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激変する観光・旅行業界の需要回復傾向を探る!トラベルアプリ利用状況から多角的に分析

2022年3月のまん延防止等重点措置解除以降、経済活動が本格化して、「県民割」などの旅行需要促進策も拡大する一方、依然として新型コロナウイルス感染症は収束の兆しが見えません。旅行商品や観光地のマーケティング施策立案には、消費者の旅行需要がどの程度回復しているか、どういった消費者・サービスにおいて回復しているかを知ることが極めて重要となります。

今回はマクロミルのアプリログデータ「A-cube」を用いて、コロナ第7波以前と以後において、旅行需要がどこまで回復しているかを推測します。

本記事は、2022年9月1日開催のセミナー「トラベルアプリ利用実態調査」から一部抜粋したセミナーレポートです。

1.第7波前、トラベルアプリ全体の利用率はコロナ前の水準へ回復傾向

トラベルカテゴリのアプリの利用率(※)を見ると、コロナ前の2019年5月の利用率は12.5%でしたが、最初の緊急事態宣言の期間である2020年5月には8.1%まで低下しています。2020年後半のGoToトラベルの実施時期は12.1%まで上昇していますが、その後の感染再拡大、緊急事態宣言の再発令に伴い最低で7%台まで低下しました。2022年5月においては10.7%まで回復し、2019年5月には及ばないものの、回復傾向にあることが分かります。
※トラベルカテゴリのアプリを一つ以上起動し利用した割合(利用率=利用者÷期間有効者)

第7波以前トラベルアプリ全体の利用率推移
※緊急事態宣言は東京都が対象となった時期
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

つづいて男女別のトラベルアプリの利用率の推移を2019年から2022年の5月に絞って見ていきます。
2022年は、男性は前年よりも3.5ポイント、女性は2.4ポイントそれぞれアップしており、男性は女性に比べ旅行需要の回復が進んでいる可能性が示唆されます。また、男女間で利用率を比較すると、全ての期間で女性より男性の方が高くなっています。

第7波前トラベルアプリ男女別の利用率推移
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

年代別でトラベルアプリの利用率の推移を見ていくと、各年代で回復傾向であり、回復度合いに年代間で大きな差はないことが確認できます。利用率自体にも年代間で顕著な差はありません。

第7波前トラベルアプリ年代別の利用率推移
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

さらに、家族形態別でもトラベルアプリの利用率の推移を見ると、各形態で回復傾向であり、回復度合いに家族形態間でも大きな差はないことが確認できます。こうした結果は、若年層の友人との旅行、ファミリー層の家族旅行、シニア層の旅行など、どのようなタイプの旅行においても需要は回復傾向にあることを示しているのかもしれません。また、利用率自体は、独身者よりも既婚者の方が高い傾向であることが確認できます。

第7波以前トラベルアプリ家族形態別の利用率推移
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

以上から、カテゴリ全体の利用率は、性別・年代などの属性を問わず、コロナ前の水準へ回復傾向にあることが分かります。

2.近場への需要が回復傾向か?遠距離需要は低迷?アプリサービス別利用率

トラベルアプリのサービス別の利用率の推移を2019年から2022年の5月に絞って見ていきます。

ホテル予約系の利用率は、コロナ前の2019年5月に近い水準まで回復しており、鉄道系の利用率も年々利用率が上昇しています。一方で、航空系は、2022年5月において2019年5月よりも1ポイント以上利用率が低く、回復は鈍いと言えます。

こうした結果は、ホテル利用や近場への移動に対する需要が回復している一方で、航空機を伴う遠距離の移動に対する需要が戻っていない可能性を示唆しています。

第7波以前トラベルアプリサービス別の利用率推移
※ 鉄道系の2019年はえきねっとがリリースされていないため直接比較は注意
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

男女別にトラベルアプリのサービス別の利用率の推移を2019年~2022年の5月に絞って見ていくと、ホテル予約、鉄道系は男女ともに回復傾向である一方、航空系は男女ともに回復が鈍いことが明らかになっています。ホテル予約系の利用率は、男性は2019年5月の水準まで回復しており、回復が顕著であることが分かります。

第7波以前トラベルアプリサービス・男女別の利用率推移
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

さらに、年代別でトラベルアプリのサービス別の利用率を確認すると、これまでの結果と同様に、ホテル予約系、鉄道系は全年代で回復傾向が見られる一方で、航空系は全年代で回復が鈍いことが分かります。

ホテル予約系では、とりわけ20代、60代の回復が顕著で、学生やシニア層のホテル需要が回復していることを示唆しているのかもしれません。

第7波以前トラベルアプリサービス・年代別の利用率推移
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

全体としてはホテル予約系、鉄道系は順調に利用率が回復しているのに対し、航空系は苦戦しているというパターンがどの属性でも見られる結果になりました。

3.第7波以後、旅行需要の回復傾向が加速

最後に、オミクロン株BA.5による感染拡大第7波が到来した2022 年夏において、トラベルアプリの利用率がどう変化したかを見ていきます。

2022年7月時点で利用率は13.9%で、2022年5月から3ポイントほど上昇しており、コロナ前の2019年7月と比較しても上昇しています。
これまでの感染拡大の時期とは異なり、第7波においては利用率の低下が見られない上に、より回復が進んだと言えます。2022年の夏は、3年ぶりに行動制限がなく、消費者の旅行への需要は感染の再拡大に必ずしも影響を受けていないことが示唆されています。

第7波以後トラベルアプリ全体の利用率推移
※緊急事態宣言は東京都が対象となった時期
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

サービス別で利用率の推移を確認すると、ホテル予約系、鉄道系はコロナ前を超える利用率となったほか、2022年5月までの傾向とは異なり航空系も回復の兆しが見られます。

第7波以後トラベルアプリサービス別の利用率推移
※緊急事態宣言は東京都が対象となった時期
※ 鉄道系の2019年はえきねっとがリリースされていないため直接比較は注意
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

航空系の回復について、主要な航空系アプリとしてANA社 とJAL社を比較して見ていきます。
ANA社は2022年夏の利用率が大きく伸びており、コロナ前の2019年7月の水準まで近づいています。ANA社は北米・東南アジア路線を中心に増便を行っており、特に日本に近いアジア地域への旅行の需要の回復を表している可能性がありそうです。

第7波以後トラベルアプリ航空会社別の利用率推移
※緊急事態宣言は東京都が対象となった時期
※ 期間有効者:各月変動 最大57,119ss

第7波におけるトラベルアプリの利用率の推移を確認すると、これまでの感染拡大期とは異なり、利用率の低下が見られず、回復が加速していることが明らかになりました。これまで回復が見られなかった航空系に関しても回復傾向にあることが分かります。

4.まとめ

<第7波以前>
・トラベルアプリの利用率を男女間で比較すると、男性の方の利用率が高い
・家族形態別では各形態で回復傾向であり、回復度合いも大きな差はない
・トラベルアプリのサービス別の利用率の推移は、ホテル予約系、鉄道系は回復傾向である一方、航空系は男女ともに回復が鈍い
・ホテル予約系は、とりわけ20代、60代の利用率が上昇しており回復傾向
・ホテル利用や近場への移動に対する需要は回復傾向にある一方、航空機を伴う遠距離の移動に対する需要は戻っていないと考えられる

<第7波以降>
・トラベルアプリの利用率の回復傾向は加速し、コロナ前と同水準の利用率まで回復
・ホテル予約系、鉄道系はコロナ前を超える利用率となったほか、航空系も回復の兆し
・航空系アプリ別ではANA社の利用率が大きく伸びており、コロナ前の水準まで近づいている
・旅行需要の回復の進展に、第7波の影響はほとんどないと考えられる

こうした需要推測・効果検証を目的としたアプリログデータの分析は、様々な業界に応用できます。アプリログデータは、行動に基づく消費者の興味関心の指標です。環境変化に伴う需要の変化を探ったり、他社アプリと比較して需要の違いを探ったりすることができます。
また、さらなる消費者理解に向けて、より詳細に行動データを分析したり、意識データと組み合わせたりすることで、需要の回復の背後にある要因や消費者の心理の変化などを明らかにすることもできると考えられます。

5.セミナー資料のご案内

当調査結果にご興味を持たれた方は、自主調査レポートをこちらからダウンロードが可能です。無料ですのでぜひご活用ください。

■分析仕様
調査目的 : トラベルアプリの利用動向による旅行需要の実態把握
調査対象 : Androidデバイスを保有するモニタ 男女15-69歳
調査地域 : 全国
調査方法 : スマートデバイスのアプリ利用ログを収集
調査時期 : 2019/05/01 ~ 2022/07/31(分析テーマ毎に設定)
最大サンプル数 : 57,119 ss(各月変動)
※マクロミルが独自に推計するスマートデバイス インターネット利用人口にウエイトバック

・・・【付録】皆様のご参考情報としてご活用ください・・・

A-cube (Actual AppLog Analyze)
アプリ利用実態を分析・提供
マクロミルが保有する消費者パネルの中から、同意を得た6万人のスマートフォンのアプリログデータを収集・分析し、マーケティングデータとして提供するサービスです。

無料セミナー「30Mins Weekly Topic」は、
こちらからご視聴いただけます。

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