生涯で、3000万円の差。

最近、家の鍵がなんだか臭い。

家の玄関を出入りするだけで、手が臭くなる。
手が汚れた気になる。
手が臭いと、せっかく居酒屋に来ていても食欲がなくなる。
串カツだから口元まで手が接近する。最悪だ。
串カツって、結局、衣についたタレを食べるものだから、中身が牛でも豚でも同じだ。もっと言うと玉ねぎでも、イカでも同じ味と言っても過言じゃないと思う。紅生姜だけはちょっと違うけど。だから、何食っても同じ味だし、手が臭いから同じ風味だ。

フグだって、ポン酢を食うものだとも言える。淡白な味わいがいいだなんて言うやつは、言いたいだけで、実際、目をつぶらせて薄く切ったエンガワにポン酢つけたら「フグだ！」ってはしゃぐに決まってる！

そう言えばエンガワって何なんだろう？
魚の種類でもなさそうだし。何より
エンガワという名前の魚を知らない。
調べてみよう。

ふむふむ。
エンガワってのは「カレイ、ヒラメの背ビレを動かす筋肉のこと」なのか。勉強になる。
我、知的欲求よ！満ちよ！喜べ！

「テレビで前に見たけど、美人かブスかってだけで、3000万円の違いがあるらしいよ」
なっ！？
あ。忘れてた。今、この背の小さなオジさんと飲みに来てんだった。

2人で飲んでるに、急にエンガワのことだなんて調べていた。失礼なことをしてしまった。
いわんや寿司やお刺身を食べているならばまだしも。串カツ屋。左手で串をタレにビシャビシャにつけながら口に近づけず、右手で「エンガワ」を調べている。手が臭いからだ。

小さなおじさん。ごめん。
ってか、見た目…おばさんみたいだけど。
年取ると、おじさんはおばさんみたいになるし、おばさんはおじさんみたいに。
そんな人、一定数いる気がする。


いかん！そんなことではない！
「3000万円の違い」だ。

実に気になる。

「🥦　どういうことですか？ブスが美人になるためには3000万円の整形代がかかるってことですか？」


「👱‍♂️   いや、そうじゃなくて。」


「🥦　人の価値？人身売買ですか？物騒ですね」


「👱‍♂️   違うよ。生涯で…


「🥦　あー男が貢ぐ額ってことですか？」


「👱‍♂️   う。うんそうだね。そういうことだね」


「🥦　酷い話ですね。与えられたもので3000万の差があるだなんて。掴み取れ！！なめんな女！！苦労しろ！世の中、頭おかしいんか！掴み取れ！実力で！！美人はバカだし、ブスも何黙ってんだ。てか、男からもらえる前提って頭おかしいんか。何が男女平等じゃい！綺麗事言うなや！女同士でも3000万の差があるのに、男女が平等な訳あるか！！」


「👱‍♂️  マッコイ。居酒屋さんであんまり大きな声で…


「🥦　いいから一回俺の話を聞け！ふざけんな女！特に美人。ブスより3000万を無条件に儲けているなら、その金、どこに消えたんだ？田舎だと立派な一軒家立つぞ。もっと言うと、貢いでいる男と比べると6000万円分の差がある。別荘も持てるぞ！美人はどこにその金やったんだよ！美人は結局、豪邸に住んでたとしても胡散臭い男に寄生して、白い毛むくじゃらの小型犬を抱っこして写真撮るんだろ。バカかよ！」


「👱‍♂️  じゃあ、マッコイが美人じゃない人と…


「🥦　ふざけんな！美人がいいに決まってんだろ！何言ってんだこのクソ老害。美人と付き合いたい。美人を笑顔にしたい。美人を見つめていたい。美人じゃないと女じゃない。ブスは何歳であれ、おじさんと一緒。理解？ブスの笑顔だなんて金をもらっても見たくない。ブスは笑うな。歯を見せるな。」


僕は、正義に燃えた。

悪とブスを許さない。

そうだ。思い出した。先日、マッチングアプリで知り合った女性から会いたいと言われた。
プロフィール画像は「そこそこ可愛い」
それでいて、積極的。悪くない。
僕。いや、オレだって男だ。女が会いたいと言えば、例えやや美人でも会ってやらんでもない。

そしてやや美人は、「お忙しいでしょうから」とわざわざ僕の職場近くまで出向いてきて、仕事終わりに少しだけでもお話ししたいのです。と。
いい女じゃないか。

会ってびっくり。

目を疑ったね。

やや美人じゃない。

がっつりブス。

ふざけんな。ブス。

加工してんじゃねぇよブス。

どういう算段なんだ。プロフィール画像をどんだけ可愛くしても、マッチングアプリだ。
いずれは会う。バレる嘘をつくな！
お互いに時間の無駄だろ！
ブスって生き物は全く…。
だから弱者のままなんだ。掴み取れ！！

腹が立ったから、その後キャバクラに行ってやりましたよ。5万使いましたよ！
いやはや可愛い子にチヤホヤされると、財布も緩むってもんですな(*≧∀≦*)

しかし、だ。

僕は、確かにブスにお金を使いたくない。
やることなすこと全てが気に食わない。
その一方で、動物園なんかに行くと少し見劣りするような子や、弱そうな子にエサを与えたくなってしまう。
人間の女社会における顔面の良し悪しとは、人間の女以外の生き物（男もそうだ）にとって、すなわち生活力を指すもので、屈強さや頭の良さ、繁殖能力などあらゆる能力の差異に等しいわけだ。
ブスな女にはエサをあげたくない。
だが、それ以外で弱きものには手を差し伸べたい。

僕のなんと身勝手で、歪んだ正義感なのであろうか。
僕のこの手は汚れているのか。
ここに反省をし、、、

あ〜。いや。うん。
反省はするけど、やっぱ美人がいいわ。
ブス嫌だわ。
それに、本当に手は汚れてるわ。臭いし。
鍵触るから。
家に帰ってからだけじゃなくて、家を出る時も手を洗わなきゃな。

あ〜やだやだ。世の中生きづらいわっ。
こんな僕の心のドアを開けてくれる人が来ないかしら。