見出し画像

漫画語りー番外. ありがとう『進撃の巨人』!〜まるで戦争映画のようだった〜


こんにちは。

本日6月9日、『進撃の巨人』のコミックス最終の34巻が発売され、漫画としては本当に完結を迎えてしまいました。。。

ファンとしてはやっぱり寂しさを感じざるをえないのですが、とにかく


諫山先生、「進撃の巨人」完結おめでとうございます!
そして、漫画界において有名雑誌や人気漫画に対する革命みたいな現象を見せてくださってありがとうございました!(前にも書きましたが、それはまるで2007年に小さい事務所所属のサンドウィッチマンが並み居る芸人を押しのけてM1グランプリ優勝を獲得し、成り上がっていく様を見ているようでした。)


「進撃の巨人」との出会いと反省


ぼくが「進撃の巨人」を初めて知ったのは高校2年生でクラスのあまり親しくないグループが面白いと話題にしてた時でした。一応お試し冊子の1~2話を読んでみましたが、正直、早々と話題に上がってた連載初期の頃は、グロくて残酷な描写が売りの単なるダークファンタジー系としか受け取らず、天邪鬼的にそのまま放っていました。ほんとすいません。。。

でも、数年経って実際にまとめて読んでみると、話や設定の面白さに見事にハマりました。しかも話が進むごとに歴史と世界観が浮き彫りになるにつれて、初期には予想しなかったのに人間と戦争と平和についてこんなにも哲学的に考えさせられるとは思いませんでした。(余談ですが、以前テレビ番組で作家の高橋源一郎氏が「諫山さんは一つは神話に足を置いてるけど、もう一つは現実に足を置いて描いている」とおっしゃってましたが、このバランス感覚の絶妙さはまさしくその通りだと思います。)


ちなみに、2021年のとあるテレビ番組で諫山先生はこのようなメッセージを送ってます。

このマンガの試みは冒頭、敵と被害者を単純化して見せ、読者に主人公の暴力を正当化できるよう読ませることでした。そして主人公側に感情移入したまま主人公が加害者として現れる。そこで読者によって感想が分かれるものを描くことが理想でした。

つまり、ぼくも先生の狙いにまんまとハマってたんですね。。。

でも、それだけ諫山先生が読者を裏切りつつ満足させるために必死にストーリーを考えてペンを走らせた賜物なのです。ネタバレはあえて伏せますが、物語は終盤になるほど目を見張るほどの盛り上がりを見せてくれます。最終話も個人的には素晴らしかったと思います。



まるで戦争映画だった


で、最終話を読んで1話から改めて思い返してみると、「進撃の巨人」はまるで全話通して一本の戦争映画を観ているようだったなぁ、としみじみ思います。まぁ、物語に軍隊組織は存在するし、後半は世界規模の戦闘に発展するのでそう感じるのは当然なのかもしれませんが、ぼくが一番そう感じた理由は漫画の中で出てくる生々しい暴力的表現です。

「進撃の巨人」では対巨人だけでなく、同じ普通の人間同士の戦闘でも大勢の人が無惨に死んでいく描写が多々あります。しかも死に方も様々で、あっけなく死んだり、「為す術なく」とか「仕方がない」と諦めて死んだり、死を拒絶しながら死んだり、時には玉砕覚悟で戦いに行って死んだりする場面があります。

クライマックスの「地ならし」では、人が死んでいく場面が特に顕著に描かれてるんですが、諫山先生のそういう描写を見ると、戦争映画のあまりにリアルで残酷な映像表現を観た時の感覚、つまり厳しい現実を突きつけられるような感覚をぼくは得ます。(ちなみに、僕自身観た数はそんなに多くないですが、「シンドラーのリスト」「プライベートライアン」「戦場のピアニスト」など侵略や戦場のリアルな再現に軽くショックを受けた経験があります。)



では、同じく残酷表現のあるホラー、バイオレンス映画やグロ系の作品と比べて戦争モノは何が違うのか?それはぼくが思うに、戦争モノにはホラーやグロ系作品よりも死に対する恐怖以外の要素が含まれていることじゃないかなぁ、と思います。例えば、殺し合うことの葛藤や、愛国心や正義といった信念や、勝利への希望などです。

だいたいの戦争映画では隊員たちが疲労や虚無感の中でつい弱音を吐露する場面やリーダーの鼓舞により希望も持ちながら決死に戦う場面がよく出てきますが、「進撃の巨人」も同様に、登場人物が理不尽な環境下に対して弱音や葛藤を吐き出ますし、最終的には優秀なリーダーの指揮、または自分の信念によって覚悟して戦います。諫山先生はこういう極限の状態における人間の感情の表現がほんと上手いと思います。

<弱音>

<覚悟の決意>



こうした要素が「進撃の巨人」を他のグロ系作品と一線を画している要因かなと思うと同時に、このハッピーじゃないけど負のリアルな部分とそれでもハッピーに向かって抗おうとする部分が、多くの読者に何か強く訴えかけてくるもの、何か人間にとって本質的なものを感じさせてるんじゃないかなぁ、と思います。。だから、内容が多少難しくても、考えさせられても多くの人が「進撃の巨人」に無性に惹きつけられてしまうんでしょうね。。。


おわりに


また忘れてはならないのが、弱冠19歳の諫山先生の可能性を信じて抜擢した編集者の川窪さんです。優秀な陰の立役者だと思います。この2人がそれぞれデビュー同士で出会ったのは奇跡だと思います。川窪さん、初回で漫画読みたちに諫山先生の才能を問いてましたが、確かに本物でしたよ!

「進撃の巨人」が終わった後、諫山先生は漫画家独特の生活を続けていくのに自信を持てないらしく、次の作品を描くか描かないのかわからないそうです。ということで、とりあえずは休息して頂いて、また本当に描きたくなった時に漫画を描き始めるのもいいも思います。

次回作では先生に「進撃の巨人」のハードルをあまり抱えこんでほしくないですが、ファンの方々もその次回作に「進撃の巨人」並みの期待をするのは控えたほうがいいでしょう。その方がたぶん失望しない分幸せです。個人的には、巷で言われてる「諫山線」ならぬ諫山先生のあの独特なタッチの絵とおぞましい描写を是非また見たいので、いつまでもお待ちしてます。ゆっくりじっくりと再スタートして頂ければと願ってます。


最後に、諫山先生、川窪さん、そしてエレン、11年半ほんとにありがとうございました!!

画像1

※上の画像は私のファンアート作品です。




ー以下は、最終巻を読んでのちょっとした感想です(微ネタバレかも)ー

・後半の怒涛の勢いのまま最後まで駆け抜けてくれた
・お馴染みの不意にくるふざけたコメディ演出に今回も笑ったw
・一番好きなキャラを生き残らせてくれて感謝!
・おまけ漫画のスクールカーストのオチは個人的に好きw



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?