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マクロミル・サウスイーストアジア設立から2年 海外駐在のリアル

東南アジアでの事業展開強化に向けて、2019年7月に設立したマクロミル・サウスイーストアジア。日本から一人でインドネシアへ赴任した、代表取締役社長 柴原洋が、現地のリアルな実態を4つの観点からお伝えします。

柴原さん

※本記事は社内報「ミルコミ」Vol.164(P30~33)に掲載した内容から掲載しています。マクロミルの社内報は社外公開していますので、ぜひ他コンテンツもご覧ください。

そもそもマクロミル・サウスイーストアジア設立の背景って?

2019年、マクロミルは東南アジアでの事業展開強化のため、W&Sホールディングス社(以下、W&S)を買収しました。W&Sは、東南アジアの中でも特にインドネシア・ベトナム・タイの3カ国を中心としたマーケティングリサーチおよびパネルサプライ事業を行っていた企業です。両社の強みを活かすことで事業を深化させ、サービスのさらなる拡充を目指し、M&Aによる子会社化を実施しました。その後、株式会社マクロミル・サウスイーストアジア(以下、MMSEA)に商号を変更しています。

リアル その1:とにかく辛かった。想像以上に過酷なビジネス環境

私は、実は「海外駐在したい!」という思いがあった訳ではありませんでした。しかし、当時グローバルリサーチ部のマネジャーとしてお客様と関わる中で、日本に本社があるグローバル企業の案件が、次々に現地でのローカル調査に切り替わっており、今後も加速すると感じていました。そして日系のマーケティングリサーチ会社のうち、インドネシア・ベトナム・タイにオフィスを持っていない企業はマクロミルだけ。このままだとローカル調査のニーズを手放すことになると考え、W&Sの買収を企画。買収先の情報収集を私自身が先導していたこともあり、現地に駐在して立ち上げを行うことを決意しました。

実際に行ってみると、とにかく全てがギャップだらけでした。
まず、アンケート回答に協力いただいている現地の消費者パネルのアクティブ率(稼働率)が想定以上に低いこと。また運用面では、アンケートへの回答後にお支払い謝礼額のルールが統一されていないことなど、パネル管理における3カ国の統一ルールが整備されていませんでした。そしてMMSEA独自のリサーチシステムはあるものの、日系のお客様からご相談いただく複雑な調査案件に対応できる仕様ではありませんでした。そして、当時はまだ社員のオペレーションスキルの向上・育成、人材採用も急務といった状況でした。

お客様の新規開拓についても同様で、W&Sから引き継いでいただいたのは1社のみ。W&Sの営業スタイルは、お問い合わせをいただいたお客様を対応する形でしたが、売上拡大のためにはマクロミルと同様に、自分たちから提案するプッシュ型営業にチャレンジする必要がありました。日本でお取引のある会社を中心に開拓を進めたものの、商談は基本的に英語という言語の壁があり、テレアポをしても全く話が通じない・・・。

そこで私は、各国で行われている「日本人会」に参加し、現地の日本人との人脈を地道に広げることにしました。私が参加したのは、兵庫県生まれが集う「兵庫県人会」や、同い年とつながれる「1978年会」、他にも同じ出身大学の集まりなど。人見知りなのでその場が辛い事もありますし、お会いする方全員がお客様になるわけではもちろんありませんが…、ここでのつながりをきっかけにご発注いただけたこともありました。

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現地での人脈を広げるため、
阪神タイガースファンが集まる「猛虎会」にも参加

しかし、せっかくコミュニティに参加してようやくお客様から発注いただいた初案件であったにも関わらず、トラブルが生じ大炎上したことも・・・。その案件はお客様に1円もご請求できませんでした。リサーチシステムや運用・レポートの品質など、全てにおいてお客様のご期待に応えられず、「こんな状況だと発注できない!」とお叱りのお言葉を頂戴しました。その案件に限らず、お客様にご迷惑をかけることが続いた頃は、日本から一人で赴任していたこともあり、その状況を誰かに共有したり、助けを求めたりもできず自分の中で抱え込むことが多かったように思います。当時は日本人の同僚や知人もおらず孤独で、精神的にもかなり追い込まれていました。日々のお客様対応に追われ、経営としてやるべきことに着手できないもどかしさ、情けなさがあり、そして買収の難しさや海外で生活し、働くことの厳しさも身に染みて感じた時期でした。

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メンバーの増員もあり、インドネシアでは新オフィスへ移転。
開放感にこだわった

リアル その2:「一人じゃない」と思えた!周囲のサポートが心の支え

そういった状況下で、「状況を瞬時に、劇的に変えることはできない。この状況を乗り越えるために日々自分ができることを何とかやるしかない」と自分に言い聞かせていました。あとは落ち込んでしまわないように、毎日とにかく笑うことを心掛けていました。インドネシアでは、契約さえすれば日本のテレビ番組が全部映るので、そんなに面白い内容でなくても声を出して笑うようにしていましたね。表情を変えると、気持ちも多少変わったように思います。

とはいえ、もちろん自分の力だけではなく、周囲にも支えられてここまで前進してこられたと感じています。まずは一緒に働いているインドネシアのスタッフたち。今でも忘れられないのが、ある日の夜、私がオフィスに残って仕事をしていたら、リサーチャーの社員が声を掛けてきてくれました。「僕たちに何が足りないかを率直に言ってほしい。僕らは成長したいと思っているし、会社を変えていきたいと思っているから」と。W&Sを買収して良かったことの一つは、社員が皆素直で成長意欲が高いことです。こんなに真っすぐに思いをぶつけてくれる方もいるんだなと、心を動かされた出来事でした。そして、ベトナムとタイのトップを担当してくれている日本人の二人と、同じ苦しみを共有し合えたことももちろん支えになりました。

また、マクロミルからのサポートも本当に有難かったです。上席執行役員の小池直さんがグローバルリサーチ本部長に就かれて以降、同本部のマネジャーさんと一緒に定期的にコミュニケーションを取ってくださるようになりました。「手伝えることがあれば何でも言ってください。運用が上手く回らないようだったら日本で巻き取るので、柴原さんは頑張って売ってきてくださいね!」と言っていただけたのは私の中で非常に大きく、「一人で戦っているんじゃない」と前向きな気持ちになれました。また、代表の佐々木徹さんや、副社長の清水将浩さん、そのほか多くの役員の方々が定期的に連絡をくださって、本当に支えになりました。人材育成もサポートしてくださり、リサーチャーさんをアサインし、現地社員の教育を今も継続して行ってもらっています。

このように周囲のサポートも得ながら、新規開拓できたお客様はインドネシア・ベトナム・タイの3カ国で、それぞれ50社以上。MMSEAとしての売上は設立から2年で2倍以上になり、前年比は140~150%ほどに伸長。経営として自身がふがいなく感じる部分もありますが、一歩ずつ着実に歩んでこられた2年間でした。

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社員旅行での一コマ。皆でBBQを楽しむ

リアルその3:自宅はお気に入りの空間。唯一安らげる場所

ここから、私のプライベートを少しだけご紹介したいと思います。
過酷なビジネス環境の中で、自宅で過ごす時間が癒しになっています。自宅はオフィスから30分ほどで、家にいる時はほとんどソファーかベッドにいます。そこで日本のテレビ番組やYouTubeを観て過ごしています。

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自宅周辺は高層マンションが並び、夜はライトアップが華やか

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リビングでは日本のテレビ以外にも
YouTubeで面白い番組を見て笑うのが日課

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外食だとお腹を壊すことも多く、時には自炊もするようにしている。
よく作るのはパスタと日本式カレーライス

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寝室からはジャカルタの市街を一望できる

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ジャカルタでも週に2~3日は自宅でのリモートワーク

リアル その4:駐在して良かったことは英語力UPと人脈構築

辛い思いをしつつも、キャリアの中で駐在経験を積めたことはポジティブに捉えています。まず、お客様もメンバーも英語でのコミュニケーションがメインになるため、以前よりも英語力が多少上達したと思います。

それから、日本では得られなかった関係性や人脈を構築できたのも財産だと思っています。現地のお客様は、「日本企業全員で頑張ろうね」という雰囲気で、日本人同士で食事やゴルフに行く機会が多いです。来月には、あるメーカーの社長さんのご自宅で開催される手巻き寿司パーティーに招待され、参加してきます。その方とはまだ3回しかお会いしていないのですが(笑)。このお客様に限らず、お客様とのつながりが日本にいる時以上に強まったように思います。

また、別のメーカーのお客様と食事に行った時のことは今でも忘れられません。このお客様は初めてご発注いただいた方で、先ほど書いたように案件でトラブルが生じてしまったにも関わらず、またお会いする機会をいただけたんです。経緯報告の後、「体制が変わったのでお話させてください」とお伝えしたところ、「じゃあ飲みながら話しましょうか」と言っていただけて。本来なら会ってもいただけないと思うのですが、その場で「駐在して最初の半年でここまでやられているのはすごい成果だと思いますよ」と労いの言葉まで掛けてくださいました。その方も駐在した当初はとても辛い思いをされたようで、「柴原さんの気持ちがすごくよく分かる」と言ってくださったんです。かなり辛かった時期でもあり、思わず涙が出そうになりました。そのお客様はそれまで他社で訪問調査を行い、データ収集をされていたのですが、データを早く集めたいというご要望からオンラインリサーチの可能性に賭けてくださり、再度ご発注してくださいました。もう二度とご発注いただけないと思っていたので、またご発注いただけたことが本当に嬉しかったです。そういったお客様のご期待にも応えられるよう、今後も引き続き頑張ります!

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お客様との会食にて。
現地でよく行くレストランは、スペイン料理で有名な店「Plan B」

さいごに

今、私たちが東南アジアで奮闘しているのは、マクロミルグループとして「アジアNo.1を目指す」というビジョンがあるからです。最近は、大手マーケティングリサーチ会社出身の方を現地採用するなどして、組織のレベルも徐々に上がってきたように感じます。今後の優先課題は、ローカルの大手企業も含めたお客様のさらなる拡大とパネル構築です。MMSEAはオンラインリサーチとデジタルの市場でアジアNo.1を取ると掲げているため、パネル規模の拡大と、協力率を高めることが重要だと思っています。現地ではIpsosやNielsen、Kantarのシェアが大きいのですが、競合はパネルを保有していないため、オンラインリサーチの実査部分においては優位性があると考えています。今ある強みをさらに伸ばしつつ、東南アジアでスケールできる会社にしていきます。

最後に、海外駐在は生半可な覚悟では務まらないと思います。日本で皆さんが頑張って作り上げた利益から、東南アジアでビジネスを立ち上げているので、その自覚と、「必ず成し遂げる」という強い覚悟を持たなければいけません。そのような状況下でも、マクロミルでいつか海外駐在したいと考えている方がいたら、ぜひ一緒にチャレンジしたいと思います!MMSEAの今後にご期待ください。

※本記事は社内報「ミルコミ」Vol.164(P30~33)に掲載した内容から掲載しています。マクロミルの社内報は社外公開していますので、ぜひ他コンテンツもご覧ください。



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