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「詩人はいるか」 

詩人宣言LV

満員御礼――
東京・両国国技館
見た目の入りはせいぜい8割
2階席にパラパラと空きがある
それでも
満員御礼
垂れ幕が見える
定員1万人だから
8割の入りとして
この空間に8千人ほどはいるか

ぼくは
2階の通路を走り回る
ぼくは走り回る
正面から東へ 向正面から西へ
そしてまた正面へ
走る 走る
叫ぶ 叫ぶ

この中に詩を書いている人はいますかー
おーい 詩人さーん
この中に
自分の気持ちを
文字にしている人がいますかー

叫ぶ 走る 叫ぶ 走る
8千人に向かって叫ぶ

詩を書いている人はいますかー

土俵の上に
力士はいない
審判の親方らも交替
砂かぶりにはいない
呼び出しが
土俵の上を箒でならす
館内は空白のとき

ぼくは
ここに
詩人がいないのか

叫んで探し回る

詩人はいませんかー
詩を書く人はいませんかー

あなたの思いは届いていますかー
短歌でも俳句でも川柳でも…
短いのでもいいのです
詩を書く人はいますかー
詩人はいますかー

思いは届いていますかー

ぼくは
思いを届けているのでーす
読んでくれてますかー

満員御礼
だなのに
反応はない

相撲と詩に関連はないのだ
無関係という関係性を
ようやく
ぼくは悟った

この人たちと
ぼくの詩と
関係性はないのだ

8千人の観衆を前に
ぼくは
東へ西へ
正面から向正面へ
走り回り続けてやる
だれの視線を浴びるのでもなく

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