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静謐


石灰岩と曇り空の
曖昧な境界は
水彩筆によって
暈されて滲む

鈍色の水辺に
揺れる葦のさきが
冷たく柔い風を受け
小刻みに震えた

静かに流れる水が
ただよう躰の白い肌を
溶かすように
やさしく包みこむ

水面を透かし見る空は
遠く 広く
のばした腕を
雫が伝い落ちた

薄曇りが映る川は
櫃を海へと運ぶが
ゆるやかな流れは
午睡のように物憂く

聖櫃に納められた
乳白色の蕾は
今か今かと
咲く頃を夢見る

#詩 #文学 #哲学 #定型詩 #アンニュイ

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