「なんとなく住んでるんじゃなくて、実はものすごく面白い街なんだよって。」 N35°35'04.44” E139°33’09.16”
そうですねぇ、僕は美しが丘っていう街は、もう昔から、開発された当時から実は知ってて、はい。
僕は地理を勉強しててですね、そのなかでも都市地理学っていう分野。その中でも、まちづくりに興味があって、実は美しが丘にはちょこちょこは来たことがあって。最初に来たのは、20年、30年…そうですね、けっこう前です。いくつかの街に興味を持って調べてて、この美しが丘もひとつ気になっていた場所で、そこでたまたま僕は、たまたま、この街の中学校に赴任してきたんですよ。10年前でした、はい。
高度経済成長のあたりで、住宅と緑と、そういうのをこう、うまく組み合わせながら街をつくろうみたいな概念があって。それはもともと、イギリスのエベネザー・ハワードって人がつくった田園都市構想という概念で、歴史的には、産業革命のときの公害問題とか住宅問題をなんとか解消しようっていう発想なんです。街が緑に囲まれていて、働く場所があって、住民によるコミュニティ形成を目指したところが重要な点で。で、この理論をもとにつくった街が、東京の田園調布とか日吉とか、あと、こことか、東急沿線でつくられて。田園都市線という名前は、そのハワードさんの概念からとったとか。美しが丘ではちょっと、まぁ、働く場所がどうしてもとれないですが、ただ、街なみをつくろうというのは、はい、けっこう具現化に近いと思います。
僕が好きなのは、あそこの美しが丘三丁目の十字路ですね。あそこの十字路の横に美しが丘の自治会の憲章が書いてあるんですよね、はい。街を守っていきましょうっていう、何ヵ条か出てるんです。十字路のバス停側の角のところに看板がありますよ。なるほどなぁと思って。自治会が、やっぱりしっかりそういうのをつくったんだなぁ、すごいなと思って。それと、駅からずっと遊歩道が、あの団地の間を抜けてくじゃないですか。きれいに自然があって、春は桜がばーっと咲いて、道路と歩行者の道がちゃんと分かれていて、ようするに車がなくても買い物とか、通学ができるっていう、そういう計画的にきちっとつくられた街であるってことも非常に良いですね。見て回って面白いです。ある程度、街をつくるのは行政だったりするかもしれないですけど、それを守っていくっていうのはそこに住んでる方々なので。二丁目、三丁目の自治会の住民の方々が、やっぱり力を合わせて環境を守っていこうっていう自治意識、それは実は簡単なようで難しくて。そういう街っていうのは非常にこう、僕も興味があって。日本の住宅の歴史から見ても、ここは特徴のある非常に貴重な場所だと僕は思いますね。守る、つながる、難しいので。美しが丘はそういう点が面白いです。
僕が美しが丘中学校にきて、ここに住んでる子どもたちにはこの街の良さっていうものを学習させたいな、っていう思いがありました。僕が来た頃から、夏休みの課題で街の歴史を調べる新聞づくりを始めたのは実はそういう目的があったんです。なんとなく住んでるんじゃなくて、実はものすごく面白い街なんだよって。歴史があって日本でも珍しく計画的につくられてて、で、こういう街なみを守っていこうみたいな活動を地域住民がやっていて、みたいな。子どもたちっていうのは今までの先輩たちが築いたものを、そのまま当たり前のように日々つかってる訳じゃないですか。日ごろ何気なく当たり前のように暮らしてるけど、実はこの街の歴史とか、まぁこの街がどういうふうにできたとか、なにかそういうのって意外と知ってるようで知らない。街の成り立ちをやっぱり次に伝えていかなくちゃいけない。次世代っていったら今の中学生じゃないですか。社会科の授業でも必要なことなんですけどね、街になにかできることはないかな、って。次世代につなぐ作業っていうのは大事かな、と思って。子どもたちが次にどうこの街をつないでいくか、自分が大人になったときに、ここにやっぱ住んでいたいかとか。で、この街をもうちょっとこういうふうにしたいとか、こういうとこは守っていきたいとか。そういう意識を少しでも持たせたいと思っていて。まぁ、この学校にいた9年間、うん、実は僕がやりたかったことは「わがまち新聞」という新聞づくりを通してできたかな、っていう感覚がありますね、はい。
インタビュー:2017年 夏
このおはなしは2017年No.004号に収録されています。冊子をご希望のかたはご連絡ください。冊子は無料、送料180円でお送りします(5冊まで送料は同じ)。「街のはなし」プロジェクトを、スキやサポート,snsのフォローなどで応援していただけましたら大変励みになります!どうぞよろしくお願いします。
企画・文・写真: 谷山恭子
編集・校正: 伏見学・街のはなし実行委員会
発刊:街のはなし実行委員会
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