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Event Report:学生目線が地域を救う?! マーケティングの基礎講座

「カタカナ用語とかあると、無理だわって私はなっちゃう……わかりやすく伝わればなぁ」と、講師の山口智胡(やまぐち ちこ)さんは話す。マーケティングと聞くと、3Cだの4Pだの、ソリューションとかインサイトだとかカタカナ用語が思い起こされる。これだけで拒絶反応が出てしまう方も少なくないだろう。

今回は弘前のコラーニングスペースHLS弘前が実施しているインターンシップ「まちなかキャンパスプロジェクト」の参加学生向け講座である、「学生目線が地域を救う?! マーケティングの基礎講座」に一般参加した筆者のイベントレポートである。

講師の山口さんの一言にあったようにカタカナ用語が少ない、マーケティング初心者に優しい講座であった。筆者が気になったトピックスを中心に、ここでの「学生目線とは何か」を考えてみる。

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pick.1 ニーズとインサイトと仮説生成

講座は参加者のチェックインから始まった。チェクインでは参加者から、①今日知りたいこと ②マーケティングとはなんだと思うかについてコメントを募った。

参加者からはマーケティングとは「効率化」「組織づくり」「商品の宣伝」などのコメントが寄せられた。コメントを拾った上で、山口さんは「モノを売る仕組みづくり」がよく言われるマーケティングの定義だと紹介した。

しかし、「モノを売る仕組みづくり」はあくまで会社目線の定義だと山口さんは指摘する。最近の潮流を踏まえた上で、マーケティングを「顧客に価値を提供するために行うすべての事業活動」とした。

マーケティング全体では、①市場・ターゲット調査 ②商品企画 ③プロモーションの策定の3つから成っている。特にここでは市場・ターゲット調査について述べたい。

市場・ターゲット調査、すでに横文字が出てきたがまだ理解できるだろう。つまるところ、「誰に、何を、どんなコンセプトで」を調べることだ。これが分かれば今、必要とされているモノが何なのかわかるといったところだろうか。データから消費者心理を推察する過程である。

モノが欲しいという消費者心理、ニーズと言えるものだ。最近はニーズ以上に”インサイト”が重視される。カタカナが出てしまった。これは消費者自身の欲しい物に対する理解の深さのことだ。簡単に説明すると次のようになる。

顕在ニーズ=本人がわかっている要望
潜在ニーズ=本人はわかっているが、引き出されなければ言葉に出ない要望
インサイト=本人もわかっていない本音・深層心理からの要望

山口さんは正直に「インサイトは簡単に見つからない」という打ち明ける。行動データなどの定量的なデータと、インタビュー・観察からわかる定性的なデータの両方を元に仮説をつくる。それが消費者心理に合っている物なのか、さらなる検証を行うというのだ。

pick.2 マーケティングの変遷

講義の序盤でマーケティングの変遷について説明がなされた。マーケティングは、科学技術の進歩や時代背景によって、その時々に対応してきた。まとめるとこうだ。

1900-1960年代 マーケティング1.0
・需要過多。安ければ売れる時代
・「製品中心」のモノを売る仕組みづくり

1970-1980年代 マーケティング2.0
・安いだけでは売れない。顧客を選別し分析
・「買い手主導」のモノを売る仕組みづくり

1990-2000年代 マーケティング3.0
・利益の追求だけでない社会的責任が求められる
・インターネットの普及

2010年代- マーケティング4.0
・SNSの普及により消費者自身が情報発信できるようになる
・購入後を意識した価値提供の仕組みづくり

山口さんとオブザーバーの雑談では、オブザーバーから「20数年までに大学でマーケティングの勉強をしていたので懐かしいものも……。僕のとき、デジタルのない2000年くらいだったのでその後の言葉とか初めて聞くのもあった」とコメントがあった。

市場・ターゲット調査がデータに基づいていることを考えると、インターネットが普及した現在では、1人の人間では処理しきれないレベルの新しい情報が飛び交っている。変化が速くなるのも納得だろう。

pick.3 データはどこから?

マーケティング、特に市場・ターゲット調査の基礎になるデータはどこから出てくるものだろう。データは「定量データ」と定性データの2種類がある。

定量データ:統計情報などの「大衆」を対象としたデータ
定性データ:語りや観察記録などの「少数」を対象としたデータ

定量/定性データの主な情報収集には次のようなものが用いられる。

定量データ
・選択方式のアンケート
・POSレジによる既存顧客データ
・Webサイトでの行動

定性データ
・自由記述のアンケート
・インタビュー
・店舗での行動観察

本講座の最後には「シードルといえば青森というブランドをもっと確立する」をテーマにしたワークが行われた。そこで用いられたデータは既にネット上で公開されているものだ。特に定量データについては、公開されているものも多い。やろうと思えば、検索エンジンを駆使して市場・ターゲット調査を行うことは可能といえそうだ。

マーケティングにおける学生目線とは何だろう?

内容はたっぷり3時間の講座。正直なところ、参加者視点では息切れしてしまう部分もあった。実践を通して少しずつ「こういうことか!」と理解していくのだろう。

内容としては、社会人にも通用するものだ。では、「学生目線」とは何なのだろう。講座内容をそのまま実践しても、学生目線になるのだろうか?「学生目線」という点から講座を振り返ると、次のような場面で学生目線や学生という特性が活かせそうだ。これは一参加者である筆者個人の意見であることはご承知いただきたい。

① 同じデータからでも「学生目線」の仮説を立てられる

インサイトの仮説を考えてみるワークでは、人によって全く異なる仮説が挙げられた。仮説はきっと、その人の考え方や価値観とも関連しているのではないか。

初めての一人暮らし、昼間は講義に出て、夕方からバイトして、深夜に課題……
というような学生によくある生活を送っている人に特徴的な価値観が生まれるのだとすると、学生らしい仮説を立てることになるだろう。

学生目線の仮説が地域を救う……ことも十分ありえる。

② ”今”のマーケティングのトレンドを考え方の根底に持っている

マーケティングには変遷があった。そして、オブザーバーからのコメントにあったように現在地域で中心となって活動する人の考え方と、現在重要な考え方とは違いがあるかもしれない。

変遷を知ることで、この違いに気づくことはもちろん可能だ。しかし、そのような考え方によるサービスを、生まれてから受け続けてきたのが、学生(19-21歳)とみることもできるだろう。世代論っぽくいうのであればZ世代というやつだ。

プロのマーケターは学び続けることで年齢に関わらず一線で活躍する。ということは、学生でなくても学生目線の考え方をすることは可能だ。しかし、それなら学生に頼んでしまう方が早いこともある。詭弁かもしれないが。

③ 「学生」という身分はいろんなデータを聞きやすい

ワークで使われたデータは既にインターネットで公開されており、誰でもアクセスできる情報である。もし、学生しかアクセスできないデータがあるとしたら……? そして、そのデータが「地域を救う」ことに効果的であれば学生目線が発揮する影響力は大きいだろう。

学生しかアクセスできないデータとは何だろうか。それは実践型インターンシップの中で、受け入れ企業から聞けるお話がそのひとつだ。今回のワークの素材として出てこなかった定性データである。学生はインターン生として企業側に求められて、企業人になってからでは聞けない話を伺える立場になれる。学生から企業への提案により企業活動を通して、間接的に地域を救うことも可能だ……と思う。

ここだけ読めば言いたいことがわかるまとめ

pick.1
学生視点ならではインサイトの仮説が立てられる。学生視点とはどういうものか、学生自身が理解しておく必要がありそう!

pick.2
現在の学生が学んでいる考え方は、最新のマーケティングに基づく。企業の方が、最新のマーケティングを学んで実践するより、学生が基本的なマーケティングの考え方を学ぶ方が効果があるかもしれない。やっぱり、詭弁かも。

pick.3
特に実践型のインターンシップへの参加で得られる情報は、企業人でない学生にしか聞くことができないデータがある。学生にしかアクセスできないデータは他にもあるかもしれない。それをマーケティングに活かせれば……?

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