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労働審判手続申立書の書き方~その1~

前々回のnoteでは、労働審判手続きを申立てる際の書面について簡単に述べました。今回から数回にわたって、書面のなかでも最も重要な労働審判手続申立書(以下「申立書」といいます)の書き方について解説したいと思います。

労働審判法第5条・労働審判規則第9条によれば、申立人が作成・提出する申立書には少なくとも次が記載されていなければなりません。

第一に、当事者。「申立人」と「相手方」の名前、住所(書面の送達先住所)、連絡先をそれぞれ記述します。「申立人」名の右側に認印を押印してください。弁護士を法定代理人として付ける場合は、その名前、住所、連絡先も書く必要があります。

第二に、申立ての趣旨。「相手方は、申立人に対して、〇〇〇万円支払え」というように請求の金額や趣旨を明確に示すものです。

未払い残業代を請求する場合、申立ての趣旨には、①未払い残業代+遅延損害金、②付加金+遅延損害金、③申立て費用(ちょう用印紙代+郵便切手代)の3つを請求することを記述します。なお、遅延損害金と付加金は改めて解説しますので、ここでは項目として理解していただければよいでしょう。

第三に、申立ての理由。なぜ申立ての趣旨で示された請求をするのか、理由を述べる箇所です。基本的には、「当事者の定義」⇒「事実関係の明確化」⇒「支払義務の主張」という流れで理由を説明していきます。

とりわけ、「事実関係の明確化」として述べるべきは「予想される争点、および当該争点に関連する重要な事実 」です。そして、「予想される争点ごとの証拠」を書証として付ける必要があります。

「予想される争点」とは、未払い残業代を請求する場合であれば、「残業をしたか否か」「残業代(割増賃金)は支払われたか否か」「割増賃金を算出する計算式」「管理監督者性」等などでしょう。一方で、「当該争点に関連する重要な事実」とは、同じく未払い残業代を請求する場合であれば、「残業をした事実」「残業代が支払われていない事実」「割増賃金合計を算出するための、時間単価×割増率×残業時間」「(申立人は)管理監督者ではなかった事実」等など。これら”争点”と”争点毎の事実”の記述を通して、事実関係を明確にしていくのです。これこそが立証活動です。

もちろん、立証には「予想される争点ごとの証拠」が必要です。書証については前々回で簡単に説明しましたが、未払い残業代を請求する場合、タイムカードや勤務記録、給与支給明細書、銀行通帳や給与振込口座の入出金明細、雇用契約書、就業規則、給与規程、人事辞令証、ジョブディスクリプションなどを準備するとよいでしょう。

そして、第四に、労働審判前に当事者間において行われた交渉、申立てに至る経緯の概要を記載してください。任意交渉を申し込んだ、内容証明郵便を郵送した、雇い主が任意交渉に応じてくれなかった等などの概略・概要を整理して述べるとよいでしょう。

次回は、実際に、テンプレートを使用しながら申立書を作成してみましょう。どうかお楽しみに。

街中利公

本noteは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。

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