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フレンチポップシンガーAngèleが爆進するニューフェミニズム -金髪美女による逆襲-

フェミニズムのことを書くと誤解されそうだから言っておくけど、(ものすごく語弊がある言い方だが)私は男性が大好きだ。女性ももちろん大好きだ。

共通点も相違点も理解して不公平さを無くしていくことに意味があると思っている。

女性に対する差別には「なめたらいかんぜよ。」の精神で戦っていきたいという宣言で前置きを締める。

Angèleって何者?


あなたはAngèleを知っているだろうか。

読み方はアンジェル。その名の通り天使のように可愛い24歳のシンガーだ。
CHANEL Eyewearの広告にも出ているヨーロッパ版バービー人形のような美女だ。

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フレンチポップシンガーと見出しに書いたけど、実際はベルギー出身の彼女。ベルギーは昔から名だたるアーティストを輩出している小さな国で、フランスで超有名なアーティストもベルギー出身であることが多々ある。

2018年10月に1stアルバム «Brol»を発売し、シングル«Tout oublier»で9週間チャート1位という同じベルギー出身アーティストStromaeの記録を破るという快挙を成し遂げた。

«Tout oublier»のMVが真夏のビーチでスキーウェアを着て実のお兄ちゃんと歌うというシュール可愛い仕上がりになっているので一見の価値あり。↓

彼女の詳細な経歴に関しては日本語版はないけど英語版ウィキペディアがあるのでここでは省略する。

«Balance ton quoi»が起こした革命


1stアルバム«Brol»からのセカンドシングル«Balance ton quoi»で、フランスにおける彼女の立ち位置を確固たるものにしたという印象は大きい。

«Balance ton quoi»の意味は英語で“Expose your what”、日本語にすると「何かを晒せ」のような感じ。#MeToo ムーブメントのおかげで、もちろんフランスでも同じムーブメントはどんどん勢力を増している。フランス版の#MeToo にあたるハッシュタグが#BalanceTonPorc (あなたの豚野郎を晒せ)。これをもじったタイトルからも分かるように、現在のフェミニズム観を全面的に打ち出した歌だ。

出だしの歌詞を抜粋すると、

Ils parlent tous comme des animaux
De toutes les chattes ça parle mal
2018 je sais pas ce qu'il te faut
Mais je suis plus qu'un animal
J’ai vu que le rap est à la mode
Et qu'il marche mieux quand il est sale
Bah faudrait peut être casser les codes
Une fille qui l'ouvre ça serait normal

男たちはいつも動物みたいに全ての女ことを悪く言うけど、もう今は2018年。
あなたたちが何を必要としているのか知らないけど、私は動物じゃない。
ラップが流行ってる。
汚い言葉を使えば使うほどかっこいいらしい。
それなら私たちは今まで押し付けられてきたルールを破る。
女の子が口を開くことが普通になる。

Balance ton quoi
Même si tu parles mal des filles je sais qu'au fond t'as compris
Balance ton quoi
Un jour peut-être ça changera
Balance ton quoi
Donc laisse-moi te chanter
D'aller te faire en... humhumhumhum
Ouais, je passerai pas à la radio
Parce que mes mots sont pas très beaux

アイツを晒せ
あなたが女の子のことを悪く言ったって本当は心の奥底では理解してるって私は知ってる
アイツのやったことを晒せ
いつか変わると信じてる
我慢するな
だから私に歌わせて
このクソ野郎
ラジオでは流してくれない 
本当のことは綺麗じゃないから

スーパー意訳で申し訳ないが、意味は伝わったと信じたい。

«D’aller te faire en....humhumhum»の箇所だが、本来なら «D’aller te faire enculer»となるのを濁して歌っている。
英語にすると “Go fuck yourself”なので、いわゆるswear word(汚い罵り言葉)であることがわかる。日本語に訳すのが難しくて「このクソ野郎」になった。私の罵り言葉の語彙力の無さが泣ける。

MVを見てみよう。↓

サムネイルは全裸監督もビックリの脇毛を笑顔で見せている彼女。(付け毛だが)
既存の女性シンガーの概念に囚われないアプローチはBillie Eilishも行っているが、Angèleは“ティーンエイジャーを過ぎた女の子“に寄り添っているアプローチ方法だと個人的には思っている。(私にはビリーアイリッシュがアヴリルラヴィーンと被ってしょうがない。)

話をMVの内容に戻すと、2:00から歌が途切れて教室でグループディスカッションの場面になる。
黒板に書かれている “What if she says NO...?”を背にAngèleがみんなに問いかける。「みんな理解できた?」と。

1人の男の人(実は俳優のPierre Niney)が手を上げて質問する。

男の人「ちょっとまだハッキリしてないポイントがあるんだけど。。。女の子がイヤだという時って必ずしもイヤじゃない印象を受けるんだけど、それって、」

Angèle 「(くい気味で) イヤはイヤという意味です。」Elle a dit «C’est Non»

「イヤよイヤよも好きのうち」なんて言葉は消えてしまえ。これは女性が「イヤじゃないけどイヤと言ってしまう」のを止めなければならない。女性側も価値観を変えないと男性側が変わるわけがない。フェミニズムの敵は同じ女性の価値観だったりするのだ。

NoはNo。今まで笑ってやり過ごしてきた果てしなくしょうもないセクハラ発言や行動を、やり過ごすことが解決策ではもうない。

#MeToo ムーブメントを受けて、今まで我慢してきた女性に対する悪行は我慢しなくて良い、という確固たる決意を余す事なくこの歌に込めたのが弱冠22歳(当時)の金髪美女Angèleなのだ。

昨年11月にフランスで行われた「女性に対する暴力を根絶する運動」の大規模デモでは、デモ参加者たちが大声で«Balance ton quoi»を大合唱していた。この歌が女性のアンセムになった瞬間だった。

私の夫の従姉妹の8歳の娘はこの歌が大好きだ。
本来の意味もまだ知らず、«D'aller te faire en... humhumhumhum»と歌っている。
この時私は、フランスそしてヨーロッパを巻き込んで、Angèleが「まだ女性観が確立されていない子供たち」に今の女性観を説く伝道師としてこれからも爆進していって欲しいと切に願った。


この歌は今を生きる全ての女性への歌だ。

そしてこれから女性になる全ての女の子への歌だ。

言ってやればいい。
«Aller te faire enculer»アレトゥフェルオンキュレ、と。

汚い言葉を言いたくなければ歌ってやればいい。
«Aller te faire en... humhumhumhum»アレトゥフェルオン、ンーンンンンー、と。


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