■あの人の小説には遠く及ばない
「文学」と「作家」への道(12)
「詩人の独り言」改
◇麻布競馬場「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」(集英社、2022年9月刊)
どこかの書評で読み、おもしろそうだ、と図書館で予約したものがようやく(予約していたことも忘れていたが)回ってきて、あっという間に読めた。
東京という地に集まる若者、ほとんどが大学生か、その延長の視点で語られる短編物語が20本並んでいる。
内容
一人称で語られる短編の数々。どの小説にも、「大学名」が出てくる。学歴小説、という紹介のされ方もされているようで、学歴好きの僕も、ふふ、と笑いながら読んだ。
この小説の書き方、書かれ様が、このnoteで優れた短編を大量に綴っている(ある程度の期間をおいて、削除されている…)ある方の作品に似ているのだ。名は敢えて伏すが、ひょっとしたらあの方なのか…と思わないでもない。
しかし、あの方が書く短編の中にある、エロスと「詩性」などは、この麻布競馬場の小説には存在しない。
その意味で、おもしろいはおもしろいのだが…。この書き手が、この先も小説を書けるのか、似た傾向のものなら可能だろうが、ただのふわふわした短い物語しか書けないで終わるんじゃないか、と想像する。
一点だけ、共感したというか、ああ僕のことのようだ、と思った部分を書き写しておく。
「――書くのをやめたらその瞬間に、自分のこれからの人生が、なんの価値も期待もないものに感じられる気がして、自傷行為みたいな創作活動をやめられなかった――」
noteを書き続ける僕の気持ちを見透かされた感じ。
にしても、
僕がほとんど読んでおり、互いにフォローもしているあの書き手さんが、逆になぜメジャーデビューしないのか、不思議だ。
この程度の小説でも、大手出版社から単行本になっているのに。
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