見出し画像

議論の土台のためのプロトタイピング

こんにちは。
都内のWebマーケティングの企業でデザイナーをやっています。
現在の私の役割ですが、6人いるデザインチームの中で司令塔としてタスクやスケジュール管理をしたり、ユーザー体験の検討をしたり、UIやビジュアルを制作したり、ディレクション半分、制作半分、といった具合です。

そんな中で私の所属するチームでは、とあるクライアントの事業の要である、Webサイトのリニューアルの案件が進行中です。私達はクライアントと議論を重ねながらコンセプト策定、要件定義、開発までを行います。

このプロジェクトではタイトルにもある通り、最初から要件を詰めてから開発を行うのではなく、会議と並行して徐々に精度を高めていくプロトタイピングという方法を取りました。

言葉だけの議論は空中戦になりがち

言葉の上でだけ議論を進めていると、フワフワとした空中戦になってしまうことが多いです。
よく起こるのが、抽象的な議論のみに終始してしまい、言葉上の合意は取れたけど具体性がない、具体性がないせいで最終的な実現イメージが湧かない、という事態です。
また、何かを決めることは普通人間にとってとてもストレスがかかることなので、後から判断の間違いが起こってしまわないための保険として、あえて具体的な話をすることを避ける場合もあります。

抽象的な言葉はたくさんの意味を内包するので、なんとなくの合意を得やすいのですが、抽象的であるがゆえに共通のイメージが持てているとは限りません。抽象度の高い議論では認識のズレが生まれやすく、その後のプロジェクトの進行にとって大きな障害になります

そして、会議の時に必ずしも意見が出てくるとは限りません。
課題に対して活発に意見が交わされる会議ばかりなら良いのですが、毎回そうとも限りませんよね。その場にいるメンバーからアイデアが出ないまま時間が過ぎてしまう場合もあります。

このような事態を防ぐため、デザイナーが会議の度にプロトタイプに意見を盛り込み、ブラッシュアップしていくことで議論を前に進める作戦を取りました。
少し強引かもしれませんが、絵に起こすことで会議に参加しているメンバーに強制的に最終形をイメージさせ具体的な議論に持ち込むことができます。

早い段階でイメージを絵に起こす意義

要件定義や情報設計などは行われておらず、コンセプトも曖昧な状態からプロトタイプを作ります。
目的は、会議に参加するメンバーに共通のイメージを持ってもらうことと、具体的なアイデアを少なくとも一つ出すことによって、その場の議論の土台にすることです。

メリット
・会議に参加するメンバーが共通のイメージを持てる
・ プロトタイプを土台にすることでアイデアが湧き議論が活性化する
・早い段階で実現可能性がわかる
・形を見ながらだと具体的な議論に持ち込める

デメリット
・見た目上の詳細に気を取られてしまう
・プロトタイプに要求する精度がメンバーによって違うと、人によってフィードバックの粒度がまちまちになる
・デザイナーのスキルとスピード感が求められる

メリットは目的に対する解決策ですが、同時にデメリットもいくつか出てきました。

1つ目は見た目上の詳細に気を取られてしまうこと。
目に見える形で成果物があるとインパクトがあるため、どうしても見た目に気を取られてしまいやすく、形や色や大きさなどに話が及んでしまうことが多いです。
その会議の目的がデザインの確認だったらそれで問題ないのですが、そうではない場合は論点がずれてしまうことになります。
会議では毎回、参加するメンバー全員が論点を正しく認識できるよう共有しておくことが重要です。

2つ目はプロトタイプに要求する精度がメンバーによって違うと、人によってフィードバックの粒度がまちまちになること。
1つ目とも関連するのですが、メンバーそれぞれでどの程度まで作り込む必要があるのかがバラバラだと、人によって気になるポイントが変わってきます。どの程度までの精度で作るのかをメンバー間で認識を統一しておかないと、荒い精度で作ったプロトタイプに精密さを求められてしまい、本番のデザインを作るのと同じ労力がと時間がかかってしまいます。プロトタイピングを繰り返すことのメリットは、精度を低くする代わりにスピード感を持ってブラッシュアップできる点なので、これではプロトタイピングの有効なやり方とは言えません。

3つ目のデザイナーのスキルとスピード感が求められることは、
デメリットというほどでもないのですが、週に何度もある会議で、毎回議論を踏まえたデザインをするとなると、参加者の発言の意図を読み取る力、チーム内の意見の統一、UIやビジュアルを作り上げる力、制作スピード、メンバーのディレクションなど様々なスキルが必要になります。
抽象と具体を行ったり来たりの繰り返しで日々とてもハードです。
ある程度デザイナーのスキルがないと成立しないやり方でもあります。

まとめ

振り返ってみると、うまくいった部分もある反面、課題もたくさん出てきました。
会議に参加するメンバーはクライアントとベンダー(我々)だったり、職種も役職も様々で、見えている視野も専門領域も違います。
そんな中で参加者の共通認識を得るためにも、絵に起こすことはとても意味のあることだったと思います。

次にプロトタイピングを実践するときには、論点を明確にするためにあえて簡易的に作って精度を低める、精度を低めた分スピードを上げてみる、UIのアイデア出しにフレームワークを用いてみるなど、試してみたいアイデアがたくさん出てきました。

試す機会があったら、今回のようにnoteにまとめてみたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?