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2024中国 兵馬俑は始皇帝のお墓の一部に過ぎなかった②

ども、世界遺産ハンターのMackyです。

前回に引き続き、中国の兵馬俑をドアップで見てきた旅の感動と発見を皆と共有したい。


一体一体の作り込みがハンパない

綺麗な状態で見つかった兵士


上の写真の様にさらっと見るとまあ、普通に頑張って作ったなぁ〜としか思わないかもだけれど…


後ろに回って見てみると

後ろから見た兵士。かなり細かい…


ん?鎧の作られ方もまるで本物のように紐部分も色付けて作られてる。


むむ?しかも靴の裏が気になる…
もっとドアップで

靴裏をよく見ると2000年前のNIKE!


え?靴の裏に滑り止め加工が施されてる!
しかも、つま先、土踏まず、かかとと場所に応じて滑り止め加工の仕方が変えられている!これには感動を覚える程にビックリ。2000年を超える昔に既にそんな工夫があったとは。もしや現代の安い靴の方が質が悪いかもしれない。


これは「2000年前のNIKEをお見せします」と言われてガイドさんから説明を受けたのだけれど、自分で巡っていたらスルーしていたかも。


続けて、より高貴な像を見ていこう。

堂々たる立ち振る舞いの将軍

この兵士はより経験を積んだ将軍レベルの人らしい。腕の筋肉の隆起具合、堂々とした雰囲気は然もありなんという印象。
しかも、手の部分をどアップで見てみると、爪先までしっかりと作り込まれ、思わず「美しい」と口から素直な感想が溢れる。


見よ、この腕の筋肉の隆起を! 爪先までまるで本物のように細かい作り込み!



髪なんて毛髪一本一本が見える!結われる方向まで確認できてもはや芸術。


頭部のアップを見ると、髪の毛一本一本が見えてビビる。本当に髪を結わえているかのような描写に、モデルの完コピもここまでやるか、という感じ。紐の結い方もまるで本物のよう。これ、作成に一体どれだけ時間掛かったんだろうか。
こちらも自分で鑑賞するだけだときっと「あーちょっと偉そうな兵士の像だ」で終わっていたに違いない。なかなか後ろまで回り込んで注目しないと気付かない。

作成時間は分からなかったが、作った人の名前が像には書かれているらしく、10名くらいの作成者(職長)の名前が見つかっているとのこと。全部で約8000体が発見されているらしいので、少なくとも一人でかなりの数の像を担当・作成していたようだ。



カラフルな装飾も発掘3日後には色落ち

元々は彩色が施されていたらしいが、発掘から3日で鮮やかな色彩は失われてしまう

発掘した直後は写真のように鮮やかな色彩が確認できたらしい。ただ、天然の色付けのため、空気に触れることで急速に酸化し発掘から3日も経つと色彩は失われてしまうとのこと。これはとても残念。
技術の進歩で色彩保存ができるようになることも見越して、兵馬俑の全てを掘り返すことはしていないそうだ。



現在は全部で四号館

現在は、と言うのも年々拡大しているからである。新たに発掘されてそのための展示場ができていて、宝物館も別の場所に移されたりとしばらくぶりに訪れると様相がだいぶ変わっているとのこと。

一号館:教科書に出てくるメインの兵馬俑坑
二号館:一号館の約半分ほど。4つの部隊で構成された軍隊の構成が分かる
三号館:司令部と思わしき跡が残理、軍令を伝える戦車が見られる
四号館:食料保存庫。今は何も残っていないのであまり見所はない

他の館も訪れたが、基本第一号館が最も広く見応えがあった。

第二号館の入口。秦の漢字の成り立ちに注目

入口に掲げられている文字を見て欲しい。
一番右の漢字が「秦」の篆書である。

これは、弓を両手で抱えて闘いを意味し、
その下は穀物の粟を示しているとのこと。


中国全土を初めて統一した秦。
国を維持するには、食料と武力のどちらも必要だということか。



兵馬俑は始皇帝のお墓のごく一部に過ぎない

見切れた左下に小さく見える兵馬俑坑は、陵墓の東1.5kmに位置する
始皇帝の陵墓はもはや実在都市を再現している


この解説図を見た時に思わず身震いしてしまった。驚愕。。。

これまで見てきた兵馬俑、実は始皇帝を東夷から守る軍隊であって、
実際の陵墓はそこから西に1.5km行った先にある。

そして、その陵墓はもはや都市を丸ごと再現していて、細かなところだと、湖にいる白鳥、雁、鶴など鳥達も青銅で作るわ、音楽家なども用意するわ、精巧に現物の完全1/2スケールの馬車を作るわ等、で即位してからすぐに自分
のお墓を作り始めて70万人が駆り出され、しかも建設に37年かかっているらしい…

用意周到。

と言うのも、中国古代の考えでは、現代の物を死後の世界に持って行って生活をする、となっており、それ故、死後の世界で扱えるように火を入れた等身大の陶器製の兵馬俑で守ったり、部屋はもちろん、都市までも再現するし、身の回りのお世話をする人や動物、食物なんかも用意したみたい。


この辺りは、中国の古代のお墓の歴史を一堂に学べる古墳博物館に別途行って勉強してきたので、別記事で詳しく書くかも。


何れにしても、実は兵馬俑はメインではなく、再現された都市の中に眠る始皇帝のお墓は兵馬俑の規模どころではないのだ。
気になったので、日本を誇る仁徳陵の前方後円墳とその大きさを比較してみたが、サイズだけで比較すると仁徳陵は、始皇帝のお墓の大体半分といったところか。

秦の始皇帝陵墓(兵馬俑除く):1.2 x 1km
仁徳陵の前方後円墳:840 x 654m

陵墓の概算サイズ比較


つい最近までは、この始皇帝のお墓の方には入ることが出来なかったのだが、今は莫大な費用をかけて整備がされており、これまで宝物館に展示されていた青銅の馬車などは元発掘された場所である始皇帝のお墓の方に移動して展示されている。


兵馬俑のチケットは陵墓のチケットとセットになっており、陵墓の方は無料のガイドも付いている(中国語だけど)
しかも、約1.5kmの移動はシャトルバスを用意してくれていて、これもまた無料。ただ、兵馬俑からシャトルバス乗り場までが結構遠く、徒歩で露店やレストラン通りを20分程行く必要がある。


雇った日本語ガイドさんも兵馬俑の部分までで、シャトルバス乗り場まで見送ってくれた後は自分で移動。


シャトルバスを降りて陵墓の入口にくると、公式ガイドさんが説明を始める。
そして、陵墓の周りを別のシャトルバス(15元)で巡ることを勧めてくる。


どうなってるんだよ、このビジネスモデル。最近の中国の観光名所はどこもこんな感じ。入口を遠くに作って、シャトルバスで小銭稼ぎするパターンが多過ぎる…
と思うも、歩いて巡ろうとすると3時間ほど掛かるらしい。これはもう支払うしかない。無料でガイドがついてくることを思えば安いもの。

始皇帝陵墓周辺を巡るシャトルバスのチケット


陵墓の周りに、全部で4つの展示館(降り場は3箇所)が用意され、シャトルバスを3回乗って巡っていく。始めはガイドさんの話を聞いていたのだが、結構展示を端折って自分のペースで見られないので、銅馬車館でグループと別れることに。チケットさえ持っていればシャトルバスには乗れるし、他のグループの説明を聞くこともできるので、この辺りは比較的自由でありがたい。


ここでの一番見たいのは青銅製の二号銅馬車!

銅馬車は完全1/2スケールで実動可能

二号銅馬車を裏側から。内装も素晴らしく、窓の透かしも美しい。
二号銅馬車を横から。この流線型の屋根は空力学上も空気抵抗が小さいらしい。
二号銅馬車を正面から。近くでみると、まるで今にも動き出しそう
一号銅馬車はレプリカで、二号銅馬車と比べるとその造形の繊細さは足下にも及ばない


始皇帝の陵墓近くで、2つの青銅でできた銅馬車が発見されたのがこちら。以前は兵馬俑の宝物館にあってすぐに見られたようだが、今では元あった陵墓近くに移され、別に見に行かないといけない。

それでも、時間を取って見る価値はある。

二号銅馬車を引く4匹の馬は、今にも動き出しそうで活き活きとしており、鼻の穴からフンフンッと聞こえてくるようだ。髭のように馬の顎下に付けられた物も青銅製で、現代の技術ではこれ程細く真っ直ぐに作り出すことは出来ないみたい。失われた古代アーティファクトの一つ。

全てが実際の大きさの1/2で出来ており、実際にこの馬車を引くこともできるとのこと。規格化も進んでおり、各馬車の部品は相互に入れ替えが可能で、当時修理も容易になった模様。全土の統一に伴って、始皇帝は文字や重さ、長さなど個別の国で使われていた規格を統一したが、ここでもその事実が確認できる。

この度量衡の統一は日本だと豊臣秀吉が太閤検地の際に実施したと学んだ記憶があったが、調べてみると702年に文武天皇が実施したのが最初らしい。せっかく一度統一されたのに、時代を経るにつれて、またバラバラになっていったということか。


二号銅馬車の流線型の屋根は空力学上、空気抵抗が極小になるように設計されているとのこと。確かに、見た目がそれっぽい。そんなにこの馬達は早く走れたということか?
乗っていたのは高貴な人。内側の装飾は美しく、写真では捉えきれなかったのだが、窓の透かしがとても繊細でこれまた綺麗。

あまりの美しさに見惚れていて、ガイド付きのグループからは外れて30分程じっくりと眺めていた。細かなところまで見れば見るほど、繊細な作りに感動。馬の頭のベルトや手綱なども一つ一つの極小の部品を青銅で作っては組み合わせており、1体作るのさえも気の遠くなる作業だったに違いない。
そして、これが2200年前に作られたという事実に改めて感動を覚える。



一号銅馬車はレプリカ。パッと見は二号銅馬車と同じようなレベルで美しいが、よくよく見てみると本物との違いは明らか。馬の活き活きさを含め、細かいところで美しさの再現が出来ていないことに気づく。
一号銅馬車の本物もいつか是非見てみたい。


現代のパラソルよりも機能的な日避け

手前が本物で、後ろが使い方のデモンストレーション。


一号銅馬車の傘は、かなり機能的でぶっちゃけ現代のパラソルよりも機能が多い。

高さが変えられる、角度が変えられる、傘部分が取り外せる、ロックが出来る、傘の骨の部分が取り外せる…

ちょ…凄すぎ。



銅馬車発見当時の再現模型


ミニチュアサイズの繊細な小物たち

携帯品も青銅で再現


そして、武器以外の普段品も青銅でそっくりに再現されている。


飲み水を入れる水筒。革で出来ているのを再現するため縫い目が右に見える
薄く折り畳んだハンカチも青銅で再現!細かい!

飲み水を入れる水筒は、元々は革で出来ている。それを再現するために上部は革を折り曲げたような形をしているし、写真の右には革同士を縫い付けた跡まで青銅で再現している。
細かすぎ。

ハンカチも薄く折り畳まれ、横から見るとその薄さと細かさが確認できる。
ってか、ハンカチまでここまでこだわって作る必要があるのか?
凄すぎ。


お洒落なデザインの盾



兵馬俑に始まり始皇帝のお墓の壮大なスケールに感動

いつか死ぬまでに行ってみたいと思っていたこの兵馬俑の訪問は、改めて自分の認識不足を思い知らされた。
中でも、教科書に載る兵馬俑は秦の始皇帝のお墓の一部にしか過ぎなかったことが一番の衝撃だった。そして、2200年も昔なのに、兵士の靴裏や髪、青銅の銅馬車、日傘やハンカチなど、今でも繊細で美しいと感じられる卓越した技術を既に持っていたことも全然知らなかった。
この旅は単なる観光ではなく、古代中国の歴史と文化に触れ、新たな知識と理解を深める機会だった。


そして、古代より大きな影響を受けた隣国の歴史をもっと知りたいと感じた実りある旅だった。


これからも感動した旅を記していこうと思うので、是非フォローよろしくです。


皆さんは兵馬俑についてどう思いますか?
他におすすめの歴史的名所があれば教えてください!


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