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「かたくりこ」の効用(総督)

 会いたかったよ、読者の諸君。昨年クリスマスの「作戦会議」をご覧いただいた方はすでにご存じだろうが、我らがキョウカイジャーの指揮をとる〝総督〟である。以後、お見知りおきを。

 さて。この1年、キョウカイジャーを陰で支えてくれた諸君には、この場を借りて御礼申し上げたい。彼らが進むのは艱難の多いいばらの道。行く手を阻むのは悪の秘密結社か、はたまた宇宙怪獣か……。いずれにしても、「宣隊」ヒーローにとって困難を極める時代が到来しつつあることは、疑いのない事実だ。今後とも応援よろしく頼む。

 今日は、「かたくりこ」問題について物申したい。無論、料理の話ではない。「片方」の親だけが「クリスチャン」の家庭で育った「子ども」を指して、一部関係者の間でそう呼んでいる。ちなみに、1人だけ「クリ」のいる家庭を「モンブラン」だとか、「クリ」とそれ以外の家族が複数混じる家庭を「くりご飯」などと形容する習慣もあるらしい。

 世間と同様、「クリスチャン」の家庭も多様化している。両親が「クリ」のいわゆる「クリスチャンホーム」、父だけが「クリ」、母だけが「クリ」(おそらく多数派)、あるいは両親とも「クリ」ではないが、預けられた祖父母と一緒に教会に通っている場合など。

 そこで考えたいのが、「かたくり」夫婦の存在意義である。ひと回り上の世代からすれば、「結婚という人生の重大な岐路において、キリスト教の信仰を最優先にしないのはいかがなものか」と眉をひそめる向きもあるかもしれない。教会によっては「ノンクリ」との交際を推奨せず、牧師に相談したら別れさせられたという話さえある。

 確かに、互いの信仰が同じである方が何かと都合は良い。冠婚葬祭、日曜日の外出、親族との関係、お墓のことなど、もめる要素は減るかもしれない。しかし、「クリ」同士の2人だからこそ迎えてしまった〝修羅場〟の数々も目撃されている。同じ信仰を持っているからこそ、譲れない部分が出てくるという事態も考えられる。

 趣味嗜好、世代や出身地が近いからと言って相性が合うわけではない。戸籍や苗字を同じにしたからと言って、自然に愛情が深まるわけでもない。信仰も同列とは言えないが、少なくとも結婚前に夫婦そろって受洗していることが「幸せな家庭」の絶対条件ではないはずである。

 今後、1%未満の信徒が信徒同士のみで夫婦生活を営もうとすれば、選択肢はおのずと狭くならざるを得ない。むしろ、宣教という側面で「かたくりこ」が持つ積極的な可能性に注目したい。

 異なる価値観を持ちながら、互いに尊敬し合う両親の姿を見て育った子ども。乗り越えるべき課題は多いが、それは「クリスチャンホーム」とて同じこと。隔ての壁に囲まれた現代社会に、一種の〝とろみ〟をきかせたカンフル剤として、「かたくりこ」の効用に期待したい。

(2015年3月21日付「キリスト新聞」掲載)

【総督】名前不明 キョウカイジャーを統括する司令塔。「神の国」建設に寄与するため、あらゆる予定調和を打ち壊し、業界の常識を覆そうと目論む野心家。地上では仮の姿でキリスト教メディアに携わる。サブカル好きの中二病。炎上体質。武器:督促メール/必殺技:連投ツイート/弱点:カマドウマ(便所コオロギ)。

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