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【イベントレポート】まちと宿ラボ #6 地域資源を活かしたこれからの観光

2週連続で開催となったまちと宿ラボ勉強会。今回は「地域の資源を活かしたこれからの観光とは?」というテーマのもと、京都と兵庫で宿を営む3名をゲストに招いて行われました。

チェックイン/それぞれが参加して知りたいことは?

まずは、会場参加とオンライン参加で集まった約30名の参加者同士で、お互いの自己紹介からスタートとなりました。宿泊施設で働いている方だけでなく、これから宿をオープンする予定の方や飲食店で働いている方など、様々な方がご参加されていました。

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ゲストトーク/地域資源を活かしたカタチとは?

京都と兵庫で宿や民泊を営んでいる3名のゲストに、それぞれの施設の紹介や行っている活動や、これから取り組んていきたい事業アイディアなどについてご紹介いただきました。

分散型民泊 Kamon Inn 番頭 沼田 竜也さん

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「暮らしを旅する体験を」というコンセプトのもと、分散型民泊Kamon Innは地域の交点になるような場所を目指しています。

分散型民泊とは、イタリアを起源とした「地域全体でお客さんをもてなす」という宿泊のあり方で、現在は京都に11件、東京に2件、鹿児島に1件の民泊を運営しています。

Kamon Innは、京都の東寺東にある物件から始まりました。もともとお豆腐屋さんだった店のオーナーが体調を崩して続けられなくなってしまったことをきっかけに相談があり、その場所を民泊としてオープンしました。オーナーご夫婦もホテルの清掃などをお手伝い頂き、一緒に運営しています。もとのお豆腐屋さんでは「はんにゃ豆腐」という名前の豆腐を作っていたそうで、それを引き継ぎ宿のロゴに、はんにゃが描かれています。

コロナ前は、宿を開けていればお客さんが入ってくるような状況でしたが、コロナで一転、いっさいインバウンドがなくなってしまいました。ただ、そのピンチをきっかけに「東寺エリアってどんな町だったっけ?」と考え直す機会になりました。

このエリアには世界遺産の東寺以外にも、映画の舞台になった銭湯や、夫婦で営む小さな飲食店、駄菓子屋さん、味のある酒場など魅力的な場所が数多くあります。昔と比べれば景色や街並みが違うところもありますが、その中でも変わらない魅力があるんじゃないかなと思って。それを、この場所に足を運んでもらったお客さんとどう繋ぐかを考えています。

地域の交点になるような場所を作るために「歩く・食べる・泊まる」の導線がスムーズにつながるような取り組みをしています。2021年8月には、東寺にある飲食店と一緒に夏フェスを開催しました。他にも地域のおさんぽMAPをつくったり、「泊まれる書道展」のようなイベントを開催したり。これからも、宿を通じてその地域をもっと好きになってもらえるような場所をつくっていきたいなと思います。

KAGANHOTEL プロデューサー 扇沢 友樹さん

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KAGAN HOTELがあるのは、丹波口駅の南西にある宝蔵町というエリア。ここは民家や工場に並んで中央卸売市場があり、朝3時から魚や果物、野菜が行き交うような町です。このエリアにあった、築45年の野菜卸の女子寮兼倉庫だった場所をリノベーションしてKAGAN HOTELが始まりました。

KAGAN HOTELは、単なる宿泊施設ではなくて「若手現代アーティストと世界を繋ぐ」ための施設でもあります。若手のアーティストが各地から集まり、ここで寝泊まりしながら地下のアトリエで作品を製作する。それを1Fと2Fのギャラリーに展示したり販売したりできるようになっています。もともとが、倉庫だっただけあって天井が高いので、結構大きな作品も展示することができます。

建物の設計的にも、アーティストたちが作品を外の世界に出していけるように導線をつくりました。実際に、第一期に滞在していたアーティストの作品が京都の有名なお店のエントランスに飾られたり。そうやって、この場所からどんどんと外の世界と繋がっていってほしいなと思います。

アーティストがKAGAN HOTELで個展をやるときには、その作家や作品をモチーフにしたドリンクを作っています。その作品がビジュアルだけではなく、味や匂いと一緒に記憶されるので、来てもらったお客さんにはおもしろいと言ってもらえることが多いですね。

週末と祝日にはCafeもオープンしていて、近所の八百屋さんから野菜を仕入れてカレーを提供しています。市場の中にあるアート施設ということで、食とからめた新しい体験をどんどん生み出していきたいです。


ゲストハウス萬家 代表 朴 徹雄さん

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私は韓国人なんですが、学生のころに体験した日韓交流がきっかけでずっと世界中の人が繋がって友だちになれるような場所を作りたいなと思っていました。最初は品川にあるゲストハウスで修行して、その間にどんな場所で宿をオープンしたいかを考えてました。

それで見つけたのが神戸市灘区のあたり。ここは、個人商店が多くて、外国人でも受け入れやすい気風がある。加えて、三宮が近くにあるが有名な観光地かといわれるとそうではない。この場所で、世界中の人が地域と繋がっていけるような場所をつくりたいなと思いました。

だけれど、私自身は東京に住んでいたので灘エリアに友達もいないし、物件のこともまったくわからない。そこで、まずは自分自身が地域と繋がっていくために喫茶店で働くことにしました。

最初は、半年ぐらいでいいかなと思ってたんですけれど、結局なんだかんだで2年くらい働きました。その合間に、町内会や婦人会、老人会に参加したり。次第に地域の人からも声をかけてもらって「あそこの物件空いてるで!」なんて教えてもらえるような関係性に発展していったんです。

いま、ゲストハウス萬家を運営している場所はその時に教えてもらったところです。もともと医院だったところを地域の人たちと一緒に解体して、改装して。毎週、ワークショップのようにして子どもたちとペンキ塗りをしたり家具を組み立てたりしてましたね。後半は、嬉しいことに子どもたちが集まりすぎて、一度ペンキを塗った壁にまたペンキを塗ったりしていました。

そういう経緯があるので、オープン前から地域の人たちとの関わりは深かったです。各地から来たお客さんには、この地域と自然と繋がってもらえるように、一緒に近くにある摩耶山に登ったり、地域のイベントに参加したり、ライブイベントもやったりしました。

ゲストハウスの中でもできるんですが、それじゃおもしろくないので近所の古本屋さんや居酒屋などで一緒にイベントを開催することもありました。観光地を点で旅するんじゃなくて、地域をまるごと面として体験してほしい。嬉しいのは、ゲストハウスだけ頑張ってもできないようなことを地域のみんなで協力してできたことでした。

Q&Aセッション

ボリューム満点のトークセッションが終わり、つづいてはQ&Aセッション。地域との繋がりに関連したいくつかの質問にゲストが答えました。

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Q1. 地域とのつながりを作るのと、宿を始めるのはどちらが先でしたか?

【ゲストハウス萬家 朴さん】
私の場合は、まったく知らない土地で友だちもいなかったので先に喫茶店で働いて地域の人と関係性を作るところから始めたんですね。その内、地域の人にも覚えてもらえるようになって。時間はかかりましたが、今ではそれが宿をやってく上でもよかったなと思います。

【Kamon Inn 沼田さん】
Kamon Innの場合は宿が先でしたね。母体の会社が東京で京都と接点もなかったので。なので、スタート時には地域の方に住民説明会を開いたりして、徐々に関係性を作っていきました。

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【KAGANHOTEL 扇沢さん】
KAGANHOTELの場合は以前から近所でシェアハウスを運営していたので、地域の方との繋がりはもともとありましたね。その時に市場の方たちとも仲良くなっていたので、KAGANHOTELをオープンするときはスムーズでした。

Q2. 最初に地域の方と関わりを作る上で難しかったことはありますか?

【Kamon Inn 沼田さん】
Kamon Innは複数の場所で民泊を運営しているので、エリアによっては民泊への風当たりが強いところもありましたね。法的にも運営していけるように準備をしつつ、地域住民のひとたちと直接のコミュニケーションをとって、少しずつ良好な関係を築いていきました。

Q3. 地域との接点がない場所に宿を立てるということについてどう思いますか?

【ゲストハウス萬家 朴さん】
「地域に根差した宿をつくる」のであれば、先に建物ができてしまうと後から関係性をつくるのは難しいかなと思いますね。信頼関係が深くなってくると地域の方が情報提供したり協力してくれたりするので、そういう意味でも先に関係性を築くとやりやすいかなと思います。

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フリートークセッション

Q&Aセッションが終わり、参加者を交えてのフリートークセッションでは「地域資源を活かした観光」というテーマ以外にも、様々な話題が話し合われました。

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今回、お話いただいた3名の方は宿のスタイルもそれぞれ異なります。しかし、その中でも地域の方と地道に時間をかけて関係性を築いていったというプロセスは同じでした。また、地域資源を活かしてそのエリア全体を盛り上げていくのであれば、ある程度じっくりと地域の方々と膝を突き合わせて話をする時間が必要なのかもしれません。

今回もたくさんの方にご参加いただき、本当にありがとうございました。

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