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若き院長が医学生に伝える「療養病院論」と「まちおかの魅力」~医学生が小森先生にインタビューしてみた~

イントロダクション

当院の院長である小森將史は、院長としての顔を持つ傍ら、北里大学病院総合診療科の非常勤教授として、学生さんに対し講義を行っています。今回は、そんな小森先生の講義に参加している北里大学の学生さんが、先生にインタビューを行いました。そのレポートとなります。

小森先生はいったい学生さんに、どんなことを教えるのか・・・ぜひ医療関係者ではない一般の方も最後までお読みいただけると幸いです。

まちおかとは

まちだ丘の上病院のミッションは、 地域を支える存在であること。
このミッションのもと、療養型病院として入院、外来診療(内科・整形外科・リハビリテーション科)、重症心身障害児(者)施設を提供しています。

あたたかな医療、確かな医療、共に歩む医療を目指すまちだ丘の上病院

2020年秋からは、地域の健康とつながりをテーマにしたカフェと訪問看護ステーションが併設するコミュニティスペース「ヨリドコ小野路宿」もオープン。

「あるといいながあるところ。」ヨリドコ小野路宿

2022年からは小規模ではありながらも、以前より地域からのニーズが高かった「訪問診療」を開始しました。これにより、「地域を支える」ミッションによりいっそう近づくことができています。



まちおかに来た理由

学生さんの緊張が感じられつつも、和やかな雰囲気で始まったインタビュー。まずは、「小森院長がまちだ丘の上病院の院長をやってみよう!と思った理由」について、教えてもらいました。
「いつかは病院運営をしたかった」と話し始めた小森院長。経緯を詳しく語ります。

小森:医師になってからは、比較的規模の大きい病院で勤務していました。そこでは、たくさんの患者さんを診ることができ、医師としてのスキルを磨くことができました。

小森:医師5年目の時に、地方にある150床の病院を立て直すということで転勤になりました。そこでは、病院を俯瞰する機会を得て、次第に、従来やってきたような患者さんに対してアプローチをして病気を改善するだけではなく、人(職員)に対してアプローチして、病院という組織を良くすることに興味が出てきました。既存の病院では、システムが出来上がっているので、80%を100%に近づける感じとなりますが。私は、0から1を作ってみたかったんです。

「誰かと一緒に何かを創ることに達成感を感じたかった」と話す小森院長。ひふみ会の代表理事を務める藤井が主宰する「地域包括ケア研究所」に出会います。

小森:もともと、医療業界と違う人と話をするのが好きでした。地域包括ケア研究所の藤井代表は元々、金融業界の人でした。達成したい目標は同じでも、目標を達成するために、持ち合わせている武器が違うときに、相手の領域(武器)のことを理解することに面白さを感じています。地域包括ケア研究所とのつながりでまちおかを紹介され、院長に就任しました。

小森院長は医師がキャリアのひとつとして、療養型病院を選ぶことについて、このように表現します。

小森:療養型病院は、できる医療行為に限界があるため、医師としての専門知識が発揮しにくい環境であり、正直、私のような若い医師がキャリアのひとつとして選ぶのは難しいと思います、ですが、難しいからこそ面白いんじゃないかなと思いました。

医師としての知識が発揮しにくいことについて、以下のように考えているといいます。

医師として持っていた知識が減ることを覚悟のうえで、院長として、病院運営の方法やマネジメントについて学ぶことに投資をする決断をしました。

難しい「療養型病院という環境」を面白い、と思える力はどこから湧いてきたのでしょうか。それは、自身のイギリス留学にあると言います。

イギリスにいる間は医師という身分が無くなりました。もちろん、自分の武器であった医師という身分を一時的に捨てなければいけないという苦しさはありましたが、気づきもありました。

イギリス留学からみえてきた苦しさ、気づき

話は次第に、小森院長のイギリス留学時代の話へなりました。

小森:異国に留学すると、所属や自分を承認してくれる人は周りにはいません。まずこれらの欲求がなくなりました。余談ですが、ごはんも美味しくありませんでした。なので、日本から牛丼のレトルトをもって行ったぐらいでした・・・。

小森:しかしながら、こうした経験から、承認欲求の満たされていない人の気持ちが分かりました。言葉も伝わらないわけですから。

ここから、小森院長は次のような気付きを得ます。

欲求を満たせない今の私の状況は病気を持った人と同じではないか

また、小森院長はこれまでの話を次のようにまとめます。

既存の価値観をいったん脇に置く(アンラーニングができる)と、ひとつの価値観に固執せず、いろんな業界を渡り歩けるはずです。

小森院長がもつ、何事においても「面白いという気持ち」「0から創り上げよう」という原動力はこのような経験から来ているのですね。

「医師としての武器を持っていてよかったな」と思うことは?

既存の価値観を捨てるといっても、医師としての最低限の知識は捨てることはできません。医師として医学的見地があるという武器はどのように作用しているのでしょうか?

小森:当然ですが、医師としての知識があることで医学的な判断ができます。それがないと、ほかのスタッフからも信頼されない状況に陥ってしまいます。ゆえに、医師としての知識をゼロにすることはできません。

リーダーとして行うマネジメントとは

小森院長は、院長としての役割を担いつつ、まちおかの診療部のリーダー、リハビリ科のリーダーとしての役割を持っています。そんな小森院長が行うマネジメントとはどのようなものなのでしょうか。

小森院長のマネジメントには、大きく分けて「院長として病院のスタッフと一緒に組織のビジョンを決めるマネジメント」と「診療部、リハビリ科のリーダーとしてのマネジメント」があります。詳しくは、このように説明しています。

小森:「病院としての方向性を示すマネジメント」では、病院の幹部と一緒に何年後かのビジョンを決めます。そこに向かうために、各部署で部、課、職員個人のゴールをそれぞれ決めてもらって進捗管理をしてもらうわけですが、それがうまくいくよう、ビジョン策定の段階から各部署と話し合いをしたりしています。

小森:「診療部、リハビリ科のリーダーとしてのマネジメント」は、日々の業務で解決が難しい困りごとが上がってきたときに、対話をしながら解決に向けたサポートをしています。

また、マネジメントをうまくいくためのコツとして、よく話を聴き、しかるべきフィードバックをすること、自らだけでは解決できないような問題の場合は「話し合いの場を設定する」ことも重要だと言います。

療養型病院や訪問診療というフィールドで働く魅力

急性期病院の経験もある小森院長に、改めて療養型病院や訪問診療というフィールドで働く魅力を聴いてみました。

小森:訪問診療、療養型病院の対象となる高齢者の方々は、病気を治してほしいというよりは、「最期の時間をどう生きるか」、「どのような死に方するか」を考え、人生の質をあげたいというニーズが強いのではないかと感じています。

そのようなニーズを叶えるためには、医師としての役割と医療者としての役割を果たすことが重要としたうえで、このように続けます。

医療者としては、患者さんの価値観を知り、それに沿ったどのようなケアが提供できるのかを考える必要があると思います。

医師としては、チーム医療において最終責任者は医師になるわけなので、多職種のカンファレンスを通じ、各専門職の患者さんに対するケアへの想いを意見を引き出したり、まとめたりする役割があります。

訪問診療や療養型病院で働くことについては、このようにまとめています。

在宅(訪問診療や訪問看護)は、幅広い機関と連携することになります。連携先の訪問看護ステーション、ケアマネさんにもそれぞれ、組織のゴールがあり、それぞれをまとめるという難しさを感じています。

療養型病院は、制約が多いのが特徴です。例えば、使うことのできる薬にも制約があり、最新治療を提供するのが難しいという特徴があります。

ここまで「困難な話」が続きましたが、このようなことを力強く話されています。

小森:こうした制約を持ちつつ、患者さんの想いをかなえることは難しいことです。一方で、考え方によっては制約があるけれども自由な余白が沢山存在している。そこに面白さがあると思っています。この感覚はまちおかに実際にきてみないとわからなかったです。何よりも、「療養型病院がこんな風になっている」ということを若い医師や医学生にシェアしたいと日ごろから思っています!

メッセージ

最後にまちおかを志望する医師の方や、将来、まちおかをフィールドにして実習をする医療専門職の学生の方に向けて、メッセージをいただきました。

小森:自分が実現したいことがあるならば、それを実現するための技術や能力を学ぶために、まちおかは良い環境です。それは、組織が小さく、未完成であり、自由な発想があるからです。例えば、訪問診療に関心のある先生であれば、訪問診療の立ち上げ(スタッフの配置、各機関との連携づくり)を一緒に作っていけると思います。

おわりに

いかがでしたでしょうか。小森院長の「どんな状況下でも面白い!」と思える力や、普段知ることのできない療養病院のマネジメントについて伝えることができたでしょうか?

まちだ丘の上病院では、医師をはじめとし、地域をフィールドに活躍してくださる方を募集しております。以下のリンクをぜひご覧ください。

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