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公立小学校の「トンデモ」見聞録(3)

(2012年5月16日「松ちゃんの教室」ブログ記事再掲)

念のため断わっておくが、僕は公立校が大好きである。

自分が公立出身ということもあるが、何より生まれも育ちも性別も、あるいは国籍も異なる子どもたちが、同じ教室で学ぶことにこそ、学校教育の最大の意義があると考えるからである。公立の現場で日々奮闘する先生方にも敬意を表したい。

その上で、そんな愛すべき公立校が様変わりしていく現状に、深い憂慮を覚えるものである。

さてお次は、入学早々、文科相じきじきに全児童へ一斉配布したお手紙を紹介しておこう。最近の大臣は、学校を通したこういう通知をけっこう出すらしい。以下、全文を引用。

新学期を迎えるみなさんへ

 みなさん、入学、進級おめでとうございます。
 今年もまた、勉強にスポーツに力を発揮し、新しいお友達をたくさん作ってください。

 日本を襲った大地震と津波から、一年がたちました。
 被害にあった地域には、まだたくさんの、不自由な生活をしている方たちがいます。学校が壊れ、まだきちんとした教室で授業を受けられない子どもたちもいます。

 この一年間、全国のみなさんは、募金をしたり、手紙を書いたり、いろいろな形で、被害にあわれた方たちを励ましてきました。
 なによりも、みなさんの笑顔が、私たち大人に、未来への希望を教えてくれました
 本当にありがとう。
 そして、どうか、そのような、他人を思う気持ちを忘れずに、また新しい一年を過ごしてください。

 日本は自然災害の多い国です。
 津波、地震だけではなく、私の生まれた和歌山県も、昨年、水害で大きな被害を受けました。
 自然は、人間に厳しい試練を課すときがあります。しかし、私たち人間は、自然からの恵みを受けて生きていることも間違いありません。
 どうか、たくさん勉強をして、自然と共に生きる知恵を学んでください。

 今回の震災では、外国からもたくさんの手助けや励ましがありました。
 日本と日本人は、ひとりぼっちの存在ではありません。
 みなさんは、大人になってから、助けてくれた外国の方たちに、きちんとお礼を言える人間になってください。そして困っている人がいたら、生まれた国や民族に関係なく、手をさしのべられる人になってください。

 地震や津波、原子力発電所の事故に命がけで立ち向かう、消防士さんや警察官、自衛官の人たちの姿を、みなさんはテレビを通してみたと思います。そして何より、子どもたちを命がけで守った、たくさんの先生方のことを忘れないでください。
 みなさんも、一生懸命勉強し、スポーツで身体を鍛え、芸術に触れて優しい心を育み、そして他人のために働ける人になってください。

 なんだか、お願いばかりになってしまいました。
 しかし、これが私のいまの気持ちです。日本の未来は、みなさんにかかっているのです。
 私も、全国の学校の先生と一緒に、日本中のすべての子どもたちが笑顔で登校できるように、全力でみなさんを支えます。
 みなさんの明るい笑顔で、もっともっと日本を元気にしてください

文部科学大臣  平野 博文

*太字は引用者
平野博文氏

ここで、いちいち言葉の端々をあげつらって揚げ足とりをするつもりはない。

ただ、一つだけ言わせていただくなら、「日本の未来」は、差し当たって政治家のみなさんにかかっている。「日本を元気に」するのは、子どもたちの笑顔である前に僕たち大人、なかでもあなたがた政治家の役割である。そこは間違えないで(ごまかさないで)いただきたい。

自己満で文書を配布する(税金で)のも、「センチ」にひたるのも自由だが、まずは優先してやるべきことをやっていただきたい。子どもたちにあつかましくも「お願い」などするのは、自らの責任を果たしてからにしていただきたい。

はっきりしていることは、子どもたちは大臣なんぞに言われるまでもなく、勉強にスポーツに力を発揮し、新しい友達を作り、他人のために何ができるかを考えようとしている。

そのことに、この文章を書いた大臣自身、あるいは文部官僚の方々は気付いているのだろうか。

(つづく)


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