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開いていないの ー春を待つということ。 #第4夜

初めましてのみなさまも、おなじみのあなたもこんにちは、MAKIです。

青春の想い出に痛みが伴うのはよくある話で
それがこころの問題か、フィジカルなそれかは
わたしのみぞ知るところで。

さて、
オトコのひとからの贈りもので
手放しに喜べないもののひとつがアクセサリーだという持論があり
身につけるものにこだわりがありすぎるが故の悩みなのやもしれません。


駅ビルに入居しているティーンエイジャー御用達のアクセサリーショップにならぶ、
重ねるとひとつの模様になるだかどうだかのペアネックレスを眺める当時の恋人を横目に
「そういうのは要りません」とキッパリと断る16歳の秋から可愛げのなさを引っ提げて生きているのですが


それはきっと、
アクセサリー、
というよりは
ジュエリー、への憧れ。

いつか迎えると信じてやまない
左手の薬指に輝くダイヤモンドを想い、
それ以外のアクセサリーは不要
好んで付けたペアのものは
FRED PERRYのリストバンドだけ。
(流行りましたよね笑)

結婚指輪以外の指輪はつけません、と

頑なに、そう決め込むわたしがいたのです。


そんな表向きの能書きの一方で
アクセサリーを喜べないもうひとつの理由。

それは、
2011年のホワイトデーへと遡ります。



「いい男になってくれれば、
 もたれかかって酒が飲める。
 それはいいものさ。」


と、某宇宙ロボット大戦系のアニメに出てくる
美女から飛びだすセリフよろしく
ビジュアルを伴ういい男と行く居酒屋の安酒に
酔いしれていたころ、


何はなくとも、
眼前のそのひとがいつか白馬の王子様と化すことを夢見てやまずにいました。

その夢というのはほんとうに美しく純粋で
ふざけて手に触れるようなことはあっても
決して目具合うことのない
尊く、儚いものでした。

(詳しくは過去回にて↓)


2011年の3月、

日本では
忘れてはならない大きな出来事があったけれど
その少し前のある夜、
池袋西口公園のすぐそばにある雑居ビルにわたしはいました。


ジョニー・デップが主演する映画を
一緒に観た帰り、
嗜みを教わって以来すっかりハマっていた
ホッピーを片手に飲み交わしながら

ホワイトデーのお返しに、と
そのひとがバッグから取り出したのは
小さなシルバーカラーの正方形の箱。

「MAKIに似合うと思ってさ、」


エスニック雑貨にハマっていたそのひとが
天然石コーナーで
石から選んで作ってもらったらしく
もちろん男女の関係ではないにせよ
わたしのことを想って選んでくれる行為を
ある意味で前戯と捉え
ポジティブ転換の才能を多分に持ち合わせ
たいそう有頂天になり
意気揚々と、
「嬉しい!いま、開けてもいい?」などと
売れっ子キャバ嬢の如く喜んでみせるのでした。



その箱の中身は、
アメジストをあしらった、ピアスでした。


アメジスト。
高貴、誠実、心の平和を石言葉に持つ、
紫色の妖艶な、石。

似合うと思ってくれたことがとても嬉しくて
組み合わせているアクセサリーパーツも素敵で
好きなひとが選んだものを身にまとうことで
ともすれば彼の所有物になれたような
そんな気持ちにさえなるものです。



否、
ほんとうなら、
そんな気持ちになれるオンナでありたかった。



このときの、
「ああ、わたしのこと然程興味がないのね」と
諦めにも似た感情は
今なおありありと思い出されます。


まもなく40代を迎えようとするいまでも
わたしはピアスの穴を開けていません。
そう、
ピアスの穴は開いていないのです。


わたしの耳に
ピアスの穴が開いているかどうかなんて
彼の生きる世界には関係のないことで
そんなことすら知られておらず
つまりはわたしは眼中に在らずで
確認してからプレゼントしよう、
というおもてなしではなく
きっと女の子は
こういうの贈られたら喜ぶよね、と
当てずっぽうのプレゼントのなんと切ないこと。




品よくカタチのいいわたしの耳には
今日も大ぶりのイヤリングが揺れているのです。


なお、
いただいたピアスは
ハンドクラフトグッズ店で買ったパーツを用い
慣れない手作業で
不器用ながらにイヤリングへと変貌を遂げ
いまでも時折身につけることもあります。
あまのじゃくなのか義理堅いのか

「モノに罪はない」

捨てられない症候群は
このようなところにも現れるのです。



つづく

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