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答弁書って何?:答弁書について詳解します~その1~

今回からは「答弁書」について解説していきます。

第14回noteから第24回noteにかけては「労働審判手続申立書」、第30回noteから第44回noteにかけては「証拠説明書」について述べました。これら書面は、労働審判を申立てた申立人が作成して、労働審判委員会へ提出する書面です。一方で、「答弁書」は労働審判の相手方が作成・提出するものです。

答弁書とは、詳しくは次回から述べていきますが、申立人が作成・提出した労働審判手続申立書に対して、相手方が、申立人の「申立ての趣旨」への答弁をして、申立人の主張に対する認否を明らかにしつつ、反論・抗弁をしていく書面です。ちなみに、相手方も、答弁書の内容に従って、書証と証拠説明書を提出することになります。

労働審判を申立てる立場にある読者の皆さまは、答弁書の書き方を知っておく必要は必ずしもありません。しかし、答弁書は、第一回期日の前に必ず申立人のもとに届けられ、その内容に目を通すことになりますから、どのような構成でどのような内容が書かれているのかをあらかじめ知っておいて損はないでしょう。

本人訴訟で労働審判を申立てるしろうとが申立書でせっかく事実の主張をしているにもかかわらず、それらは、多くの場合、相手方の「答弁書」では否認ないし争う、または不知とされることになります。認めてもらえないか、または「そんなこと知らない」と言われるわけです。しかも、その答弁書を実際に作成するのは相手方に付く代理人弁護士でしょうから、その際のしろうとの精神的ダメージは結構なものかもしれません。私自身、答弁書で自分の主張がほぼ全否定されたのを受けて、「あぁ、やはり、しろうとの本人訴訟ではダメなのか」といった気持ちになってしまいました。そこで、前もって「答弁書って、所詮こんなもの。。。」とわかっていれば、精神的ダメージをある程度軽減することもできるでしょう。

では、私自身が経験した東京地方裁判所でのケースですが、まず労働審判を申立てた後のプロセスについて説明します。

申立人が提出した労働審判手続申立書は、東京地裁から相手方へ普通郵便で郵送されます(書留などではないようです)。その送達を受けて、相手方は、弁護士を代理人に付けるならその選任をし、答弁書の作成に取り掛かります。担当の裁判所書記官は申立人と相手方の双方に連絡を取り、第一回期日の日時調整を行います。

労働審判規則第13条で「労働審判官は、特別の事由がある場合を除き、労働審判手続の申立てがされた日から四十日以内の日に労働審判手続の第一回の期日を指定しなければならない。」とされているので、基本的には、申立てた日から40日以内に第一回期日が設定されることになります。その期日の設定は、必ずしも裁判所の都合だけで強制的に決定されるものではないようです。ケースバイケースと思われますが、いくつかの候補日から希望を伝えると、考慮してくれることもあるようです。実際、相手方には多忙であろう弁護士が付くわけですから、そのスケジュール調整も大変でしょう。期日が決まっていたのに、後になって変更してほしいというようなことも起こり得ます。

相手方は、第一回期日の一週間から10日前くらいまでに答弁書を作成して、その必要部数を担当の地方裁判所の民事部(例:東京地裁なら民事第19部)に提出、同時に申立人にも答弁書の副本を郵送します。申立人は、基本的には、弁護士名が印字され弁護士の印鑑が押印された答弁書が届けられてはじめて、相手方が弁護士を代理人に付けたことがわかります。なお、必要部数については、第24回noteの「附属書類」の箇所を参照願います。

基本的には、以上が第一回期日までのやり取りです。ただ、場合によっては、申立人が、第一回期日までに、相手方の答弁書に反論をするための準備書面(反論書)や争点整理表(→別途解説します)を作成・提出する場合も出てくるかもしれません。

ちなみに、第一回期日が決まった際、労働審判を担当する労働審判官や労働審判員(第7回note参照)の氏名などを教えられることはありません。ですが、労働審判官は裁判官がつとめます。「民事第〇〇部〇係」といった労働審判を担当する部署はわかっているわけで、また裁判官はその部署に所属していますので、少なくとも裁判官(=労働審判官)の氏名については、裁判所ホームページから知ることができます(1部署に1裁判官のみがいる場合)。インターネットで検索すれば、その裁判官が過去にどのような事件を担当して、どのような判決を下したかといった情報にたどり着ける可能性もあるでしょう。過去の判決から見えるその裁判官の思考の傾向は、皆さま自身の事件にはもちろん直接的には関連はありませんが、参考にはなるかもしれません。

次回からは答弁書の具体的な構成と内容について説明していきます。どうかお楽しみに。

街中利公

本noteは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。

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