見出し画像

マノンの不思議 マカピーの日々 #1335

マカピーです。
どうやらマノンが来ると商売繁盛するらしいのです。

マノンは菓子パンを自転車で売り歩くベンダーの一人です。

マカピーが気付いたのは2つのハマナスレストランの間を往復している際に「パン売り」のジイちゃんがフラフラしながら道路を行くの見ていたからです。

彼が街から10キロほど離れた場所に一人で住んでいるのが分かったのは2号店がオープンしたある日、マカピーの眼の前を自転車を押して通過するマノンを見かけたからで、それをハナさんに伝えると彼に声を掛け分かったのでした。

それから、彼が来るたびにパンを買って話をし飲み物を提供する関係が続いていました。

水平を保つって大変

マカピーが日本に帰国している間に、ハナさんから「マノンが来る日はお客がたくさん来るのよ」と教えてくれました。

それは、不思議なジンクスのようでした。

朝からお客が全く来ない日にも、彼が来るとその後にどっと人が押し寄せてきた晩もあったそうです。

ちょうどシェフのオトを辞めさせた後で、ランしかいなかった日で相当忙しかったようです。

マカピーが日本から戻って来た日に、ハナさんが「そうだ、今日はマノンのところへ行くはずだったわ」と言うのです。

マノンの土地にヤシの木があるから、その実を買い取ってハマナスレストランで売るという事だったのです。

マノンの家というのは、住宅地のはずれにある小さな丘を越えた向こうの3エーカーでした。

ムム、オンドリが家の中に来たぞ

ところが、舗装路ではない道路はぬかるんで車で登ることができません。

アブラヤシ畑のはずれまで出迎えてくれたマノンの後を付いて彼の家まで行くことにしましたが、ハナさんもマカピーもサンダル履きだったのでぬかるにみ足を取られて歩行困難でした。

まるで10分ほど泥道を歩くと彼の家があり、沢山の犬が吠えかかりました。

彼が行商に出かけている間に留守番させているのでした。

そうです、彼はムスリム(回教徒)ではありません。

このヤシの実を収穫するのね

出身はフィリピンのミンダナオ島のサンボアンガのビサヤ(族)でした。

そしてハナさんがマノンと仲良くなったのはお互いにビサヤ語でしゃべれるからでした。

マノンが先頭になってバナナ畑のなかのカラマンシ(スダチのようなミカンの木)やヤシの場所そして隣の家との境界を教えてくれますが、傾斜地でサンダルから足が抜け落ちないように歩くのが必至でした。

実はマノンはこの土地を売って、その金を持ってサンボアンガに帰るつもりだというのです。

え、ハナさんは今度は土地を買うつもりなのかしら?

「ほら、大工のタンさん家族をここに住まわせて農園を管理させるのよ。いい考えでしょう。そうしたら店に出せる果物をここで調達できるわよ」

うーん、どうかしらね。

そもそもマノンの土地というのは、7年前に近くの合板工場に勤めていたマノンや他のスタッフにオーナーが周辺の土地を分け与えたのが始まりでした。

入植者?はそれぞれアブラヤシを植えたり畑をつくったりしていたようですが、マノンは畑をつくるかたわらでパンの行商をして暮らしていました。

朝3時くらいからパンを仕入れ、周辺の町を売り歩くのですがさすがに78歳では体力が続かなくなったので引退してフィリピンに戻りたいのだそうです。

そこで、マノンはハナさんに買い取ってほしいと言っているのだそうです。

一人で生きてるってスゴイ

近くの池で泥だらけの足を洗い彼の家に上がりました。

家に上がると、家全体が傾いているのが分かりました。

居間に当たる場所が一番高く四方が下がっているのは、おそらく真ん中の柱だけがしっかりしていて他が朽ちているからでしょうか?

ともかく中央のテーブルの脚の下には次々に足された水平を保つための詰め物がありました。

そしてどこからか拾い集めて来たと思われるガラクタのようなものがありました。それをよく見ると古いアンプでした。

彼はこれから「カラオケ」をしようと言うのでした!

マノンがスゴイのは、自分のスマホのYouTubeでカラオケを探り出しそこから線を出してアンプにつなぎ、どでかいスピーカーでガンガン行くのです。

ところが、自作のワイヤーがつぎはぎだらけで、持つ手の角度で接触が変わるので、聞こえたり聞こえなかったりとかなりのストレスなのです。

しかも、マノンは自分が聞こえないからなのかボリュームを上げるものだから家全体が震えるのでした。

その間にも、上機嫌になったマノンはジューズを出してくれ売り物のパンを次々に勧めてくれ帰るまでにマカピーは腹いっぱいになってしまいました。

何だか天井はスゴイ状態でした

ハナさんも歌いましたが、マノンは目を細めてスマホの歌詞を見ながら歌う姿に二人して大笑いしていました。

彼はマイクロフォンを前後させてエコーを利かせていたのですが、時々もう一方の手で持つスマホを振り回していたりと、元気な独居老人の生活を垣間見たのでした。

「今日はありがとう。カラオケまで楽しめたわ。また来るわね」と辞去したのですが、帰り道にもマノンの家からの大音響は聞こえたのでした。

マカピーでした。
最後までお読みいただき感謝します。マノンの状況はマカピーの未来かしら?


もしもサポートいただければとても嬉しいです。そのサポートは感謝のバトンタッチとして使わせていただきます!