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食と韓国語・翻訳ノート3:급식(給食)

いわゆるコロナ禍で、大学は完全にオンライン授業だけど、中学校や高校ではかなり対面授業も復活しているらしい。毎年、地域の高校の日本語の先生に、日本語の朗読の大会の審査をお願いされている。今年はどうかなと思っていたら、なんと今年もやるというから、鎮海という街の女子高に行ってきた。

こんなご時世でも日本語を学ぶ高校生はけっこういる。上手な子は堂々と、微妙な子は不安げに、それぞれ緊張しながら発表する。いつも通りのこと。違うのは、リアル日本人おじさん先生に、質問がありますと駆けよってきた子が、コリトゥギ(거리 두기、ソーシャル・ディスタンス)だと言われて制止されること。2メートルむこうから、彼女は日本の声優が大好きなこと、毎日ネットでその声優のラジオを聞いていること、そのラジオで話題になる、日本の高校の「部活」というものに憧れていて、自分も一度でいいから部活をやってみたいこと、を伝えてきた。いろいろ調べてみるといい、僕も高校生どうしの交流について調べてみるよ、それに大学に行けば機会はたくさんある、ただし。

「今の状況が、もう少しよくなったらね。」

ああ、この言葉を3月頃から言い続けている気がする。大阪に行きたいです。留学したいです。家族に会いたいです。「いつかできるよ」。来月には。夏までには。今年中には。来年はさすがに。約束はどんどん延ばされていく。

それから、いつも通りの給食(급식)の風景が、いつもとかなり違っていたこと。話には聞いていたし、ネットニュースで写真も見たことがあるけど、この巨大な「一蘭」をこの目で見たときは少しうろたえた。

韓国の給食は、中学でも高校でも、教室で食べることはなく、たいていは食堂で食べる。給食当番もいない。ステンレスのプレートを持っていき、そこにごはんとおかずとスープをもらう。この日は骨付き肉の入ったカムジャタン。かなりうまい。プレート自体に囲いやくぼみがあって、別途に器は必要ない。軍隊の食事も、大学の学食もだいたいこんな感じ。軍隊よりはおいしいかな。軍隊も最近はずいぶんメシがよくなっているらしいけど。

それを、この「一蘭」状態の自分の席にもっていく。席には「マスクがけ」という名の洗濯バサミがあって、そこに自分のマスクをとってかける。見ていると、みんな仕切りをこえてきょろきょろしながら、友達としゃべりながら食べている。そりゃそうだよね。

どこの国でも、変化に適応しようとするのは同じ。非常時がいまは常時になりつつある。今やっていること、やりたいことをあきらめないためには、新しいやり方でやるしかない。働くことも、学ぶことも、遊ぶことも、食べることも。



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