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労働審判手続申立書の書き方~その8~

前回のnoteをもって労働審判手続申立書の本文の説明を終えました。「当事者」「請求の価額」「第一 申立ての趣旨」「第二 申立ての理由」それぞれの箇所について、私が実際に使用した申立書をもとに説明しました。今回は、申立書の一部としてみなされる「証拠方法」「附属書類」「別紙」について解説していきます。

やはり、私の申立書から該当箇所を抜き出します。
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証拠方法
甲第1号証  雇用契約書
甲第2号証  給与支給明細書
甲第3号証  離職票
甲第4号証  指紋認証勤怠記録(タイムカード)
甲第5号証  *****
甲第6号証  *****
*****  *****
*****  *****

附属書類
労働審判手続申立書 写し  4通
証拠説明書 正本      1通
証拠説明書 写し      1通
甲号証 写し       各2通
資格証明書 原本      1通
相手方のインターネットコーポレートサイト 写し  1通

別紙
別紙1  勤務表
別紙2  残業時間・未払い残業代の計算表
別紙3  *****
***  *****
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以上の「証拠方法」「附属書類」「別紙」の記述を労働審判手続申立書の本文の後に続けて書いてください。

まず、「証拠方法」の欄から説明します。労働審判手続申立書とは別に証拠説明書と証拠(書証)を提出するわけですが(別途、詳細を説明する予定です)、ここでの「証拠方法」とは、申立書のなかで証拠リストを記載しておくものと考えればよいと思います。本来は、提示する証拠が人証なのか物証なのか、物証であれば文書なのか検証物なのかなどを明記するようです。

私の場合、雇用契約書や給与支給明細書などを提出しています。「甲第〇号証」とあるのは書証番号です。労働審判ないし民事訴訟で、申立人・原告が提出する証拠(書証)なら「第〇号証」、相手方・被告が提出する証拠なら「第〇号証」となります。○の部分に数字が入ります。

次に、「附属書類」とは、労働審判手続申立書の正本に附属して裁判所へ提出する書面のことです。申立書の副本を1通と写しを3通(合計して、「写し4通」と書いています)、証拠説明書の正本を1通、同副本を1通、甲号証(書証)の写しを各2通、資格証明書の原本を1通といったものです。要するに、申立書(正本)1通の他に、申立書4通、証拠説明書2通、甲第1号証を2通、甲第2号証を2通、甲第3号証を2通、・・・揃えて提出するということです。それぞれ、コピー機や普通のプリンターで印刷したもので問題ありません。

相手方のインターネットコーポレートサイト (会社概要の箇所など)のコピーは、裁判所書記官から促されたものです。けっして、提出が必須というわけではありません。私の場合、労働審判の管轄が東京地裁であったことから、相手方の会社の東京支社ないし支店・営業所が実在しなければならず、一方で私が提出したその会社の履歴事項全部証明書(資格証明書)には東京支社ないし支店・営業所の登記がされていなかったことから、東京支社の実在を少しでも示すものとして、インターネットコーポレートサイト のコピーの提出を要請されたようです。もし東京支社ないし支店・営業所が存在しなければ、当事者間で管轄についての合意がない限り、東京地裁は労働審判の管轄にはなり得ないのです。 

そして、「別紙」は、客観性を伴わない、申立人みずからが作成したもの、申立人みずからの主張を整理・記述したものです。証拠(書証)は当然に客観性が伴われる必要がありますが、別紙は申立人みずからが作成するのですから、客観性は伴われません。申立書は申立人の主張を主観的に記したものですから(もちろん、その主張を採用してもらうために、客観的な証拠を提出するのですが)、別紙もその一部なわけです。

私の例で言えば、「甲第4号証」として「指紋認証勤怠記録(タイムカード)」を提出していますが、これは証拠ですから客観性を伴うものですし、そうでなければ証拠能力はありません。対して、「別紙2」の「残業時間・未払い残業代の計算表」は、「甲第4号証」に基づいて申立人である私みずからが表計算ソフトを使って作成したものです。つまり、「別紙」とは、客観的な一次データに基づいて申立人みずからが整理・作成した二次資料と考えればよいと思います。

以上で、労働審判手続申立書についての解説は終わりです。次のステップは、証拠説明書です。なお、読者の皆さまが労働審判手続申立書を簡単に作成できるように、次回noteとして、申立書全体を通してのテンプレートを出しておきます。必要に応じてご使用ください。引き続きよろしくお願いします。

街中利公

本noteは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。



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