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【映画評詩】「戦争」

戦争だ また戦争だ
もう一度 戦わないといけない

1947年 昭和22年
壊滅状態からようやく復興に向かう
東京
そこに
ゴジラという戦争が起きる

前の戦争で
多くの人びとが死に
もっと多くの人びとが生き残った

なぜ自分だけが
生き残ったのだ――
なぜ自分の元に
あの人は生きて帰ってくれぬのか――

喪失を埋められず
声をあげられぬ
数知れない人びと

スクリーンに映る
その一つひとつの顔に
それが刻まれている

東京ブギウギが流れ
解放感に満ちる あの空気は
そこには ない

ゴジラという災厄がくる
人びとは それを押しとどめ
消滅させないといけない

戦争――ゴジラという戦争

立ち向かう人びとがいる
誰かがやらねば
その思いが 彼らを駆り立てる

戦争に行かない以上の幸せはない
登場人物のひとり(佐々木蔵之介)は
若者にそう語りかける

分かっていながら
彼らは向かう 戦いの場に

時代も 意識も変わった
押し付けられる死ではない
人びとは知っている 学んだのだ

生きるのだ 命が大切だ

それでも それでも
誰かがやらねば
引いた貧乏くじを捨てない
さもなくば
この東京も 人びとも守れない

「生きて、抗え。」
スクリーンは訴える

この戦争は
生きることが最優先なのだ

いつかこの国で
戦争が起き
いつかこの国が
戦いに巻き込まれる

ぼくたちは どう抗うのか
生きることを最優先するなら
逃げて逃げて逃げて逃げて
抗い 生き延びるのか

ことは単純ではない

映画館の外は
78年前の3月
多くの人が生きながら焼かれ 死んだ
すぐそばの公園に
何千もの死骸が埋められた

その事実を知っているか

ゴジラを見に来た客に
スクリーンの前で 大声で
叫んでやりたかった

あの時代があった
あの時代のあとに
今の時代があるということ

今 この先に 何があるのだろう

ゴジラという戦争ではなく
ただの戦争が
そこに いる

絶対安全地帯にいるものは
そのことを知っている

eiga.comレビュー

ゴジラ-1.0 予告

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