「愛が地球を救います(ただし屁が出ます)」

大パルコ人④マジロックオペラ「愛が地球を救います(ただし屁が出ます)」、東京千秋楽を観劇。宮藤官九郎の舞台は、去年10月同じくパルコ劇場で行われた、ねずみの三銃士 第4回企画公演「獣道一直線!!!」以来。(こちらはPARCO劇場オープニング・シリーズだった、そうねもうPARCO劇場ができてから1年経つのね)

そもそも演劇の感想書く人って少なくないですか

私は一人で観劇することが多いので、観劇後はなんとなく気持ちを分かち合いたくなってSNS に書き込まれる感想を探すのだけど、だいたい高評価なものしか引っかからないのは何故だろう。そもそも舞台の感想って、映画と違って数自体が少なめ。映画より高額なチケットを前もって入手する必要があるなどハードルが高い分、期待外れだったら酷評も多くなりそうなものだけど、そもそも舞台クラスタは俳優ファンが多くて、内容やその他を見る目は甘めなのか…などと考えてしまうのは偏見か。私の探し方が悪いのか。

面白かったけど、全力でくすぐられたらそりゃ笑うよねみたいな気持ち

というわけで、今回の舞台も楽しみにして観に行き、実際たくさん笑った。のんのテンポや魅力的な空気のまとい方は唯一無二だし(ただ舞台ではあの発声だと聞き取りにくく、歌声だとなおさら歌詞がわからなくなるのは残念)、村上虹郎の演技や歌の上手さや舞台での声の響きも素晴らしく、三宅弘城の側転の美しさとドラムさばきもさすが、荒川良々の美脚に見とれたりして、YOUNG DAISの演技を見たのは広瀬奈々子監督の「夜明け」以来だけどやはり声が良いなぁ、藤井隆の歌は楽しいなぁなどと、見どころはたくさんあったし、観客参加型の部分も楽しかった(観客みんなで同時に屁をこく演出があるんですよ)、全体的な満足感は「こんなもんでいいのかぁ…」という、なんだかもやもやした思いだった。
だってその面白さって、これだけのキャストを揃えた力業によるものでしょ、そりゃあ面白くなるでしょという気持ち。「この人にこれ言わせたら笑うでしょ」みたいな。うん、笑うけど。

「書いたのクドカンだから」の持つ力

舞台は2055年、戦争で人口が100分の1に減った東京・渋谷、主人公はテレパシーが使える女性(のん)と未来を予知できる青年(村上虹郎)。二人にはそれぞれ、超能力を使うと「変な顔になる&おじさんの声になる」、「屁が出る」という悩みがある。「愛は地球を救います」とタイトルにあるのだが、結局のところ今回のテーマがなんだかわからん。多様性とかマイノリティとか若者の自殺とか、社会課題やイマドキな言葉がたくさん出てくるのだが、扱いが粗略。きちんと勉強している人がその知識をもとに皮肉ったりブラックジョークにしたりしているというよりも、上っ面な印象なのだ。それを言っちゃあおしまいだと言われるかもしれない、ポリコネ棒振りかざすなと言われてしまうかもしれない。でも、やっぱり私は心から笑えない箇所がたくさんあった。自殺する若者が急増する事象を笑いにするのは、さすがにこのご時世どうなのか。「マイノリティの権利を訴えすぎて、"普通"の人が生きづらい」というのを堂々と打ち出してしまうのは、人権を理解していないことの極みではないのか。
上演時間2時間45分(一幕90分、休憩20分、二幕55分)をかけたわりに、のんべんだらりとしていた印象で、なんだかちょっと残念。もうちょっと整理できなかったものか、精査できなかったものか。アドリブを含む「遊び」の部分が生きるのは、根本の線がきちんと見えるからであって、広げた風呂敷をそのまま踏み荒らしていたら、例えそれがキレのよいステップであっても目を惹かれない。クドカン節なのは確かだが、脚本が散漫に感じたのは私だけなのだろうか…。

あんまり深く考えずに、ウケを狙ったセリフの数々、くだらないことで笑おうよこんなご時世だしさ、という軽い気持ちで観に行けたら良かったのだと思う。
もちろん、千秋楽だったので、スタオベでした。うーん、もや。


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