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■新聞社―存在のたまらない軽さ

マスコミへの道(34)
新聞、放送、出版…マスコミ志望の方々へ

 2カ月前に「毎日新聞が『中小企業』に」という記事を書いたが、相変わらず新聞業界に吹く風は厳しい。
 その後、3月には産経新聞社の子会社にあたる日本工業新聞社が発行するフジサンケイビジネスアイ」が6月休刊と発表された。
 「フジサンケイビジネスアイ」といっても一般の人はほとんど知らない新聞だろうが、もともとは今の産経新聞の前身となる新聞で、森喜朗元首相も早稲田の夜間を出てから親のコネで入社し、短期間記者をやっていた「工業専門紙」である。
 という言い方も一般の人に分かりにくいか。新聞記者でも経済系の記者でないと存在は知られていないだろう。日本にはあらゆる産業、業界という業界に「業界紙」というものがある。
 大手だと繊研新聞、鉄鋼新聞、日刊自動車新聞…などなどから、こんにゃくや消防車、靴下やそばの業界紙も(きっと)ある。
 それらは小さな業界になると、毎日発行されるものではなく週刊や月刊、場合によっては年に数えるほど…事実上休刊している業界紙もあるかもしれない。
 それに対して、日経から出ている日経産業、日刊工業と並び、フジサンケイビジネスアイの前身の日本工業新聞は、日曜を除くほぼ毎日発行される「3大産業専門紙」の一角だった。
 その事実上の廃刊である休刊のニュースは、共同通信や日経なども報じたものの、ほとんど知られることもなかった。いかに地味な新聞とはいえ、産経新聞グループの発行する日刊紙なのだが。
 経営危機と言われて久しい産経の、本体ならともかく、傍系の新聞が消える、といったところでそれほどニュースバリューはない、というのは自明のことか。
 一方、毎日新聞にも1億円の減資の報のあとに、「毎日新聞が「虎の子」大阪本社を差し出し資金捻出」というニュースが流れた。
 しかし、これをどこも後追いして報じることがない。
 毎日新聞の中堅幹部によると、報じられたことは事実だが、「ウチの経営危機はずっと言われていることで、今更の話なので誰も驚かないのでは(笑)」という話である。
 新聞社、大手マスコミの経営危機が今更ニュースにならない、というのは重い現実だろう。
 この業界に長くいる者として寂しい限りだ。


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