見出し画像

起業

 最近、3人の中で流行っていることがある。それは何かしら良いアイデアが出たら、「それ良いアイデアじゃん。起業しようぜ(笑)」と言い合うことだ。というのも、自分たちは3人でよく起業の話をしているのだ。(そういえば、この「3人」のうちの2人が誰のことか分からない人もいるだろうということに今さら気が付いた。次回にでも説明しよう。。。)
 1年間の浪人をした上に休学という、普通に入学して4年で卒業する一般的な人からしたら既に「かけ離れてしまった」自分たちにとって、就職する上で新卒カードは貴重であるように感じる。しかし、その一方でリスクを取って、あえて「普通に就活」というレールに乗らないという選択肢も少なくとも自分にとっては魅力的であるように感じる。(「リスク取らなきゃラッパーじゃねえ!」by上原っぱー頭ぱっぱらぱらー🤯)
 特に自分が魅力を感じているのは日本酒の輸出だ。理由は主に2つある。1つ目は、日本酒がもはや日本国内の若い世代にはウケないのではないかと思っているからだ。これには、ビールやハイボール、ジュースに近い味のサワー類が人気を博していること、若者のアルコール耐性(身体的にも精神的にも)が無くなってきていること、また若者の人口が減ってきていることなどが考えられる。(将来的にお酒を消費するであろう10代の人口は日本の全人口の8〜9%だ。)そのため、日本酒への関心が高まりそうな国、なおかつ若者の多い国に日本酒の需要を生み出していくことは日本酒の消費を増やすためにも日本酒の文化を絶やさないためにも必要なことだ。
 2つ目は、自分が実際に南アフリカに滞在して日本酒の需要があるように肌で感じたからだ。まずこの国には若者が多く、お酒を飲む層も少なくない。(特にエスワティニとかはすごかった。)そこの凹に安価かつエキゾチックかつ味も良い日本酒の凸がハマることが出来れば、きっと人気を博するのではないかと思ったのだ。
 もちろんこのことに関して、夢物語で「きっと噂に噂が広がって、アフリカ中で日本酒が売れて、、、!」なんて思ってはいない。むしろ現実的な問題点が山積みであると感じている。まず、輸送のコストだ。日本からアフリカまで直接輸送できる便はまだ存在しない。そして実際に送るとなると安くないコストがかかってしまうことはすでに計算済みだ。また、どのようにしてアフリカで日本酒を広めるかという問題がある。仮に広まったとしても、安価なビールやワインに取って代わることは容易ではないだろう。高級路線を取ることが現実的だが、それを誰が買うのか、少なくとも一般レベルでボンボン売ることは叶わなそうだ。というように、ここまででも頭を抱えるような問題が目の前に存在する。
 しかし、こんなことで諦める西間木ではない。考えるや否や、早速、日本酒輸出のプロに聞いてみることにした。それは地元、福島県で圧倒的な人気と力を誇る大七酒造だ。(実家から徒歩5分、400mくらいのところに本社がある。ここの社長さんや奥様、娘さんとは小中高同じの顔馴染みである。) ここの代表取締役を務められている太田英晴さんは慶應大学に入学後すぐに退学し、その後、東大の法学部に入り直して会社経営を学んだ生粋の経営者だ。これは自分の知っている範囲だが、英明さんが社長になってからというもの、大七は国内だけでなく欧米圏でも市場を拡大させ、様々なコンペでも賞を取っている。
 メールを送った数日後であろうか、太田社長から直々にメールが帰ってきた。文章は以下のようなものだ。


西間木君

こんにちは。西間木君のお噂は、娘から聞いております。また、山口屋さんにはいつもお世話になっております。若者が海外を目指さなくなったと言われる中で、アフリカに遊学しておられる西間木君は素晴らしいですね。

弊社の欧米市場開拓は、1996年に始まります。日本酒メーカーとして、かなり早い部類に属しますが、欧米圏での成功要因は、それ以前に行われていた日本酒輸出の失敗事例を参考に、以下のような戦略を立てたことです。

1,啓蒙活動を先行させること。
 日本酒を知らない市場で、需要のないところで販売を先行させても失敗します。まずは、(消費者よりも)現地のプロフェッショナルに対する啓蒙活動を先行させることです。それが需要創出につながります。

2,低温物流の整備
 日本酒の品質を維持できる低温輸送と、現地での低温管理を徹底させました。品質の劣化によって、ブランドの信頼性を毀損することを防ぐためです。(先行事例で
は、この点の失敗例を沢山見ました。)

3,流通の中間コストの削減
 相手国の消費者に届くまでの流通をできるだけシンプルにして、多段階の流通による中間マージンの増大を防ぎ、消費者の声がダイレクトに届くようにしました。

南アフリカへの飛行機の直行便は、まだありませんね。調べると、海上輸送のコンテナはあるようです。(冷蔵コンテナは不明)新しい地域での成功のためには、認知を得るための啓蒙活動、それから信頼できる物流の確保が必須です。アフリカは、若くて発展可能性の大きな世界ですから、今から着手されたら大きいでしょうね。

是非また、そちらのご様子を聞かせてください。


 全く持って恐れ多いです、はい。だけど戦う相手として不足はない(戦うわけでも敵でもない)。太田社長から直々にメールが来るとは思っても見なかったので正直、嬉しさ半分、驚き半分だった。あと恐れ多さも半分くらい。(この時点で自分の感情を掌るバケツは150%くらいあったことに気付く。というか溢れている。) 福島高校のOBでもあり、地元の名士でもある太田社長本人に相談に乗ってもらったことで、後に引けないような緊張感も感じた。もちろんそれによる義務感で事を運んだところでうまくいくはずがないのは百も承知だ。
 だけど思うのは、最初にも触れたように、人生が1回きりしかないのなら、普通の人と違うことをやってみる、「あたりまえ」のレールから外れてみるのも悪くないのではないかということだ。だけど、海外旅行と一緒で保険は必要だ。保守的になりすぎるのも良くないが、明日食べていくためのお金を稼ぐぐらいのことは必要だ。そこのバランスが非常に難しいと思う、今日この頃だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?