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債券価格の求め方

債券の価格は変動する。当然と言われればそうなのだが、実は筆者は学生の頃この事を知らずに少額ではあるが償還期限30年の米国債を直接財務省から購入してしまった。米国市民は Treasury Direct というシステムで直接財務省発行の国債を購入することができ、セカンダリーマーケットで購入する必要はない。後日証券会社にある自分の口座へ移したとき、当時の自分の感覚では大きな含み損を抱えていた事を知り衝撃を受けたものである。金利が上がっていたのだ。筆者は銀行預金のように利子を諦めれば元本は戻ってくると思っていた。実際は国債でも元本割れの損失を出す事は充分ありえる。「やってもうたわ」ならない為にも読者の皆様方にはしっかり知識をつけられる事をお勧めする。今日は債券価格の算出についてかたる。

債券価格の算出は正味現在価値 (Net Present Value) を求める事になるのだが、価格が変動する理由は金利の変動によって割引係数 (Discount Factor) が変動する事にある。正味現在価値 (NPV) 、割引係数 (DF) と聞いてピンとこない場合は以前の記事 貨幣の時間的価値 をご参照されたい。ここでいう債券とは確定利率債である。以前の記事 債券の種類 もご参照されたい。

債券価格の計算式は以下の通りである。

$$
BP(t_0) = \displaystyle\sum_{i=1}^{n-1} \cfrac{C(t_i)}{(1+YTM)^i} + \cfrac{C(t_n)+FV}{(1+YTM)^n}               (1)
$$

BP(t_0) = 債券の現在価値。
C(t_i) = その時点におけるクーポン(利札)の支払額。
FV = 額面価格 (Face Value)。
YTM = 満期利回り。債券を満期まで保有した場合の全体の利回り。(Yield to Maturity)
n = 周期数

YTM はその時点での債券の市場金利と同等と考えて差し支えない。ただしYTMは現行利回り (Current Yield) と同等ではない。例えば1万円債券の5%クーポンが現在9500円とする。この場合現行利回りは 5.26% となる。現行利回り (Current Yield) との違いは現行利回りは1年度分のクーポンの支払いから算出されるのに対して、満期利回りは償還期日までに支払われるすべてのクーポンの現在価値を計算に入れている。もちろん実際に満期まで債券を保有した場合金利は変動すると予想されるが、上記の計算式では将来の金利はYTMで推移するものと仮定している。あと償還期日になれば債券の額面価格が支払われる。よって 「現行利回り (Current Yield) < 満期利回り (YTM) 」となる。正確にYTMを算出しようとするならば試行錯誤をする事になるのだが詳細については割愛し、ご興味ある方は下記にてご参照されたい [1]。最も重要な点は、債券を購入した時の金利よりも現在の金利が高い場合は債券価格が下落し、反対に現在の金利の方が低い場合は債券価格が高騰するという事である。

最後にゼロクーポン債について少し語り締めくくる。ゼロクーポン債は以下の計算式により求められる。

$$
ZCB = \cfrac{FV}{(1+r)^n}                (2)
$$

ZCB = ゼロクーポン債 (Zero Coupon Bond) の価格。
FV = 額面価格。
r = 金利。
n = 周期数。

ゼロクーポン債はその名の通りクーポンが支払われない代わりに額面価格から割り引かれた額で取り引きされる債券である。額面価格よりも低いので投資しやすいといった利点がある。

例えば10年後の子供の学費に備えるため償還期日が10年後の額面価格300万円、3% の金利のゼロクーポン債を購入したとする。するとゼロクーポン債の価格は約223万円(2,232,282 円)となる。

以上、今日は債券価格の求め方について書いた。次回は金利の変動によりどれだけ債券価格が変動するのかをみる。Macaulay Duration (マコーレーデゥレーション)、Modified Duration (モディファイドデゥレーション)といった事を学習する。

引用索引

[1] investopedia.com/terms/y/yieldtomaturity.asp


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