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6月20日にDIALOGUE+が起こした「かくめい」について

 以前、「やってみせる新星アイドル声優ユニット」として紹介した

DIALOGUE+のファーストライブが行われる予定だった2020年の6月20日に、『ぼくたちのかくめい!オンライン』と称してのオンラインライブが行われた。コロナウイルスの影響によってライブのほか様々な興業が今まで通りに行えなくなったなかでオンラインライブの本数も増加の一途をたどっているが、新人企画のファーストライブを、しかもキッチリ有料公演としてオンラインで開催したということはやはりエポックメイキングなことだと思う。

註:同じくポニーキャニオンからリリースのある声優アーティスト〈三森すずこ〉〈内田真礼〉の両名も同価格帯でのオンラインライブ公演をこの前後に実施するが、この二人は既に日本武道館、さらにはそれ以上のキャパシティの会場での公演実施経験があるいわばトップクラスのアーティストであり、新人のファーストライブが同じ条件下にて行われる、というのはやはり革命的であると言えるのではないか。それを【やってみせる】のが、DIALOGUE+の見どころであり魅力だと私は思う。

改めて観客を入れての仕切り直し的な公演は9/19に実施が予定されているが、そこへの期待も十分に高まるような内容だった。

 今回のライブのタイトルは前述の通り『ぼくたちのかくめい!オンライン』だが、革命を革命たらしめるのは「〈思想〉とその宣言(プロパガンダ)」であることは世界史上のあらゆる革命が示す通り。今回の公演においてもDIALOGUE+のメンバー・スタッフの思想と宣言が強く感じられたのは特筆すべきポイントだと思われる。以下に自分が感じた「かくめい」を振り返ってみたい。

かくめい①:「マネタイズ」に対する思想の宣言

 今回特にエポックメイキングだったのは、制作・プロデュースをするスタッフサイドからの積極的な発信、その発信を通じて「いかにマネタイズをするか、それができる世界観を作っていくか」を包み隠さずにオープンにして、かつ、ファンを「共犯者」と定義してそのムーブメントに巻き込んでいこうとしたこと、実際、巻き込むことに成功したことではないかと。具体的な目論見については、音楽プロデューサーである田淵智也氏とリリース元であるポニーキャニオンの野島鉄平氏のインタビューにて詳しく語られており、大変興味深いのでぜひ読んでみていただきたい。

かくめい②:ニューノーマルな観覧スタイル

 自分も実際に今回のオンラインライブのチケットを購入して観覧してみたが、出演者のパフォーマンスはもちろんのこと、観覧のスタイルの面も含めて「ニューノーマルなライブ観覧スタイル」の可能性を感じるところがいくつかあった。

 まず観客視点としてオンラインライブの大きなメリットとして感じたのは「時間の活用」について。ふつうライブを観覧するとなると、公演中の時間のほかに会場までの行き帰りの移動時間、グッズが欲しいのであれば購入待機列に並ぶ時間、グッズ購入から開場までの時間など、膨大な時間のロスが発生するのだが、オンラインであればこれらがほぼゼロとなり、グッズ物販についてもオンライン(EC)で事前実施することで「観覧のお供」となるようなグッズ(たとえばTシャツ、マフラータオル、リストバンドのような)の確保もスムーズにできた。今後は、かさばるために会場内に持ち込みづらい、たとえばタペストリーのような長物や重量のあるものにアイテムの幅を広げることもできそうな気がする。また、移動に伴う交通費や宿泊費の圧縮も起こっており、この分をグッズの購入などより直接的なマネタイズに振り分けるモデル構築の可能性も見えてくるのではないだろうか。さらに、移動を伴わず観覧できることは、物理的に参加の叶わない距離や環境(特に移動に支障をきたす病気や障害の当事者である場合これはかなり大きい)に住んでいるファンへ間口を広げることにもつながり、これも大きなメリットだと思う。

 次に、観覧にあたっての環境セッティングの自由度の高さは公演そのものの満足度向上にもプラスに働いたように思う。たとえばライブ会場に出向いての観覧では、不特定多数の人間が同じスペースに密集するため観覧の姿勢には大きな制限が加わるし、衛生面の問題や施設保全の観点から会場内での飲食はほとんど不可能なところ、オンラインでの観覧であれば、それこそ自室であればどのような体勢で観覧をしても問題なし、さらに飲食も自由なので、食事をしたりお酒などを楽しみながらの観覧も可能で、実際にやってみたらこれはこれでなかなか快適だった。

かくめい③:オンラインならではの「プロパガンダ」

 そしてもうひとつ、オンラインライブになることによって「空気感の共有」の点において通常のライブに比べて劣る部分があるのではないか、という懸念が少なからずあったと思われるのだが、オンラインライブになることでむしろよりプラスになったのがこの部分ではないか、と自分の感覚では思った。ひとつは、チケットの販売が100%オンラインとなったことであとからデジタルコンテンツの特典を投入することができた点、そして、もう一つはコンテンツ育成に欠かせない目撃談・感想の共有をよりリアルタイムかつ生の感覚でできた点で大きくプラスを感じることができた。

 現在でも公演終了後のSNS等での感想共有は盛んだが、オンライン公演で各自の手元に公演中も電源の入った端末があることで、さらにリアルタイムでの感想や生の空気感の共有が促されたのは、こと共感覚の醸成という点で特に大きな成功になったのではないかと思っている(いっしょにオンラインで観ていた皆さんいかがでしょう?)。また、ファンと同様にスタッフサイドからもリアルタイムでの発信があり、

特に関係性と空気感がコンテンツのメインを占めるアイドルユニット活動における新しいコミュニケーション形が生まれたのは、まさに「かくめい」的な出来事だと感じた

 さらに、ライブ本編後には「キャスト打ち上げ放送」「スタッフ打ち上げ放送」と称して、終了直後の公演を振り返る配信の販売も行われ、特にスタッフ打ち上げ放送についてはライブ本編がおよそ1時間20分ほどであったのに対し2時間半(!)に迫る配信時間となった。ここでも公演や今回オンラインライブに踏み切る過程について大変興味深い内容が語られており、田淵氏の言うところの「共犯者」として大変好奇心をくすぐられる、ワクワクする内容であったことをしっかりと記しておきたいと思う。やはり、裏方の熱量や愛情が感じられるコンテンツは「強い」のだ。

今後のオンラインライブのあり方について

 今回の「ぼくたちのかくめい!オンライン」が、マネタイズするオンラインライブという世界観に向けてのある種のお試しであることについては、冒頭で紹介した田淵氏と野島氏のインタビュー記事のようにスタッフサイドからすでに発信されている通り。実際、ここまで述べたような画期的な試みが多くあり、また、実際に観てみる前までは懸念要素だった画質や音質も十分以上で問題がなく、今後のムーブメントに対して示唆的なものも多く含んでいたと思う。

 今後、観客を入れての公演がかつてのようにできるまでに世の中が「戻る」のかどうかは未知数で(もちろん、生の音と客席の熱気は「最強」のものなのだけれど)、仮にオフラインの公演ができるようになったとして、それが1年を通じていつでもできるようになるかどうかも今の段階では分からない。

 そうした時に、今回のような「フルでのオンライン公演」あるいは状況に合わせて「入場者数を制限してオフライン公演を行いつつオンライン配信の併売」、かつての通りライブ公演が行えるようになった場合でもより多くのユーザー獲得のための間口として「関係者席視点を模した定点カメラ+アーカイブ提供による〈研究資料的コンテンツ〉の開発・販売」などいろいろなアイディアを考える場面が多く出てくることになると思われるが、こういったものを考えるにあたっても今回の公演(ないしは「かくめい」)がある種の前例主義を破るような具体的事例となってくれることを、いちライブ好きとしても願っている。

DIALOGUE+公式情報はこちらから。

<公式ツイッター>https://twitter.com/DIALOGUE_staff

今回の公式ライブレポートは以下の通り。


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