うまく叱るコツ:2種類の「ゆるす(許す/赦す)」を賢く使えば大丈夫!
「心理的安全性」のせいで、職場でも家庭でも叱れなくなった?
「最近、叱りにくくなったよな〜。すぐにパワハラとか言われるし」
「心理的安全性を勘違いしている人が多くて、何やってもOKな風潮ですよ」
研修ファシリテーターとして、参加者から最近頻繁に聞く言葉です。Googleがきっかけで全世界に広がった「心理的安全性」という言葉のせいで、部下のマネジメントがやりにくくなったというのです。
そして、やってはいけないNG行動をおかしたときでも、「叱る」ことができなくなったと。
「叱る」のは難しいというのは、職場にも家庭にも昔から存在した、永遠の課題ではあります。しかし最近は、メンタルヘルスやパワハラ、虐待の問題がかつてないほどに注目を浴びる中で、さらに「叱る」ことに躊躇してしまう環境ができつつあるようです。
今の時代、「うまく叱る」ための心構えとスキルが求められています。ダメなものにはダメと言いつつ、相手との関係性を固く保てるような、心構えとスキルです。
今回は、「うまく叱る」ためのコツを、私が考案した「叱り方のマトリックス」という、わかりやすく覚えやすい方法でご提案します。
カギは、2種類の「ゆるす(許す/赦す)」の使い分け
「うまく叱る」ための鍵は、2種類の「ゆるす(許す/赦す)」の理解と使い方にあります。
そもそも日本語においては、「許す」と「赦す」が同じ意味合いで使われることが多いのですが、実はその意味、全然違います。
英語で表現すると、「許す」には「allow、permit(許可する)」が充てられ、「赦す」には「forgive(恨みをなくす)」が充てられます。意味が全く異なるのをお分かり頂けたかと思います。
そして「うまく叱る」ためには、この2つをうまく使い分ければOKです。
ではこれを、覚えやすく図で解説していきますね。
叱り方のマトリックス
こちらは、2種類の「ゆるす(許す/赦す)」を縦軸と横軸に取り、マトリックスにしたものです。
職場でも家庭でも、私たちが目指したいのは、「④ うまく叱る」です。
それ以外の①〜③はいずれも悲劇を生むため、避けなければならない方法です。しかし、よく陥りがちなので、一つ一つ解説していきます。
4種類の叱り方とその影響
① 許す✖️赦さない(根に持つ)=服従(いつか復讐)
これは、部下や子どもに気を使いすぎ、NG行動を目にしても弱々しく注意するだけの状態です。言い返されるとそれ以上何も言えず、相手の思いのままにさせてしまうのです。
相手は「暴れれば何とかなるな」と味をしめていき、手のつけられないわがままモンスターに育っていきます。
また、上司や親の側に次第に「恨み」が募っていきます。最初は小声でイヤミを言う程度ですが、怒りを溜めきれなくなったタイミングで爆発してしまうことになります。まるで時限爆弾のようです。
② 許さない✖️赦さない(根に持つ)=パワハラ・強制
次は、最近さらに問題になっているパターンです。相手のNG行動に強烈なダメ出しを行い、さらには相手の人格までをも否定するような叱り方です。多くの場合、怒りなどの感情に任せた言い方が伴います。
「だからアナタはダメなんだよ」
「どうせ○○なんでしょ?」
「人として終わってるね」
これでは、いくら正しいことを言われても、相手は絶対に受け入れません。NG行動を注意されるのは仕方ないとしても、人格までも否定される筋合いはない、と感じさせてしまいます。
こうなると、相手は心を閉ざし、深い傷を抱えることになります。そしていつか、転職や家出といった逃亡、あるいは復讐に踏み切るのです。
③ 許す✖️赦す(根に持たない)=放置・ネグレクト
こちらも多くはないですが、たまに見られるパターンです。そもそも相手の存在自体に興味関心を持っていない状況。でも、その影響は甚大です。
会社においては、部下が知らない間にコンプライアンス違反をおかしてしまっていたり、家庭だと知らないうちに犯罪に手を染めてしまうことにつながりかねません。
④ 許さない✖️赦す(根に持たない)=うまく叱る
これが、目指したい「うまく叱る」方法です。
NG行動を見かけると明確に指摘し、具体的にに指導します。一方、そこには相手に対する怒りは存在しません。伝えるべきことを伝えたら、さっと切り替えてもとの関係に戻るような方法です。
かつて、これが抜群に上手な上司と一緒に仕事をしたことがあります。彼に「うまく叱る」ことをされると、反省をして落ち込むのですが、次は頑張ろうと立ち直れるのです。
こんな会話をときどき経験しました。
ー上司:「たいらさん、1分だけいい?」
ーわたし:「はい、大丈夫ですよ」
ー上司:「サンキュ。さっき○○さんに送ってくれたメールを見たけれど、あの言い方だと相手が感情を害してしまうと思うよ。次からは○○な言い方に変えてみてくれる?」
ーわたし:「あ・・・なるほど、気がつきませんでした。すみません・・・」
ー上司:「次からでOKだから、気をつけてね。じゃ、以上!サンキュ!」
その後は、またいつもの良好な関係、いつもの楽しい雰囲気に戻りました。スパッと短時間で、あとくされなく叱られるのです。
上司への怒りや、評価を下げられるかもしれないという不安を感じることは一切ありませんでした。そして、自分自身の行動改善だけに集中できたのです。
そしてNG行動が改善されたら、すぐに褒めてくれました。すると、その行動を続けていこうというモチベーションが高まったものです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
パワハラや心理的安全性など、いろいろなことでがんじがらめになって動けないでいる方は、ぜひ参考にして頂ければと思います。
難しく考えず、2つの「ゆるす(許す/赦す)」をうまく使うことに注意をはらってみてください。
きっと、相手に感謝されるような関係を長期に渡って築けるはずです。
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