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■西村賢太が…死んだ

現代散文自由詩人の独り言(45)

◇どうで死ぬ身の一踊りが終わった

僕よりも6つ年下の、芥川賞作家、西村賢太。5日死去、享年54。

彼が2008年、「小銭をかぞえる」で2度目の芥川賞候補になったころ、都内の自宅に行ってインタビューをした。
その後、芥川賞を取って何年かしたとき、偶然神保町で見かけ声をかけて立ち話をしたのが最後。つまり、会ったのは2度だけ。
ただ、インタビュー後に彼の著作をすべて読み、数年前までは新刊が出るたびに買って読んでいた。テレビに映れば、「賢ちゃんだ」といつも思っていたし、彼がなじみにしていた東京・鶯谷の居酒屋「信濃路」でその姿を探したことも1度ならずある…。

最近は手にとって読むことはなかったが、初期のころの小説は本当に脳に直接ビンビン感じさせる内容でよかった。
元同棲相手へのDV、若いころの職場や、作家になってからの文壇関係者への暴力や裏切りの数々。事件沙汰になり警察に世話になったという事実。
そして、あの風貌。無頼派作家の最右翼とも映り、本当に怖い人…という印象を持つが、実際はそうではなかった。

彼の出世作のひとつのタイトルそのまま。「どうで死ぬ身の一踊り」。
その気持ちで、実は僕も文を書いていた。そして、世の中をその気持ちで今も生きている。大きな影響を受けた一人に間違いない。

彼が石原慎太郎を尊敬していたのはわかる(先日読売に追悼文を載せていた)が、あんな男みたいに長々と生きるより、還暦前に世の中からおさらばするのも、本当に賢ちゃんらしくてよい。
R.I.P.
写真·マチヤトウコウ


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