りたくないが、単なるランプではなく出来事クリーチャーを採用したハイブリッドなデッキにすることで不利を克服できたと考えている。
 ローグと言ってもいくつか型があるのでそれぞれ見ていく。

・サメ型

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(リストはMPL Gabriel Nassif選手のものを引用)

 サメ台風を採用しクリーチャーを削った型。ローグの中でもカウンターが厚く、動きが重いデッキに特に強い。

 短所としてはクリーチャーを削っているため切削速度が落ちているためライフを詰めるのが難しいゲームにおいてライブラリアウトを狙うプランを取りにくいこと、効率よく1:1交換を行うカードが多く、一枚で劇的に状況を変えるカードは存在せず《グレートヘンジ》のようなマスカンスペルを一度通してしまうと勝ち目がなくなる場合が多いことがある。
 また軽いアドバンテージソースにも弱い。《パンくずの道標》、《精神迷わせの秘本》、《エッジウォールの亭主》は後攻の場合ローグ側がカウンターできず、1:1交換によるゲームを否定する。このような状況でこの型はライブラリアウトを狙うプランに変更することが難しい。もちろん、ローグ側は暴力的ドローソース《物語への没入》を持っており、クリーチャーでプレッシャーをかけることでできるためこの特徴が必ずしも致命的になるわけではない。

・カニ型

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(リストはMPL Ondřej Stráský選手のものを引用)

《遺跡カニ》と《マーフォークの風泥棒》を採用した切削効率に特化した型。《物語への没入》を4マナで唱えやすいこと、ライブラリアウトを狙いやすいこと、全体的に軽いため相手の除去・カウンターに強いことが長所。

 一方でクリーチャーの割合を増やしているためその分除去やカウンターの割合は小さくなっている。そのため《物語への没入》への依存度が高い。また、スペルの割合が薄い性質から、相手の墓地枚数を増やさないようなサイドプランも難しく、脱出クリーチャーの対処は序盤の回りが悪くライブラリアウトまで押しけれない場合苦戦することになる。ただし、切削効率がとびぬけてよいため、ラクドスが相手でも《クロクサ》脱出のため必要な4マナより前にライブラリを大量に削りそのままライブラリアウトへ持っていくようなゲームも少なくない。

・ザレスローグ

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(リストはMPL Paulo Vitor Damo Da Rosa選手のものを引用)

 《トリックスター、ザレス・サン》を採用した型。ローグデッキの中ではカードが重めである。単体で強いカードの割合が多めで安定性に優れている。また《ザレス》により中盤以降の勝負に他の型のローグよりも強くなっており、先攻4T《ザレス》のブン回りも存在する。《ザレス》は自身の能力で場に出る場合、《神秘の論争》が当たらないことも強みである。
 短所としてはカニ型のローグへの不利がある。全体的に重いカードが増えたことによりアクションの細かい相手への対処がしづらくなったこと、軽いパーマネントしか採用されていない相手には切り札の《ザレス》が活躍しづらいことが理由である。

1.3. ラクドス

 脱出クリーチャーによりローグに強く、グルールの台頭により派生形がみられるようになったデッキである。

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(リストはMPL Paulo Vitor Damo Da Rosa選手のものを引用)

 《クロクサ》は《オムナス》禁止直後に最も注目が集まったカードであり、《ぬかるみのトリトン》や《ティマレット、死者を呼び出す》によりクリーチャーを並べながら効率良く墓地を肥し、最速クロクサを狙うデッキの使用率が上昇した。
 倒しても何度も脱出するクリーチャーの強さやハンデス、ライフルーズによるフィニッシュまでの効率で優れた強力なデッキであるが、グルールに対してそこまで強くもないことがわかった。《トリトン》やゾンビトークンはパワーが2で《山火事の精霊》と《探索する獣》をブロックすることができない。また、ハンデスで相手の動きを封じるデッキにとって《グレートヘンジ》は致命的である。

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(リストは自作のもの)

 そこで、アグロに強い《初子さらい》や《アクロス戦争》をシナジーのある《悲哀の徘徊者》、《村の儀式》とともに採用した型を考えた。画像のリストは調整チームメンバーと合わせてセカコロ一次予選を8-1とグルールのピンポイントメタデッキとしてはよく機能した。
 しかしこの変更の代償は小さくなかった。コントロール奪取系カードはエスパー壊滅に対して何もしないほぼ死に札である。また、元から《パンくずの道標》によりリソース補給に優れた緑単フードは苦手な相手であるが、《義賊》の枠を削ったことにより序盤からライフを詰めにいくプランが厳しくなり、壊滅的に不利になった。

1.4. エスパー壊滅

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(リストはMPL Andrea Mengucci選手のものを引用)

 効率のいい除去を繰り返し、《ヨーリオン》の大量ブリンクや《屋敷の踊り》による大技を狙うデッキだ。クリーチャーに黒の軽量除去、《グレートヘンジ》には《エルズペス、死に打ち勝つ》と豊富な対処札を備えており、盤面にかみ合うドローができれば最強のデッキである。弱点は後手に回って動くデッキであるため、相手が対処札の枚数より多い処理が必要なカードを展開してきたゲームは苦しいものとなることである。

1.5. 緑単フード

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(リストはsortreew氏がArenaOpenで7-1したものを引用)

 《パンくずの道標》で暴力的なアドバンテージを稼ぐコントロールキラーデッキであり、最速《グレートヘンジ》も狙いやすくブン回りのある太いデッキ。序盤を凌げば《いじわるな狼》でアグロに対しても強く出ることができる。
 弱点はカウンターも汎用除去もないため相手の先攻ブンや《根本原理》のような大技に弱い点。

1.6. ティムールランプ

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(リストはMTG全6のジョン氏の日本選手権2020秋 本戦6位のものを引用)

 《オムナス》を取られ、《僻境への脱出》を取られそれでもなお生き続ける不死鳥のようなデッキ。画像のリストはランプ効率に特化した型で、根本原理の強さは未だ健在ミッドレンジキラーとしての地位は揺るがない。一般的にランプデッキがカウンターに弱いと言われるが、グルールの使用率の高さからメインにカウンターを積まれたデッキは少なく、ローグもカウンターの枚数が減っていることが追い風である。
 短所としては、2マナの強いアクションが《水連のコブラ》しか存在しないことがある。色の特徴から、4T《グレートヘンジ》の妨害も難しい。

2.デッキ選択、なぜオボシュランプがいけると思ったか

 本節では、前節で述べた環境の中でどのように、現在の形のデッキを選択するに至ったかを述べる。

【グルール】
 まずはこれを意識しなければ何も始まらない。
 序盤からのビートと強力なフィニッシャーで隙がないように見えるが何か弱点はないかと考え、次のような仮説を立てた。

仮説: グルールは3マナ帯に寄っているため、2マナ除去に弱い。
 《カザンドゥのマンモス》、《砕骨の巨人》、《恋煩いの野獣》など、主力は3マナ帯に集中しており、2マナで打点として優秀なカードは《山火事の精霊》ぐらいだ。《山火事》も2Tに唱える場合は打点として貧弱で除去にも弱い。《漁る軟泥》も2Tに出して強いカードではない。4Tに複数のアクションを取れる手札のパターンは多くないので、3Tのテンポが鍵を握っていると考えた。

 試した結果、仮説はある程度は正しいことがわかった。実際に2マナ除去はテンポを崩すことに有効だ。赤単アグロのように1, 2マナのクリーチャーが豊富なわけでも速攻クリーチャーが多いわけでもない。しかし、だからといって2マナ除去が豊富な黒系のデッキが有利かというと一概にそういうこともできない。クリーチャーが重めな分中盤以降の勢いも衰えづらく、マナが伸びてからパワーの高いクリーチャー除去を切る優先権を相手に与える前に《グレートヘンジ》を設置のような勝ち筋も存在する。そのため1:1交換を繰り返してリソースを尽きさせれば安心できるわけではなく、序盤のテンポを崩したのち巻き返す隙を与えぬまま、迅速にゲームを終わらせることができるフィニッシャーが必要だ。

 まず試したのは《トリックスター、ザレス・サン》だ。

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 黒系のデッキのフィニッシャーとしては最良であるように思えた。《グレートヘンジ》を奪うことができればゲームを極めて有利な状況に持っていくことができる。実際、ザレスローグはアリーナオープンで使おうと思う程度にはしっくりきた。しかし結果は負け、後述するが他のマッチアップで問題があることがわかった。

 また、対グルールでも以下のような弱点があることが使っていてわかった。
・除去とのかみ合いがいいが逆に除去がなければ攻撃を通すことすらままならない状況が多く、お膳立てが必要。
・奪えば何でも強いというわけではなく、切削、カウンター、除去により相手の墓地にある程度強いカードを置く必要がある。
・攻撃を通す必要があり、奪えるカードも一度に一回だけのため、既にできてしまった不利な状況を覆すことは難しい。

 これらの試行から2マナの汎用除去理不尽なアドバンテージソースの両方が使えるデッキがないかと考えた。

 さて、そんな都合のいいデッキは・・・

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 なんだ、あるじゃないか。

 前述のように、テンポを崩すために除去は有効であっても、《グレートヘンジ》という理不尽なアドバンテージソースの存在から単に除去を切って1:1交換を繰り返しアドバンテージ勝負に持ち込んだところで早くゲームを取りにいかなければ簡単に巻き返される。ならばいっそバウンスでよいと考えた。《厚かましい借り手》の《些細な盗み》によるバウンスであれば非土地パーマネント全てに対処できる。《無情な行動》に対する《漁る軟泥》のカウンター、《取り除き》に対する4マナ以上の《探索する獣》のような裏目は存在せず、《血の長の渇き》と違いインスタントであるため、テンポアドを稼ぐための除去として見るならば最良である。
 相手のリソースを削ることはできないが、「7マナ並べて《発生の根本原理》を唱える」というゴールへ向かって走るだけだ。そこまで行ってしまえばリソースが1枚相手に有利な状況になったことなどどうでもよくなるアドバンテージを稼ぐことができる。

 ここがアドベンチャーデッキで《発生の根本原理》を使うというアイデアの始まりであった。



 次に考えた相手はローグだ。ランプデッキは一般的にカウンターを用いるクロックパーミッションを苦手としており、使用率の高いクロックパーミッションであるローグに勝てないのであれば使うべきか怪しい。

【サメローグ】
 サメローグに対しての対処札として注目したカードは《エッジウォールの亭主》だ。

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 1マナパーマネントであるため除去に対して優位に動くことができる。4Tまで手札に取っておけば相手に優先権を渡す前に一度誘発を確定させられるため実質キャントリップ持ちのように使うこともできる。誘発に必要な《恋煩いの野獣》や《砕骨の巨人》はサイズでローグを上回るため、盤面での優位も取りやすい。全てのクリーチャーが奇数なので《絶滅の契機》には弱いが、こちらはマスカンの《発生の根本原理》、《グレートヘンジ》を持っているためローグ側はソーサリータイミングで4マナ支払うことは難しいはずだ。

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 またこのマッチで光るのが相棒の《オボシュ》だ。まずカウンターや除去を使う相手に手札を一枚多く確保できることは重要である。また《オボシュ》を手札に入れておくことでこちらの3マナ以上のクリーチャーは全てマスト除去に近い状況になる。

【カニローグ】
 ランプデッキではメインは極めて不利なマッチアップであるが、サイド後の《アゴナスの雄牛》により相性は大幅に改善する。

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 この型のローグには《物語への没入》を使わせないことが特に重要で、8枚のコスト+《アゴナスの雄牛》の9枚の墓地枚数を減らせることは効果的である。また脱出の際のコストはRRと軽く、《クロクサ》や《アラクニル》よりも早くから自分の墓地枚数を減らしていくことができる。

【ザレスローグ】
 ザレスローグが《グレートヘンジ》を奪ってきた場合は大変なことになる。しかし《ザレス》を自身の能力で出すことは、自ターン中に4マナを支払うことを要求するため、返しで強いアクションを取れる姿勢を見せることでの牽制が可能だ。また《論争》をすり抜ける《ザレス》だが《借り手》のバウンスで対処可能なため、《借り手》でのテンポ稼ぎは有効である。

 本命のグルール、二番手のローグには既存のランプデッキと比べ大きく相性を改善できたと考える。環境に存在するほかのデッキについても見ていく。

【エスパー壊滅】
 能動的に動いて強いアクションは少ない相手であるので、ランプしてパーマネントを出さずにパスの動きは有効。また《屋敷の踊り》でのアーティファクト、エンチャントのクリーチャー化には8マナ、クリーチャー化せずとも最もバリューの高い《打ち勝つ》を釣るまでに7マナ必要なので一回でもランプすればこちらの根本原理のが早いのでメインは有利。サイド後はお互い《論争》をインしそこまでの有利はつかなくなるがG1を勝てばどちらか一本取ればよい。

【ラクドス】
 いずれの型にせよ、多くの土地を場に出して強力な重いカードを用いるランプデッキから見て、ハンデスを使うラクドスは一般的に不利な相手である。
 しかし、《亭主》によるドローをしながらの展開で序盤の盤面を取られないようにしながらゲームを長引かせ、《グレートヘンジ》か《発生の根本原理》までたどり着けばほぼ勝ちであるため、相性は大幅に改善されている。

【緑単】
 ランプを握ることがすでに対策。《根本原理》がカウンターされず、ランプ速度もこちらのが上。超有利なので枠を割いて何かする必要なし。

【ティムールランプ】
 これだけのデッキがプレイアブルであるとさすがにどこかは切らなければならない。それが今回はここだった。ランプ効率で勝り、《根本原理》に加え《ウギン》など大技の多い相手が有利。
 しかし、相手の《根本原理》を《論争》して《根本原理》を通す、あるいはクリーチャーを序盤に並べてビートするなど勝ち筋はしっかり存在する。そのため、緑単に《パンくずの道標》を置かれるとハンデス戦略が難しくなり詰むラクドスや《根本原理》でほぼ負けの緑単フードに比べれば合理的な選択であると考える。

 以上のように、主要デッキの多くへの有効札を見つけることができ、苦手なデッキについても4割程度は勝てるだろうと考え、このデッキを選択するに至った。

3.プレイ、サイドボード指針

3.1. グルール
 
4Tの最速《グレートヘンジ》を妨害することと、《エンバレスの宝剣》が強い状態でコンバットフェイズを迎えないことを意識。相棒を3マナ払って手札に加えることができるゲームが少ないアグロデッキには、サイド後《オボシュ》の相棒設定を解除し、クリーチャーの多いデッキに有効な《アクロス戦争》をサイドインする。
 前述のとおり、3マナのアクションを妨害できるかで相手のテンポが大きく変わる。《山火事の精霊》はフェッチランドを置かれると、《砕骨の巨人》でも《棘平原の危険》でも倒せなくなるため倒せるときに倒す。
 注意点として、後攻の《厚かましい借り手》は先攻3Tの《恋煩いの野獣》や《カザンドゥのマンモス》をちょうど2マナでバウンスすることができ、強力な一方で、先攻の場合は3Tに使うと1マナ余り、テンポを見ると強い動きではない。またドローの一回少ない先攻ではリソース量の制約が強く、壁として機能しない《借り手》は除去と壁を兼ねる《砕骨の巨人》に比べるとどうしても弱くなる。

サイドボード例1: 先攻の場合
+焦熱の竜火2、アクロス戦争2
- 耕作2、厚かましい借り手2

 後攻の場合は手札枚数に1枚余裕がある代わりに、2Tのアクションがなく相手のテンポを崩せなかった場合の危険が大きい。最速《ヘンジ》を止められる《借り手》に加え、《焦熱の竜火》を多めに取りたい。
 《エッジウォールの亭主》は優秀なドローソースであるが、後攻ではサイドアウトする。2マナの除去を使い、3マナで壁を立てるというアクションを2, 3Tに取りたいため、タップインの土地は1Tあるいは4Tに置くことが多く、《亭主》を出すタイミングが少ないからだ。

サイドボード例2: 後攻の場合
+焦熱の竜火4、アクロス戦争2
-エッジウォールの亭主3、耕作2、寓話の小道

3.2. ローグ
 相手の型によって大きくサイドボードの指針が異なる。まずサメ型とザレス型はライブラリアウトの心配が薄いので、相手のクリーチャーに除去を切らず放置する危険が少ない。こちらもクリーチャーを展開し、クリーチャーサイズでプレッシャーをかけながら《根本原理》や《グレートヘンジ》を通せるタイミングを探すプランを取りやすい。ローグ相手に有効な《アゴナスの雄牛》であるが、手札を蓄えたい相手であるため、手札に複数来た時に弱いカードを全てサイドインはリスクがあるので先攻ならば2枚にすることが多い。

サイドボード例1: サメ型、ザレス型に先攻の場合
+神秘の論争4、アゴナスの雄牛2
-厚かましい借り手4、耕作2

 後攻の場合は手札が少なく、マナでアドバンテージを持っている相手にとって《物語への没入》がより重要なカードであるため、《アゴナスの雄牛》を全てサイドインし、相手が4マナで《物語への没入》をキャストできるタイミングをできるだけ少なくする。《アゴナスの雄牛》に脱出に必要な墓地8枚を合わせた9枚は、《物語への没入》を4マナでキャストするために必要な7枚より多いため、どうしても墓地の追放では妨害できないタイミングができてしまう。このとき《論争》を構える、あるいは構えているふりをすることは重要であるため、3マナソーサリーで1番使いたい3マナが出るタイミングに使えない《耕作》を抜き、隙の大きい《根本原理》を削る。

サイドボード例2: サメ型に後攻の場合
+神秘の論争4、アゴナスの雄牛4
- 耕作4、恋煩いの野獣2、発生の根本原理、寓話の小道

 《ザレス》は《論争》にかからないため、一度出てしまうと《借り手》でしか処理ができなくなる。後攻では《ザレス》のバリューを下げるため、こちらの最強パーマネントである《グレートヘンジ》を抜いてしまうことを考える。
 稀ではあるが、自分の土地が多く、手札に《借り手》がある場合は《峰の恐怖》などの強いパーマネントをわざと釣らせてしまうのも手だ。

サイドボード例3: ザレス型に後攻の場合
+神秘の論争4、アゴナスの雄牛4
- 耕作4、グレートヘンジ2、恋煩いの野獣

 カニ型は切削効率の良さからライブラリアウトまでのタイムリミットが厳しい相手である。《オボシュ》を手札に入れる余裕はないゲームが多いため、相棒設定を解除し、《焦熱の竜火》をサイドインする。《アゴナスの雄牛》を早い段階から脱出させることができる相手であり、《物語への没入》を唱えさせたくないため、重い《発生の根本原理》を削りクリーチャーでのビートをメインプランに据える。ライブラリアウト対策にサイドインするカードをアウトするカードより増やす。《根本原理》を削り平均マナコストが下がっているため、土地の割合が変わることによるデッキの歪みは小さい。

サイドボード例4: カニ型が相手の場合
+神秘の論争4、アゴナスの雄牛4、焦熱の竜火4
- 耕作4、発生の根本原理4

3.3. ラクドス
 ハンデス戦略を用いる相手であり、《エッジウォールの亭主》の誘発回数がゲームの鍵となる。序盤に十分に手札を確保し、《グレートヘンジ》や《根本原理》の爆発的なアドバンテージ元を通すことがゴール。《亭主》は重要なカードであるため、できるだけ場に出したターンに相手に優先権を渡さずに出来事クリーチャーを唱え確実に1度以上誘発させたい。1, 2Tに《亭主》を出す場合は《血の長の渇き》や《無情な行動》を使われたときのリスクを十分に考える必要がある。ラクドス側のゲームプランは、こちらが《根本原理》を唱えるのに必要な土地枚数を揃える前にハンデスでリソースを削り《クロクサ》で速やかにゲームを終わらせることなので、手札を減らさずに土地を増やすことができる《耕作》は有効。脱出により複数回手札を補充できる《アゴナスの雄牛》も有効であるのでサイドインする。

サイドボード例
+アゴナスの雄牛3
-厚かましい借り手3

3.4. エスパー壊滅
 念頭に置くべきは、バリューを取りに行ってはいけない相手であるということだ。次の画像のような手札でエスパー壊滅が対面のG1、あなたはどのようなゲームプランを考えるだろうか?

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 もし妨害されないのであれば、2Tに《亭主》を置いて、3Tに《野獣》、4T《グレートヘンジ》が最強の動きだ。しかしちょっと待ってほしい。《野獣》が除去された場合、《グレートヘンジ》は唱えられず手札で腐る可能性が高い。《野獣》が除去されたら場合があまりに悲惨だ。《野獣》が除去されなかった場合も、《亭主》が除去されていると後続のクリーチャーがないため、《グレートヘンジ》を置くことができても、一度も《ヘンジ》でドローしないまま《エルズペス、死に打ち勝つ》で追放されてしまうということもありうる。私はこの手札の3Tは後続となる《オボシュ》を手札に加えることが正解であると考えている。もしランプスペルを引くことができればそれを唱えるのが理想である。
 大技の《屋敷の踊り》を持っているエスパー壊滅を相手にゲームを長引かせることには抵抗を感じるかもしれないが、4Tまでは安定性を取ることが得策である。G1ではお互いカウンターがない(あるいは少ない)ため、相手の《踊り》より早い《根本原理》に軍配が上がる。サイド後はお互いカウンターをサイドインするが、《ヨーリオン》相棒の80枚デッキではサイドの枠がきつく、カウンターの枚数はそう多くはない。確実に《亭主》のドローを誘発し、カウンターを多く引ける確率を増やすことが重要である。

サイドボード例
+神秘の論争4
-砕骨の巨人2、棘平原の危険2

3.5. 緑単フード

 極めて有利な相手。《根本原理》をカウンターできず、クリーチャーの除去手段に乏しいため素出しした《峰の恐怖》が生存しやすい。相手としては序盤からライフを詰めにくるしかないため、マナクリを見たらすぐ踏みつける、《借り手》があれば《ヘンジ》を置かれないように《野獣》をバウンスなど序盤を抑えることができれば勝利は目前である。対処札をサイドインせずに愚直にランプして《根本原理》を投げるプランが最強である。

サイドボード例
無変更

3.6. ティムールランプ

 相手の方がランプ効率は良く、《根本原理》が早いためクリーチャーのビートで押し切ることを考えたい。純正ティムールランプが10マナ溜めて《論争》ケアで3マナ構えながら《根本原理》を唱えるまでのターン数は多くないため、クリーチャーの展開の際はバリューを取っていかざるを得ない。可能な限り効率よくライフを詰めて、相手が10マナ出せるようになる前にゲームを決めにいきたい。

サイドボード例
+神秘の論争4
-厚かましい借り手4

4. メタゲームの変化に対し採用の余地のあるカードの紹介(12/1追記)

 メタゲームは常に移り変わるものである。デッキの強さは環境に対する相対的な相性で決まるため、デッキを使い続けるためには微調整を続けることが必要である。
 私が11/30のSCG Kaldheim Championship Qualifierで優勝した際に使用したリストで採用した新規カードに加え、いくつかの環境次第で採用を検討する余地があると考えているカードについて、意識する相手と長所、短所を述べる。

4.1. 厳格な放逐

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 意識する相手はグルールアグロは緑単フードで、パワーの高いクリーチャーをバウンスし《グレートヘンジ》のターンを遅らせることが目的。《厚かましい借り手》のインスタント面に比べ1マナ軽いことはたくさんの長所がある。
例:
・3Tに《豆の木の巨人》によるランプで《島》を持ってくればそのままキャスト可能。
・《根本原理》から青のアンタップイン土地が一枚でも捲れれば返しターンのリーサル回避に用いることができる。
・《エンバレスの宝剣》や《意地悪な狼》など4T前後に出てくる強力なカードに対するケアに便利。

4.2. バーラ・ゲドの復活

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 意識する相手はエスパー・ディミーアコントロール、より具体的には《エルズペスの悪夢》だ。除去により1:1交換を続け長期アドバンテージを狙う黒系コントロールに対し、相手が除去を切って得する状況でクリーチャーを展開することは得策ではない。一般的に黒系コントロールは低マナ域で能動的に動くことができるカードが少ないため、2~4Tにクリーチャーを出さずにパスすることで、確実な《エッジウォールの亭主》の誘発が可能となりゲーム展開を有利に進めることができる。その例外が《エルズペスの悪夢》で3Tに使用して強いカードである(リストにあれば当然ケアするので、一章の除去は滅多に機能しないがそれでも強力)。ハンデスは《バーラ・ゲドの復活》で帳消しにすることが可能である。
 また《根本原理》のバリューが最も高いのは大くのゲームで7マナが揃ったそのターンだ。《バーラ・ゲドの復活》による墓地回収を前提にカウンターをケアせずに《根本原理》をキャストすることができるのは多大なアドバンテージである。

4.3. 怪物の代弁者、ビビアン

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 意識する相手はローグで、特に《遺跡カニ》が入っている型のもの。効率のいいLO戦略により《根本原理》が間に合っていない場合の代替えのゴール地点として素晴らしい。3/3到達トークンはローグデッキの《ザレス・サン》以外のクリーチャーをコンバットで倒すことができるため、ローグ側が《ビビアン》を除去したうえで有利盤面を作ることは容易ではない。また、《根本原理》は7マナであることから《アゴナスの雄牛》との相性が悪いがこちらは5マナであるため、《雄牛》をキャストするために捨てなければならない、という事態も回避できる。
 クリーチャーデッキのトークンを出すPWは本来コントロールに対し有効であるが、《予見された壊滅》で容易に処理されてしまうこと、同じく5マナ域の《峰の恐怖》と比べ《根本原理》から捲れた際のバリューが低いことを理由にSCG Kaldheim Championship Qualifierでは採用を見送った。

4.4. 運命の神、クローティス

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 ローグに対し致命的なティムールカラーで採用可能なカードの中で最もマナコストが低いカード。先攻ならば《論争》も《水難》も間に合わず通る可能性が高い。強力ではあるが、手札を増やさないため、ランプして《根本原理》のメインプランに合わないことや、ザレス型のローグに対しては、こちらのターン終了時に瞬速クリーチャーを展開し切削からの《ザレス・サン》の動きをされると、追放が間に合わない場合があることが短所である。採用する場合は《アゴナスの雄牛》を3枚以上サイドインし、《根本原理》を全て抜いたビートダウンプランを取るアグレッシブサイドボーディングを行いたい。SCG Kaldheim Championship Qualifierではローグの使用率が高いと考えなかったので、サイドボード枠をローグに多く割く価値を感じず採用を見送った。

4.5. 垣間見た自由

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 効率良くインスタントタイミングで墓地を減らすことができ、ローグの《物語への没入》の4マナキャストを防ぐ目的では最高のカード。偶数ではあるが、《オボシュ》が間に合っていないと考えカニ型のローグには《焦熱の竜火》をサイドインしているので採用の余地がある。

4.6. 老いたる者、ガドウィック

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 ラクドスや黒系コントロールなど、ハンデスを使うデッキに対しトップデッキしたときのバリューが高いカード。アドを取れる枚数では5枚目の《根本原理》として見てよい。《クロクサ》に対してはクリーチャータップの誘発能力も有効である。現在はラクドスに対し有利な緑単の使用率が高くラクドスが勝ちあがる環境ではないため採用を見送っているが、環境次第では採用を考えたい。

4.7. 唱え損ね

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 意識する相手はティムールランプ。ティムールミラーでは3Tに《耕作》か《豆の木の巨人》でランプできるかで大きく差がつくことがあり、そこに当たるカウンターでかつ《根本原理》に対する5枚目の《論争》にもなる。

謝辞
 議論や対戦を通じ示唆を与えてくださったsortreew氏、藤江竜三氏、TellKou氏、Glacier氏、Daitoryo氏、現環境のティムールランプの可能性に気づかせてくれたMTG全6のジョン氏をはじめとする調整チームメンバーに感謝致します。満足のいくデッキを作成でき、結果を残すことはできたのは彼らのおかげです。
 本記事で使用したデッキ画像作成ツールMTG Decklist Viewer製作者の様に感謝申し上げます。おかげ様で視認性の高い画像を手軽に作成でき、執筆の助けになりました。






インポート用デッキリスト

【CFBPro Showdown November準優勝時のもの】
相棒
1 獲物貫き、オボシュ (IKO) 228

デッキ
1 天啓の神殿 (M20) 253
3 神秘の神殿 (M20) 255
4 厚かましい借り手 (ELD) 39
4 砕骨の巨人 (ELD) 115
4 豆の木の巨人 (ELD) 149
4 エッジウォールの亭主 (ELD) 151
2 グレートヘンジ (ELD) 161
4 恋煩いの野獣 (ELD) 165
2 寓話の小道 (ELD) 244
4 発生の根本原理 (IKO) 189
4 ケトリアのトライオーム (IKO) 250
4 峰の恐怖 (M21) 164
4 耕作 (M21) 177
3 棘平原の危険 (ZNR) 166
4 岩山被りの小道 (ZNR) 261
4 河川滑りの小道 (ZNR) 264
3 島 (KLR) 290
2 山 (KLR) 298
4 森 (KLR) 300

サイドボード
4 神秘の論争 (ELD) 58
4 焦熱の竜火 (ELD) 139
2 アクロス戦争 (THB) 124
4 アゴナスの雄牛 (THB) 147
1 獲物貫き、オボシュ (IKO) 228

【SCG Kaldheim Championship Qualifier優勝時のもの】
相棒
1 獲物貫き、オボシュ (IKO) 228

デッキ
4 豆の木の巨人 (ELD) 149
4 ケトリアのトライオーム (IKO) 250
3 棘平原の危険 (ZNR) 166
4 河川滑りの小道 (ZNR) 264
3 島 (ANB) 113
3 耕作 (M21) 177
4 砕骨の巨人 (ELD) 115
4 恋煩いの野獣 (ELD) 165
2 山 (ANB) 114
4 発生の根本原理 (IKO) 189
4 岩山被りの小道 (ZNR) 261
2 グレートヘンジ (ELD) 161
3 森 (ANB) 112
4 厚かましい借り手 (ELD) 39
4 エッジウォールの亭主 (ELD) 151
4 峰の恐怖 (M21) 164
4 神秘の神殿 (M21) 254
2 寓話の小道 (ELD) 244
1 バーラ・ゲドの復活 (ZNR) 180

サイドボード
3 神秘の論争 (ELD) 58
3 アゴナスの雄牛 (THB) 147
3 アクロス戦争 (THB) 124
1 獲物貫き、オボシュ (IKO) 228
1 厳格な放逐 (THB) 68
4 焦熱の竜火 (ELD) 139








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おもろいこと書くやんけ、ちょっと金投げたるわというあなたの気持ちが最大の報酬 今日という日に彩りをくれてありがとう