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■あの人の小説には遠く及ばない

「文学」と「作家」への道(12)
「詩人の独り言」改

◇麻布競馬場「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」(集英社、2022年9月刊)

どこかの書評で読み、おもしろそうだ、と図書館で予約したものがようやく(予約していたことも忘れていたが)回ってきて、あっという間に読めた。

東京という地に集まる若者、ほとんどが大学生か、その延長の視点で語られる短編物語が20本並んでいる。

内容

丸の内のメーカーに就職後うつになって地元に戻った教師、学生時代に言われた「30まで独身だったら結婚しよw」が忘れられないアラサー女…。虚無と諦念の掌編集。Twitter、note掲載を単行本化。 

図書館データ

一人称で語られる短編の数々。どの小説にも、「大学名」が出てくる。学歴小説、という紹介のされ方もされているようで、学歴好きの僕も、ふふ、と笑いながら読んだ。

この小説の書き方、書かれ様が、このnoteで優れた短編を大量に綴っている(ある程度の期間をおいて、削除されている…)ある方の作品に似ているのだ。名は敢えて伏すが、ひょっとしたらあの方なのか…と思わないでもない。
しかし、あの方が書く短編の中にある、エロスと「詩性」などは、この麻布競馬場の小説には存在しない。

その意味で、おもしろいはおもしろいのだが…。この書き手が、この先も小説を書けるのか、似た傾向のものなら可能だろうが、ただのふわふわした短い物語しか書けないで終わるんじゃないか、と想像する。

一点だけ、共感したというか、ああ僕のことのようだ、と思った部分を書き写しておく。
「――書くのをやめたらその瞬間に、自分のこれからの人生が、なんの価値も期待もないものに感じられる気がして、自傷行為みたいな創作活動をやめられなかった――」
noteを書き続ける僕の気持ちを見透かされた感じ。

にしても、
僕がほとんど読んでおり、互いにフォローもしているあの書き手さんが、逆になぜメジャーデビューしないのか、不思議だ。
この程度の小説でも、大手出版社から単行本になっているのに。


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