見出し画像

これはこの街が誇っていいことのひとつじゃないかと思います。

私は1966(昭和39)年4月、たまプラーザに電車が通ったときに越して来て、ほぼ50年住んでいます。私自身が大学4年を卒業して、就職で4月から通勤、という時でした。親父が美しが丘二丁目の土地を買いまして、最初そこに住んでいたんです。二丁目は高台ですので、天気のいい日なんかは庭から富士山が見えましてね、非常に良い景色だなぁと、家族で言っておりました。まだ家などぜんぜん建っておりませんで、両隣は空き地で、天気の良い日曜になると、家族連れのハイキング客が来てですね、その芝の上に、芝というか雑草の上に、ござを敷いてお茶を飲んだり、おにぎりを食べたりしていました。そんなとこなんだなぁ、ここは、と当時は思っていました。
私が最初会社へ勤めたときは、電車は渋谷へ直行というのはなかったんです。自由が丘まで行きましてね、そこで東横線に乗り換えて中目黒へ行きました。中目黒で日比谷線に乗り換えて日比谷へ言って、そこで千代田線に乗り換えて大手町と。だから会社まで3回乗り換えだったんです。ま、そういうことでたいへんな場所だったんですよ。

これは64年の東急の広告。分譲開始の頃ですね。

画像1

当初土地を売り出したときは、美しが丘中部自治会館の反対側のバス停のところは、ショッピングセンターにします、と。だから、みなさん買い物には不便はありません、ということだったんです。それで1967(昭和42)年でしたかね、東光ストアができた。それでまあ、約束通りにやってくれるんだろうと思ってたんですけど、ま、途中でやめちゃうんですね。あのー、あそこをお通りになるとわかると思うんですけど。バス停の両側ですね、上り下りとも歩道が広いでしょ。ほかのところより。それからその側面に入ったところもね、広いんですよ。それは買い物客がわーっと来るんで、人が通りやすいように広く作ったんですよ。だからまぁ、本気でやる気ではいたんだと思いますね。しかし、駅の方に立派な物を作るから、もうやめちゃえと。あと、住宅地内に循環バスを走らせます、と、そういうふうにも広告に書いていたんです。だけどその後、日本経済がだーっと成長して、サラリーマンでもマイカーが持てるようになったんで、この循環バスの計画、やめちゃったんですよ。そんなわけで、実は約束がいくつか反故にされてきたんですよね。

松浦さん_note3

最初分譲した時は、1区画200坪くらいでした。私が1973(昭和48)年に三丁目の方に土地を買ったときで140坪、しばらくしたら120坪くらいで売り出してましたね。地価も上がって、区画を小さくしていかざるをえなかったんでしょうね。今はね、1区画55坪くらいですかね。だからたとえば200坪の土地が売りに出されると、業者は必ず3区画に分けますよね。小さな家が増えて、いまはうちの近くもぜんぶそうなりつつあります。そしてみなさん車を持ってますから、家の道路に面したところに屋根なしの駐車場を作るんですね。そうするとね、歩いてると、家が向こうの際にあって前が平ったく広いでしょ、空間がすごくあって気持ちがいいんですよね。悪いことばかりじゃない。

松浦さん_note2

そんなわけで、この街はいろいろ変遷を重ねてきたんですけど、私の印象に残っております場所というのは、かえで幼稚園です。なんでかっていうと、息子がその幼稚園に通っていた。いまだに幼稚園の同級生と非常に仲が良くて、年に1回2回、同窓会やってるんです。だから、そこで学んだこと、あの幼稚園の雰囲気、先生方の子どもの扱いが非常に良かったんだろう、と。だから友達もしっかりできて続いている。もうひとつ、この地域で印象に残っているのは歩行者専用道路ですよね。かえで幼稚園の前の遊歩道もそうです。でもいくつかの遊歩道はブロックもずいぶん古くなって、あまり人が通らなかったんですね。でも、横浜市の健康づくり歩行者ネットワーク、あれで遊歩道のブロックをきれいにしてくれるっていうんで、たぶん3分の2くらいはきれいになるんじゃないかと思ってます。街ができてから、もう50年近く経って、ぼろぼろになるのはあたりまえですよね。それを住民の力でお役所とお話しして、だんだんだんだんきれいになってきてる。これはこの街が誇っていいことのひとつじゃないかと思います。


松浦秀機

インタビュー:2017年 夏
このおはなしは2018年No.005号に収録されています。冊子をご希望のかたはご連絡ください。冊子は無料、送料180円でお送りします(5冊まで送料は同じ)。「街のはなし」プロジェクトを、スキやサポート,snsのフォローなどで応援していただけましたら大変励みになります!どうぞよろしくお願いします。

企画・文・写真: 谷山恭子
編集・校正: 伏見学・街のはなし実行委員会
発刊:街のはなし実行委員会

よろしければサポートをおねがいします。サポートは、今後の「街のはなし」の冊子発刊費用に使わせていただきます!