【読書感想】グアテマラの弟
2011年2月に初版出版された本なのだが、どこで知ったのか、なぜ読もうとしたのか思い出せない。
出版から13年あまり経った先月、何かの経緯でこの本を知り、図書館で予約をした。
グアテマラへ行ったことはないが、同じ南米大陸のチリ共和国には2週間旅行したことがある。
その経験とボリビアに移民した親戚がいる縁も重なり、比較的南米に親しみを感じている。
はいりさんは実弟がグアテマラに住んでおられるそうで、この本は彼の家を訪ねた半月間のエッセイだ。
はいりさんの見て感じたグアテマラの人々や暮らしが、丁寧に綴られている。
小難しくなく、回りくどくもない文章は脳内を一瞬で「かもめ食堂ーグアテマラ編ー」の世界へ連れて行ってくれた。
はいりさんの文章はとても脳内で映像化しやすい。
触れ合った人々をありのままに、やさしく綴るものだから、私も見知らぬ異国で暮らす彼らに対して自然と親しみを感じていった。
本の後半に出てくる少年と、はいりさんのやり取りがとても印象的で、この本を映画化してほしい!と思わずにいられない。
やり取りについて、軽くご紹介する。
グアテマラの母語はスペイン語だ。
少年はスペイン語しか話せず、はいりさんはスペイン語がほとんど話せない。
最初はよそよそしく過ごしていたふたりだが、ある日、二人だけで会話する局面に立たされる。
当然ながらお互い言葉で通じ合えず沈黙する。
そこで少年が動く。
立ち上がって本棚に行き、自分は西和辞典、はいりさんに和西辞典を手渡したのだ。
2冊の辞書に助けられてふたりの間に会話が生まれていく。
辞書を持ってくる少年の機転が素晴らしい。
そして、彼と話すはいりさんが自然体で微笑ましい。大人ぶらないし、素直に動揺もする。
はいりさんの目線で綴られる彼の姿がかわいくて、かわいくて。
こちらにまで彼女の少年に対する愛情が伝わってくる。
この本が映画化されたらいいのに、と一層強く思った。
少年が拙い日本語で、はいりさんにサプライズするシーンは一気に熱いものが押し寄せてきた。
共通言語を持たなくとも、辞書を駆使してお互いを知ることができたこと、すっかり仲良しになったふたりの姿がとても美しかった。
最後の最後、巻末の解説をはいりさんの弟が綴っている所がまた泣かす。
ずっとはいりさん目線で綴られてきたお話しは、弟さんの目線で見た、グアテマラで過ごす彼女の姿で締めくくられる。
思いがけず舞い込んできたこの本を、読むことができて幸運だったと思う。
明日からは水木しげるさんの「幸福になるメキシコ」を読む。
気づかぬうちに私の中で、南米ブームが始まっているようだ。
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