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#5 金木犀の夜

 先日、AUX PARADISのOsmanthus(=金木犀)の香りが期間限定で発売され始めたことを知り、秋の微かな始まりを感じた。金木犀の香りはまだしない。

「だんだん寒くなって 夏は通り過ぎていた」

 連日の雨でエアコンは用なし、余計に夏の終わりを感じる。月日の流れが年々速くなっている。一か月半の大学三年生の夏休み、コロナによって潰されてしまった。毎日一つの公務員の講義を受け、程よくバイトをする毎日。なんの刺激もない。そんなバイトの帰路で、きのこ帝国の金木犀の夜を聴いた。

 この曲は懐かしい、大学一年生の頃に初めて聞いたときを思い出す。しかし、そのころとは若干曲の受け止め方が異なる。彼女という存在がこの曲をより一層リアルにしてくれたのだ。

「だいたい夜はちょっと感傷的になって 金木犀の香りをたどる 何でもないふりをしても 声が聴きたくなって電話番号を思い出そうとしてみる」

 曲の冒頭からドンピシャである。大体夜は決まって大切な人に会いたくなる。そんな彼女は帰省中。一か月は会ってないのに加え、少し家庭環境が芳しくないことから電話もまともにできない。この会えなくなる期間は以前にもあったが、これだけは慣れない。友達とあっても満たされない代替不可な感情が彷徨う状況に私は弱い。

「かけるかけない 会いたい会いたくない」

 電話をかけるかかけないかを自問自答する日々、他人からしたらどうでもいいような究極の二択を迫られているのである。ときにそれが空回りして、会いたいのか会いたくないのかさえ分からなくなるときもある。

 でもこんなことを悩める自分自身が幸せであるとも思う。

 ところで金木犀の花言葉はなんだろうと調べてみた。その一つに「謙虚」という意味があるらしい。独特な甘い香りを放つ黄色の金木犀は期間限定で咲いて散る様子からこのような意味を持つのだろう。謙虚さって大切よね。 謙虚さは忘れてはいけない。

 近いうちに香水だけでなく、外で本当の金木犀の匂いがしてくるだろう。そのときは、謙虚さを改めて思い出そうと思う。それが本当の意味で自分を強くしてくれると思うから。

【謙虚に強く】

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