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まちの保育園・こども園の「食のこと」

乳幼児期は「食」を通して身体の基礎がつくられる大切な時期。
まちの保育園・こども園は、子どもたちの身体と心の成長を促す給食をつくること、そして五感を使った食との出会いを大切にしたいと考えています。

「楽しい!」「おいしい!」と感じる瞬間をたくさん重ねてほしい。
さらに、「食」への関心が深まるといいなと思っています。

キッチンから広がる、つながる

子どもたちの毎日の食を支える、園のキッチンスタッフ。
具体的にはどんなことをしているのでしょうか。
ここでは「まちの保育園 小竹向原」の例をご紹介します。

(小竹向原園では、キッチンにいる調理師・栄養士のスタッフも含め、子どもたちも職員も個人の名前で呼び合うのが日常です。ここでは、調理師・栄養士を「キッチンスタッフ」と表記しますが、園では名前で呼んでいるということを想像してみていただけると嬉しいです。)

キッチンは、ランチルームからよく見える場所にあります。
この部屋は、3・4・5歳児が毎日過ごし、食事をする場所。
子どもたちは、キッチンスタッフとおしゃべりすることもしばしばです。
給食の感想から、ふだん保育士には話さないようなことまで、内容はさまざま。「あの子がこんな面白いことを言ってたよ」とキッチンスタッフが保育士に伝えて、そこから子どもの活動に広がっていくこともあります。

「食育」という言葉はありますが、食材に触れたり、つくっている人の顔が見えて、その人を好きになって食に興味が沸いたり。そんな日常を大切にしています。

子どもたちの人気が高かった献立について、保護者から「レシピを教えて」というリクエストが届くことも。
そうしたときに渡せるレシピカードを少しずつ増やしています。
「ふきのとうのきんぴら」を子どもたちと一緒につくったときは、保護者にも伝えられたらと思い、つくり方や注意点をランチルームに掲示。実際に家でも作ってみたという声が聞かれるなど、食を通じたさまざまなつながりが生まれています。

子どもたちの「やりたい!」を一緒に

デザインや絵を描くことが好きな子どもをきっかけに、園で用意したペーパーのランチボックスにそれぞれが“自分の理想のお弁当”を描くことをしてみたり、5歳児クラスが行った「園庭ピクニック」では、園庭にレジャーシートやテーブルを出して、キッチンスタッフも一緒に職員や子どもたちとわいわい食べたり。

あるとき、卒園を控えた園児が「1年生になったら、園にクッキーを作りに行きたい」と言いました。キッチンスタッフに相談したところ、ぜひ! とのことで、晴れて卒園後に実現することに。
久しぶりに集まった子どもたち、はじめは緊張した様子がありましたが、一緒に作る過程でだんだんその緊張もほぐれ、「最近はこんなことが面白かったよ」なんて話もしてくれました。

こうした、子どもたちや保育士の「こんなことがしてみたい!」という思いにできるかぎり寄り添い、実現できる努力をしています。

五感を使って感じる

「五感使って感じとる」食との出会いは、とても大事にしている実践のひとつです。
幼児クラスの子どもたちが、身体の仕組みなどに関心を持つようになってきたことをきっかけに開催した「魚の会」。
地域の魚屋さんや、まちの保育園・こども園/まちの研究所の代表(子どもたちからは、理寿輝さんと呼ばれています)に魚をさばいてもらい観察しました。身近な人たちから話を聞き、調理前の食材に触れることで興味関心が湧いたようで、その日の給食で提供した魚はいつもよりよく食べていた、なんてこともありました。
また、0歳児の活動では「ゴーヤのゴツゴツはどんな感触だろう?」と触れてみたり。

また、食は文化的、歴史的要素も豊富です。冬には餅つきをしたり、せいろで蒸すと食材の香りがどう変わるかを体験したり。日本の行事や文化の意味をまずは職員で理解しながら、どんな視点で、どんなことに興味を持ってくれるかなと、子どもたちへの伝え方を日々探っています。

このように、キッチンスタッフと保育士との密なコミュニケーションから日々の活動が生まれています。

食を通じた、地域とのつながり

「まちの保育園 小竹向原」の横には、街の誰もが出入りできるベーカリーカフェ「まちのパーラー」があります。園では週に一度、「まちのパーラー」の焼きたてのパンを子どもたちが食べられるのも、この園らしい特徴です。

給食の食材はできる限り地域のお店から購入していて、お店の方と交流することも。前述の「魚の会」第2回では、園を飛び出して地域の魚屋さんに見学に行きました。子どもたちと地域との関わりを増やしていきたいという思いもあります。

地域で暮らす、保育園に通っていない子どもたちと保護者向けに「まちの試食会」を開くことも。離乳食を試食してもらいながら、保育士や栄養士、看護師が保護者の悩みに耳を傾けたり、気軽に会話を楽しんでもらう場です。

地域のなかで園ができること、その役割も意識しながら日々取り組んでいます。

各園の栄養士が横につながる「栄養士部会」

これまで紹介してきた、まちの保育園 小竹向原を含め、わたしたちの園は現在6園あります。(2024年10月時点)。
各園の栄養士、さらにアライアンス園の栄養士も参加し、数ヶ月に1度、各園の栄養士がお互いの状況を共有したり、相談や意見交換ができる「栄養士部会」を年に数回開催しています。

先日の部会では「食から保育を語ろう」というテーマのもと、各園が大切にしていることや取り組んでいることを対話しました。
参加した栄養士からはこんな声が聞かれました(一部抜粋)。

・「これがおいしかった」「これは食べづらかった」といった子どもたちの声を献立作成に反映している。

・食育の年間計画を立てるとき、保育者と話し合うことで子どもたちの様子を細かく追いかけ、それに合わせて内容を柔軟に変えたりも。その年やクラスによって、子どもたちの興味や様子はガラリと変わるので、保育者と定期的にしっかり話すことが大事だと実感している。

・職員全員と「食事についてどういうことを大切にしていきたいか」というテーマで対話をした。「考え方が違うと、子どもにメッセージをどう伝えたり、対応の仕方に相違が生まれてしまう」「食べ物を大切にしてほしい」「どういう過程で(料理が)完成するのか見てもらいたい」などの意見が出た。

・私たちの園のキッチンは園の中心に位置しているため、この特徴を最大限生かせるよう、キッチンの前に野菜のカケラを展示して子どもたちにじっくりと見てもらうなど、子どもたちが食に対して好奇心を持てるような取り組みを行っている。他園の栄養士のアドバイスに助けられている。展示の方法一つとっても、毎日がトライアンドエラーの連続。

・「私たちの作る姿勢もすごく大事」と、発する言葉だけではなく、食に向き合う気持ち、心構えすらも改めて考えさせられている。

・保育者から「つぶす」という動きを使ってできる食育のやり方の相談を受けたときには、発達の段階の確認をしながら食育活動を決めている。

・園のプランターで子ども達が野菜を育てている。実った野菜を子どもたちがキッチンに持ってきて、給食の食材として調理をすることがある。

対話の中で、どの園からもあがっていた「安全・安心」は第一にしつつ、保育・子ども・保育者とのコミュニケーションを大事に、丁寧に汲み取りながら、今の子どもたちに寄り添い「食」に携わっていることが伝わる会でした。

保育も、食も、子どもを真ん中に

まちの保育園・こども園では、子どもたちを真ん中に、キッチンスタッフをはじめとする職員、保護者、地域の人々が日々関わり支え合いながら生活をしています。食材を運んで来てくれるお米屋さん、八百屋さん、魚屋さん・・・地域のみなさんが子どもたちの食への関心を育てています。

そして、わたしたちの理念でもある「わけないことの豊かさ」を大事に、「食」と「保育」は一見別々の仕事に思えるけど、子どもたちを観察する、子どもたちの成長を支えるという点では共通することがたくさんある、と改めて感じています。

つい先日も、栄養士からこんな言葉がありました。
「食は、生きる教材であってほしいな」

これからも、子どもを真ん中に、食と保育。
それぞれの視点が互いに交じり合って、子どもたちの関心、探究心を育んでいけたらいいなと考えています。


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