小説|赤いバトン[改訂版]|第7話 尾張が始まり(語り:ユカリ)
妹リカコから、
「ウチらの地元の中学校も、このエピソードを参考にしたみたいやに」
そう聞かされて、リカコよろしく「おったまげー!」だった。
「ラジオで紹介されたことがあるみたいやに」とリカコ。
「どういうことなん?」とわたし。
「あるラジオ番組に、赤いバトンの現物が届いたらしくて」
「じゃあ、ウチらの地元がパクったってことなん?」
「パクったじゃなくて、参考にしたみたい、が正解やわ」とリカコ。
「放送後に、クミコ先生が勤めていたその中学校に電話があって」
「その電話って、ウチらの地元の中学校からなん?」とわたし。
「そうらしい。それでクミコ先生にも連絡が来て」
「クミコ先生が直接電話でいろいろ説明したみたいやに」
わたしたちの地元の[ありがとう]が印刷された卒業証書を入れる赤い筒。
その[ありがとうの赤いバトン]のルーツ、発祥、本当の始まりが、はっきり分かった。
旦那に[ありがとうの赤いバトン]のルーツを話すと、
「ん? ごめん。どういうこと? もう一度説明して」と聞き直された。
焦るあまりに行きつ戻りつ話したせいで、上手く伝わらなかったようだ。
なので、二回目は、リカコたち赤ミソじるの、もとい、赤ミソジーズ三人の学生時代、児童館で出会ったコウスケくんの[赤い折り紙のバトン]から、順を追って丁寧に話した。
説明し終えると「……スゴイ。マジで偶然の大行列」と旦那。
「てか、ご縁てさぁ。つながってるんだね」と感心していた。
わたしは「バトンの始まりが愛知県。……なんか気づかん?」と訊ねた。
「ん? どういうこと?」と旦那。
「愛知県が始まり。……つまり、尾張が始まりってこと」
「尾張と終わりで、まさかのダジャレ?」
「そう。終わりが始まり」
「コピーライターって、マジでダジャレ好きだよね」
「うん。でも、なんか意味深なフレーズじゃない?」
「確かに。……てか、小説とかのタイトルっぽいかも」と旦那。
わたしも「ありそう、ありそう」と言って同意した。
「でもさぁ。美術教師でコウサク先生は、見事なダジャレだよね」と旦那。
「いやいや、わたしのコアラ&ユーカリに比べたら、全然まだまだ」
「そうだね。……なんか、ゴメン。オレのせいのダジャレネーム」
そう言って旦那は、クスクス笑った。
「それで、ペンネームは決まったの?」と旦那。
「それがさ。候補を挙げてリカコに意見を訊いたん」とわたし。
「それで?」
「全ボツ」
「あらら」と旦那。
妹を持ち上げる訳ではないが、リカコのセンスはいい。曲がりなりにもコピーライターを生業にしているわたしが分析すると、何かを表現する時の言葉選び&組み合わせ方がバツグンである。論理的な思考で導き出す訳ではなく、直感でやってのける天才。
以前わたしがリカコに、
「赤ミソジーズって、どうやって考えたん?」と訊ねたら、
「コトノがミソジーズって言うたから、赤を足しただけ」と答えた。
「赤味噌+三十路+複数で、赤ミソジーズって上手いやん」とわたし。
「コトノの案に乗っかっただけ。そもそもなんも考えてへん」とリカコ。
でも、リカコはつづけて言った。
しかも無自覚のまま、コピーワークにとって大切なことを言った。
「けど、わたしが思っとるのは、おもろいか、おもんないか」
「それと、らしいか、らしくないか。上手く説明できやんけど」
その時わたしは、リカコはやっぱ天才かも知れないと思った。赤ミソジーズというネーミングは、ちょうどダサくて面白いし、庶民的な三人らしさも表現できている。
だからわたしは、ペンネームの案をリカコに訊いた。
そして全ボツを食らった。
旦那に「ボツの理由は、おねえらしないからだって」と言うと、リカコ同様、旦那も、
「やっぱりカタカナで、コアラユカリかもね」と薦めてきた。
わたしは「そうかも。でも、もっぺん考える」と答えた。
~ 第8話 結婚三十五周年(語り:コウサク)に、つづく ~
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