なぜあなたのアニメーションは評価されない?【意識すべき6つのポイント】
制作物のチェックを受ける際に「なんか変」「○○っぽくない」「もっと良い感じで」などのフィードバックを受けることはないでしょうか。頑張って作ってもなかなかOKが出ない。それはあなたが評価されるポイントを知らないことが原因かもしれません。
今回はアニメーション(ゲームモーション)を評価する側がどこを見ているのかを解説します。また、自分が評価する側になった際の参考にするのもオススメです。評価する場合にも、チェックの基準を曖昧にせず文章化しておくことは大切です。
いきなり結論になりますが、アニメーションの評価基準は以下の6つです。
各項目の重要度は関わっているプロジェクトによって変化します。3頭身のキャラクターだと繋がりやフィジックスの正しさはさほど要求されませんが「意味が伝わるか」「ポーズがキマッているか」は重要視されやすい傾向にあります。
上記6つの評価基準は、日々大量のアニメーションをチェックしなくてはならず、より効率的に質を高めるため必要にかられて設定したものであり、絶対的な正解というわけではありません。しかし、今日の現場でも横行している「勘による成果物の評価」では効率を上げることも、アニメーターの成長を後押しすることも難しいように感じています。
また、評価者のすべきことはフィードバックによって「自分好みに修正させる」ことではなく、方向性を示して「正しい道へ導く」ことなのです。
では上から順に解説していきます。
意味が伝わる
動きの意味や機能が正しく観客(ユーザー)に伝わるかどうかです。例えば、攻撃ボタンを押しているのに剣も振らずにぷらぷらしていると、押したボタンにどういう意味があるのかを理解できず観客が混乱してしまいます。そのため、どのような意味、機能なのかを分かりやすく伝えられるように作成する事は非常に重要なポイントです。
意味=ストーリーとも捉えられます。キャラクターの考えていることや感情まで、動きだけで伝える必要があります。動きの大きさや少しのニュアンスの違いで印象が大きく変化してしまう上、画面に対するキャラクターの表示サイズによっても見やすさは変わってくるため注意が必要になります。(ロングショットだと大きいアクションでないと動きが伝わらないが、アップショットでアクションが大きいと動きをカメラで追いきれない、など)
常に観客の目線に立って、意味・機能が伝わっているか確認しましょう。
繋がりがスムース
アクションとアクションの繋がり、動きが滑らかに繋がっているかどうかです。例えばスタート、ループの2構成モーションを作成する場合、スタートからループへ移行するタイミングで回転のベクトルが右から左へ急に変化すると物理現象として違和感が出てしまいます。何故かと言えば、人間にはそのような動きができないからです。人は日頃からリアルな人間の動きを見続けているため、少しの違和感も見逃してはくれません。人間にできない動きを描く際には細心の注意を払いましょう。
例えば、平坦な道にテニスボールがコロコロと転がってきたとして、目の前でクッ!っと急に曲がったらどうでしょうか。誰もが違和感を抱き、もしかすると恐怖を感じるかもしれません。そのような現実ではあり得ないこともアニメーターが気をつけないと発生してしまうため注意が必要です。
アニメーション12原則で言うところの、「Slow In & Slow Out」または「ease-in-out」にも関連します。ベクトルを変化させたい場合には、どれだけフレーム数が少なくても「ease-in-out」させるように心がけましょう。それだけでも違和感はかなり軽減されるはずです。
アクションのモーメントの連続性が継続するように注意しましょう。
フィジックスが正しい
フィジックス=物理現象のことです。上記、モーメントの連続性も含まれます。物理的にリアリティのある動きになっているかどうかを評価します。重心の移動をしっかりと表現しましょう。
重心や遠心力など現実世界では当たり前のものでも、アニメーションとなるとアニメーターが描写しないと表現されないものなので、しっかりと意識して作っていく必要があります。
アニメーション12原則で言うところの「Squash & Stretch」「Anticipation」「Follow Through & Overlapping」「Slow In & Slow Out」「Arc」などが関連します。
また、キャラクターごとに重さを統一することも重要です。なぜかと言うと、人は体重が急に40キロ増えたり減ったりしないからです。重さが急に変わってしまうと、違うキャラクターのように感じてしまうため注意が必要です。
ポーズがキマッている
かっこいいポーズという意味ではなく、キャラクター性を反映したポーズになっているかどうかです。例えば、格好わるいキャラクターはしっかりと格好わるいポーズにすることが重要となります。
アニメーション12原則で言うところの、「Pose to Pose」「Exaggeration」「Appeal」などが関連します。アニメーションはポーズの連続だと言っても過言ではないので、一つ一つのポーズに違和感がないようにアクティングをする必要があります。
事前にキャラシートなどを作って、NGポーズを確認しておくことも重要です。
キャラクターらしい演技
キャラクターの個性を反映した演技かどうかです。例えば、威圧感のある敵キャラが笑う時に、口元に手を当てて笑うのは上品な感じや乙女チックに見えて違和感が出てしまいます。違和感が出てしまうと、観客はストーリーに集中することが出来なくなってしまいます。
キャラクターが生きているように感じさせるためには、動きのニュアンスを統一することが重要となります。余談ですが、本来はキャラクターデザインの時点で動き方まで決めておくことが理想となります。
いくら美しい動きを作ったとしても、それがキャラクターに合っておらずストーリーの邪魔になってしまう場合、それは良いアニメーションとは言えません。あなたが作りたいものではなく、作品が求めるものを作成するように心がけましょう。
仕様に合っている
特にゲームでは、「このタイミングでこのポーズを取らないといけない」と言うような仕様的な制約が多くあります。例えば、15フレーム目には攻撃が当たるポーズ(コンタクトフレーム)にして、35フレーム目には走りに移行できるようにしておく、など。このような制約は、あらかじめ確認してから作業に入らないと作り直しが発生してしまうこともあるため注意が必要となります。
タイミング以外にも、足の運び方のような動きの制限や、データの持ち方などは絵作りというよりゲームの仕様上の問題になります。仕様と違うものを作ってしまうとバグの発生にも繋がるためしっかりとチェックされる部分です。
まとめ
以上の6つがアニメーションの評価を行う際の基準となります。
アニメーションにおいて大切なのは、格好良さや美しさだけではなく、キャラクターや世界観を魅力的に見せることや、ゲームとしての体験を損なわないようにすることです。
ゲームとしての制約を守りつつ、物理的な自然さと、キャラクターらしい演技を目指して良いアニメーションを作っていきましょう。
読んでいただいてありがとうございます。 5000兆円ほしいです。ムリですか??せめてスキください。