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#002 小説よりも映画をお手本に

拝啓 映画好きの方へ


絵コンテを書くように、小説を書いてみてください。
わたしはこのことに気づいて、とても楽チンになりました。

以下は、わたしの、ある時代小説作品の冒頭シーンです。


先程までの青空はとつとして墨色すみいろわり、重そうな積乱雲せきらんうんかたまり谷底たにぞこ宿場町しゅくばまちおおいかぶさった。陽射しで乾ききった板葺いたぶき屋根に、ぽとっ。ぽとっ。ぼとと。ぼとと。雨粒が当たり始めるやいなや、ざーっ。激しく降り出してきた。
街道沿かいどうぞいに並びつらなる旅籠はたごや商店。そちこちの軒下のきしたには、宿民しゅくみんやら旅人たちが所在しょざいなく雨止あまやみを待っていた。皆しばらくの我慢で雨が上がることを心得ている。夏のさるこく(午後四時)あたりの雨は大抵そういうもので、上がればまた強い陽射しが戻ってくる。各々おのおのが空をうかがいながら、退屈なときをやり過ごそうとしていた。
延享えんきょう四年(一七四七年)の文月ふづき朔日ついたち(七月一日)。福島宿ふくしまじゅくは、驟雨しゅううっていた。


◎遠景(空が暗くなる宿場町)
◎近景(屋根のアップ/雨粒が当たり始めてすぐに強くなる)
◎シーンの説明(夕立時の宿場町・雨宿り中の人々の描写)
◎テロップ(日付/いつの出来事なのかの説明)


という感じで、
絵コンテ(カット割りとカメラワーク指示)のように書くと、
サクサクと小説を書き進められるのです。
サクサクは言い過ぎですが、悩み苦しむ時間は減少します。

映画好きの方なら、
まるで自分が映画監督になって、1本の映画を制作するような、
ワクワクした気分で小説を書き進められるのでは? と思います。

わたしはこのことを、東京映像芸術学院の学院長から学びました。
当時20歳のわたしは、映像作家を志しており、
東京映像芸術学院への入学を希望していました。
体験入学での面接の際、学院長はこうおっしゃってくださいました。
「君は映画よりも小説を書いた方がいい」と。
好きな映画とその理由についての作文課題で、
わたしは「高校大パニック(石井いしい 聰亙そうご 監督)」をげて、
目でリズムを感じられる映画だからと説明。
その説明に納得してくださった学院長が、
「君には映画のような小説を書ける人になってほしい」と。

わたしは入学することなく、大学生活に戻りましたが、
映画のような小説とは? を考え続けました。
そしてあるとき、

映画のような小説=映画を観ているような感覚で読める小説

このことに気づいたのです。
絵コンテ(カット割りとカメラワーク指示)のように小説を書く。
書いてみてビックリ。実に楽しいのです。
映画を作っているように、小説を書き進められるのです。

これから小説を書こうと思っている方、
なかんずく映画好きの方には、超オススメの書き方です。


★映画を観ているような感覚で読める小説★
矢野やの てつ 著「折紙宇宙船の伝説」


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