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刺激に敏感な超内向型の私は、重要なプレゼン前には大好きな炭酸を飲まない


内向型の人は、刺激に敏感すぎるらしい。


「えっ、ウソでしょ!?」

10年前にこれを知ったときには、衝撃だった。敬愛する内向型研究のトップランナーである、スーザン・ケイン氏の書籍に記されていた事実。

ずっと逆だと思っていたから。

ずっと眩しく見えていた外向型の人たちこそ、刺激が大好物だと信じていた。

だから彼らは、もっともっと突き刺さる何かを浴びたくて、外の世界に繰り出し人と交わる。そこに悦を感じているんだと。

ずっとそう思ってた。


でも、逆だった。

刺激に敏感なのは、内向型の自分の方だったのだ。


どうりで、息苦しい(生き苦しい)はずだった。


私はむかしから、大勢の中に放り込まれると、人の表情や声のトーンがすべて波のごとく押し寄せてくるように感じ、処理しきれなくなる。

そればかりか、そこに馴染めないで焦っている自分の姿も客観的に見え始めるものだから、もう堤防決壊状態である。

そして決まって、窒息する前に、トイレに逃げ込む。

長い時間、何をするでもなく個室でじっと過ごし、また気合を入れて、トイレを後にする。


そんな私の天職は、「研修ファシリテーター」である。

年間150日以上、新しく出会う人たちと向き合っていて、その数は年間2,000人以上にのぼる。一度に500人もの参加者を前に、何時間も話し続けたこともある。

超内向型の自分に、なぜそんな仕事が続けられるのかが、不思議で仕方ない。でも、それが天職だと感じるのだ。


ただ、ワクワクが止まらないこの仕事にも、一つだけ苦手な瞬間がある。

研修の冒頭、5分間だ。

全参加者の視線が、さまざまな温度でじっと私に向けられる瞬間。

あの瞬間が、たまらなく恐ろしい。

この瞬間に、一つ一つの視線の温度を確認しようとしたり、その視線の奥に潜む意図などに注意を向けすぎると、大失敗をしてしまう。


「自分のつまらない話を今すぐ終わらせねば」


焦り、早口になり、支離滅裂になってしまうのだ。


だから、想像する。ひたすら想像して、準備する。

自分が人前に立っている姿、表情、声の大きさ、トーン、参加者への問いかけ、反応。

そして、冒頭5分間だけは「無の境地」になり、練習してきたセリフを、焦らずに丁寧に伝えるようにしている。

想定してきた投げかけ、想像してきた参加者の反応、想像してきた返し。それを、丁寧に丁寧に行う。

何とか5分を乗り越えて、無事に参加者にマイクを向けることができれば、もう心配はいらなくなる。楽しい時間のスタートだ。


そして超内向型の私の、仕事におけるもう一つのこだわりが、これだ。


研修や重要なプレゼンの前には、大好きな炭酸を飲まない。


化学的根拠は、よくわからない。

でも、ただでさえ押し寄せる刺激たちを処理しきれないのに、あえて新しい刺激を注入するなど、正気の沙汰ではないと思っている。

いや、正直に言うと、私は炭酸飲料がめちゃくちゃ好きだ。あの喉をギリギリまで痛めつける感じが、何ともたまらない。いつでも手元に置いておきたいほどだ。

昔は景気づけにほとんど一気飲みして、プレゼンに臨んでいた。

「くぅーーー!よし行くぜ!」

といった感じで。

でも、私は過敏だと知ったあと、この「飲まない」というアイデアがひらめいた。そしてそれをルーティーンにしてみたのだ。


あれからもう、何年も経った。実際に効果があるのかは、いまだにわからない。

しだいに落ち着いて話せるようになっているのは、炭酸ヌキのおかげか、はたまた、積んできた経験がくれる自信からか。

でも、少なくとも、それだけ丁寧に努力して「冒頭の5分間」を乗り越えようとしている、その事実こそが重要、なのかもしれない。


そして私は、今日も炭酸を飲まずに研修に向かう。

天職の喜びをたっぷり味わうために。


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