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本人訴訟で未払い残業代を請求する(49)-答弁書を詳解する2【答弁書の構成】

今回から、労働審判で相手方が作成・提出する「答弁書」について具体的な解説をしていきます。

相手方の答弁書は、通常、第一回期日の遅くとも1週間前くらいに相手方に付く代理人弁護士から直接郵送かデリバリーされて来ます。弁護士から書面が直接送られてくると、何とも言えない緊張感が走ります。

答弁書の分量は、労働審判手続申立書も同じですが、だいたい10ページから多くて20ページくらいでしょう。「乙第1号証」「乙第2号証」「乙第3号証」・・といった書証証拠説明書、必要に応じて「別紙」(第24回note参照)も付いているはずです。

答弁書では、申立人の「〇〇を請求する」という「申立ての趣旨」に対する答弁として、当然に「申立人の請求を棄却する、との労働審判を求める」という定型句が来ます。相手方に付く代理人弁護士が答弁書を作成するわけですから、「申立人の請求を認める」といった答弁は100%ないです。また、しろうとの申立書に対して作成した答弁書ですので、「荒唐無稽」とか「法的構成が判然としない」などといった、専門家がしろうとを見下すような表現も含まれているかもしれません。さらには、しろうとである申立人を非難したり、責任を擦り付けたり、申立人が不利になるような虚偽事実を並び立てるような記述もあるでしょう。

しかし、気にする必要はありません。答弁書とはそういうもの、感情的になったり落ち込んだりする必要はありません。虚偽事実を並び立てているにもかかわらず、その書証が付けられておらず、立証がされていないなら、「相手方の主張は信用できない」との心証を労働審判委員会に持ってもらう、申立人にとってはつけ入るスキになりますし、むしろチャンスです。その虚偽事実が争点に関係ないものなら、そもそも気に留める必要すらありません。答弁書を読み進めていくと、おそらく怒り、不快感、あるいは不安がこみ上げてくるとは思いますが、どうか冷静に対応してください。

ところで、答弁書を冷静かつ注意深く丁寧に読んでいけば、その弁護士の力量というか経験値が何となくわかってきます。私は本人訴訟を通して何人かの弁護士と対峙して、弁護士が作成した何通かの書面を見させていただきました。これは私見ですが、弁護士の力量とは、ずばり文章作成能力に尽きるのではないかという思いに至りました。すばらしく論理的かつわかりやすい文章を作る弁護士もいれば、一方では多忙過ぎて見直す時間がないのか誤字脱字だらけの文章を作成する弁護士もいます。つまり、言いたいことは、弁護士もピンキリということ。こちらはしろうとの本人訴訟、相手方には弁護士が付く。それだけでビビる必要は一切ありません。

答弁書の構成としては、別紙を除けば、

第1 申立ての趣旨に対する答弁
第2 申立ての理由に対する認否
第3 相手方の主張

三部構成となっています。

第1の「申立ての趣旨に対する答弁」は、労働審判手続申立書の「申立ての趣旨」に記載した3つの請求項目(第15回note参照)に対する相手方の答弁です。相手方として申立人の請求に応じるのか、それとも申立人の請求に応じないのか、はっきりと回答する箇所です。当然請求に応じるわけにはいかないでしょうから(請求に応じるなら、任意交渉で解決しているでしょうし・・)、先に述べた定型句「申立人の請求を棄却する、との労働審判を求める」が来るわけです。正確には、申立書での3つの請求項目に対して、次のような答弁となります。

1.申立人の請求を棄却する、
2.申立費用は申立人の負担とする、
       との労働審判を求める。

第2の「申立ての理由に対する認否」は、申立人が申立書の「申立ての理由」に記載した内容に対して、「認める」か、「否認するないし争う」か、「不知」かを述べる箇所です。申立書の各段落または一文一文毎に、「認める」「否認するないし争う」「不知」かが述べられます。不知とは、知らないということ。申立人が主張する事実について認めもしないし否認もしない、真偽不明といったところでしょうか。

そして、第3の「相手方の主張」では、相手方が争点ととらえる項目に従って(または、申立人が作成した争点整理表に従って)、相手方による主張が述べられていきます。 

ここまでお読みいただきありがとうございました。次回も引き続き答弁書について解説していきます。

街中利公

本noteは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。

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